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フェラーリがプロトタイプに帰って来る!
大予言……といった大袈裟なものではないのだが、2023年の注目はなんといってもWEC(世界耐久選手権)に尽きると思う。
それには理由がある。アウディ、ポルシェの撤退以降、事実上トヨタのワンサイドゲームが続いてきたWECだが、2022年に“ウイング・レス”のプジョー9X8が参戦して、にわかに活性化し出したのはご存知のとおり。そこに2023年シーズンから、LMHクラスにフェラーリ499P、ヴァンウォール・バンダーベルLMH、イソッタ・フラスキーニ、新たに設けられるLMDhクラスにはポルシェ963とキャデラックV-LMDhが参戦するほか、2024年シーズンからはBMWやランボルギーニなどもLMDhクラスにエントリーすることが予定されているからだ。
これだけのメーカーがプロトタイプ・スポーツカーの世界選手権に顔を揃えるのは、長いスポーツカー・レースの歴史においても他に例がないほど。その中でなんといっても注目したいのが、1973年以来のワークス参戦を果たすフェラーリである。
他のメーカーが4つの認定シャシー、共通ハイブリッド・システムを採用するLMDhを選択する中で彼らは、専用シャシー、パワートレインのLMHをもつ499Pをいち早く発表。これまでGTクラスでワークス的役割を果たしてきたAFコルセを擁してテストを繰り返していることからも、その本気ぶりが窺えるというものだ。
フェラーリのワンメイクがついに日本単独開催
一方、マルチマチックのシャシーをベースとするLMDhのポルシェも、ワークスとして名門ペンスキー・レーシング(かつて917/30でCan-Amを、RSスパイダーでALMSを席巻した名コンビの復活でもある)とタッグを組むほか、JDCミラー・モータースポーツ、JOTA、プロトン・コンペティションの3チームにカスタマーシャシーを供給することになっており、ポルシェ側の状況が整えば、往年の956、962Cのように多数の963がプライベーターに販売されることも考えられる。また耐久レースという性格上、各チームに2〜3名のドライバーが必要となるため、海外進出を目指すドライバーにとってもチャンスが広がることになるだろう。
しかも2023年はル・マン24時間耐久レースがスタートして100周年(日本人ドライバーがル・マンに初出場して50周年でもある)の節目の年。これ以外にも、何かしらの予期せぬサプライズがあるかもしれない。
さらに日本国内に目を転じてみると、さる12月13日に2023年からフェラーリ・チャレンジ・ジャパンシリーズが、4月8〜9日の富士スピードウェイを皮切りに、オートポリス、富士、鈴鹿サーキット、スポーツランドSUGOの全5ラウンドで行われることが発表された。
盛況を極めるポルシェのワンメイク
488チャレンジEVOを用いたフェラーリ・チャレンジのシリーズ戦が開催されるのは、ヨーロッパ、北米、イギリスに続き4ヵ所目ということだが、日本で20年以上の歴史を誇るポルシェ・カレラ・カップ・ジャパン(PCCJ)から、2022年のル・マン・ウィナーでWECチャンピオンでもある平川亮選手、そしてLMGTE Amで活躍する星野敏選手を輩出していることを思えば、新たなプロ&ジェントルマン・ドライバーを養成する舞台としても、注目したいレースである。
もちろん、スーパーGTやF1日本GPのサポートレースとして行われているPCCJも、老舗ワンメイク・レースとしてハイレベルな争いを繰り広げているが、2022年からその1つ下のカテゴリーとして開催されているポルシェ・スプリント・チャレンジ・ジャパン(PSCJ)もハイレベルなうえに20台以上を集める盛況ぶりを見せており、さらなる飛躍が期待されている。
このように2023年は、国内外のスポーツカー・レースが新時代を迎える、歴史に残るシーズンになるのは間違いなさそうだ。