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Dodge Charger Daytona SRT Concept
電気になってもダッジはダッジ
バイパーやチャレンジャー、ラムといったアメリカを象徴するクルマを送りだしてきたダッジが、電気自動車のコンセプトカーを初めて発表した。
ついにダッジもEVか……と嘆くことなかれ。ダッジは電気になってもダッジ。デザインもパフォーマンスも、そしてサウンドにも、まさしくマッスルカーと呼ぶにふさわしいキャラクターが与えられているのだ。
“退屈なBEV”のムーブメントを打ち破る1台
「ダッジ チャージャー デイトナ SRT コンセプト」の公式資料には、「drives like a Dodge, looks like a Dodge and sounds like Dodge(ダッジのようにドライブでき、みまごうことなきダッジであり、しかもダッジのように響く)」の文字が躍る。そして、「退屈なBEVのパラダイムを力づくで押しやる」ような1台である、と豪語している。
車名は、1970年にNASCARで200mph(約321.8km/h)の壁を破った初のクルマ、「チャージャー デイトナ」にちなんだもの。つまり、このBEVはその名に相応しいパフォーマンスを標榜しているという主張である。
インディカーでお馴染みのオーバーテイク機能も搭載
チャージャー デイトナ SRT コンセプトが搭載するのは、「Banshee(アイルランドやスコットランドに伝わる嘆きの妖精)」と名付けられた800Vシステム。具体的な数値は明らかにしていないものの、圧倒的なパワーで全輪を駆動し、現行チャージャーの高性能仕様“SRT ヘルキャットを上回るスピードを生み出すという。
また、「eRupt」と呼ぶマルチスピードトランスミッションを採用。さらに、ステアリングホイールにはエンジン出力を一時的に上げる「プッシュトゥパス」ボタンも搭載する。これは、オーバーテイクを積極的に促す仕組みとしてインディカーでお馴染みのシステムであり、ダッジでは「PowerShot」と呼称している。
126dBの爆音サウンドを業界初のシステムで実現
マッスルカーといえば獰猛なサウンドも必須!ということで、チャージャー デイトナ SRT コンセプトには126dBの爆音の“架空エキゾーストノート”まで用意している。これはSRT ヘルキャットのそれに匹敵する音圧レベルであるという。ちなみに、飛行機のエンジンの近くの騒音が120dB、電車が通るガード下が100dBといわれている。
チャージャー デイトナ SRT コンセプトは、業界初となるFratzonicチャンバーエキゾーストシステム(特許出願中)を搭載。車両後部に装備したアンプと音響チャンバーを駆使して、迫力のあるサウンドでキャビンを満たすそうだ。
懐かしくも新しいエクステリアデザイン
チャージャー デイトナ SRT コンセプトのデザインは一見懐古的とも感じられるが、じつは先進の空力テクノロジーが活かされている。オリジナルのチャージャー デイトナにオマージュを捧げるフロント周りの造形を、ダッジでは「Rウイング」と呼称。グリル上部にぽっかりと空いた開口部から空気の流れを作り出すことで、ダウンフォース量を増やす設計としている。
フロントとリヤに装着している三角形の「Fratzog(フラッツォーグ)」バッジは、1962〜1976年のダッジで使われていたロゴをベースにデザインされたもの。3つの矢じりが組み合わされたデルタ状のマークは、ダッジのヘリテージと未来を繋ぐシンボルとして復活した。
マッスルカーなのに実用的
キャビンは、ドライバーオリエンテッドなつくりのコクピットと、乗員全員に開放感をもたらすパノラミックガラス、フォールドできるリヤシートなど、機能性と実用性を兼備したつくりになっている。ちなみにリヤシートを折り畳めば余裕のある収納スペースが出現。ダッシュボードやセンターコンソールのデザインも、整理整頓されていていかにも使いやすそうだ。ワルそうな見た目のEVマッスルカーだが、ユーザーにやさしい使い勝手をしっかり確保しているようである。
チャージャー デイトナ SRT コンセプトの市販化については、現時点(2022年8月)では言及されていない。GMCのハマーEVやシボレー シルバラードEVの登場が証明しているように、アメリカの伝統的モデルはEVになっても独自の道を邁進している。マッスルカーの代表選手であるダッジなればこそ、BEVを作るならばこれくらい“らしい”1台を是非とも送り込んで欲しいところである。