豪快な大排気量スーパーセダンW204型「メルセデス・ベンツC 63 AMG」

もうW204型「メルセデス・ベンツ C 63 AMG」のような大排気量スーパーセダンは登場しない【今買うなら、ひょっとしてコレちゃう?8台目】

名機と呼ばれたM156型6.2リッターV8を搭載する最小のモデルが今回紹介するW204型「メルセデス・ベンツC63 AMG」だ。
名機と呼ばれたM156型6.2リッターV8を搭載する最小のモデルが今回紹介するW204型「メルセデス・ベンツC63 AMG」だ。
クルマの流行廃りにあわせて大きく動く中古車市場。もしも中古車ライフを送るなら、その波を正確に捉えてお得な買い物をしたいものだ。そんな時代の羅針盤たるべく、西川淳が「今」買いのクルマを紹介する。第8回はもうこれから絶対に登場しないであろう大排気量コンパクトスポーツセダンだ。

メーカーがV8を卒業するなら我々は留年する!

同じV8でもアメリカンV8と異なるフィーリング。精緻で丹念、けれどもそれ以上に暴力的。理屈抜きに楽しいエンジンだ。

「V8よ、さらば!」なのだそうだ。最新メルセデスAMGのハナシである。新型C63はもはや8気筒を積まない。なんと半分の4気筒、しかもPHEVだ。それでいてベラボーに速いらしい。性能アップでSDGsに貢献。それは筋の通った理屈だ。いかにもメルセデスAMGらしい。ブランドの方向性としては決して間違っていないと思う。

4気筒化で重量バランスの良くなった超高性能セダン(加速スペックはもはやスーパースポーツ)を実際に試す前に論じるのは、甚だ危険だけれども(とても気にいるかもしれないから)、それでも今はこう言いたい。「趣味のクルマ選びは理屈抜きである」と。

メーカーがV8を卒業するというのであれば、我々クルマ好きは嬉々として留年しようじゃないか! それも次々とダウンサイジングと高性能化を繰り返した直近のツインターボ(4.0リッターM177や5.5リッターM157)ではなく、また衝撃だったスーパーチャージャー付き5.4リッターでもなく、大排気量自然吸気の名機、6.2リッター(6.3ではない)M156だ! そして、その名機を積む最小のモデルこそW204のC63である。

最も過激な組み合わせ

そもそもW204には標準モデルにも思い入れがある。その端正なルックスはCクラスの完成形だった。今でもノーマルのW204を下駄がわりに乗っている人を見るたび、「この人、わかってるな〜きっと手放せないんだろな」、と思う。サイズ的にもちょうどいいし、そんなモデルにマニア垂涎、理屈抜きに楽しい大排気量自然吸気マルチシリンダーエンジンをぶち込んだ。これはもう現代の500Eに相違ない。

M156エンジンを積んだモデルに初めて試乗した時のことはいまだ鮮明に覚えている。CLK63の圧倒的な“エンジン感”に身体中がゾクゾクした。イタリアンV12やジャパニーズ直6、同じジャーマンのフラット6とは当然ながらまるで違う爆発感が伴う。同じV8でもOHVのアメリカンV8ともまるで異なる。もっと精緻でもっと丹念、けれどもそれ以上に暴力的。理屈抜きに楽しいエンジンを踏むと、いつだって右足がクランクシャフトに巻き込まれるような感覚を覚えるけれど、M156ではクランクシャフトと一体になって欲しいと願った。心臓がピストンだ!

E63もS63も、なんならレアなR63も良かったけれど、最も過激な組み合わせがC63であったことは間違いない。これまた、とあるシーンを鮮やかに思い出す。C63の国際試乗会、会場を走り出した次の交差点から橋にかけて前の走る大先輩ジャーナリストがドリフトで駆け抜けた。スーチャー付きC55とこのC63を積んだベンツのセダンはドリフトマシンとして海外でも楽しまれている。

前期後期で異なる変速機

というわけで、「さらばV8」の今だからこそ、名機M156積んだAMGモデルを狙うべきである。選択肢の多さという意味でも、そして未来へと語り継がれていく名車という意味でもC63がベストチョイスだ。もっとも、そんなことは数年前からマニアの気づくところで、ツインターボエンジンの「速いけれども味がない」ことを知って、すでにM156搭載モデル、特にC63の中古車相場は崩れそうで崩れない。エディション507のような限定モデルはすでに上昇している。

もうひとつ、C63を中古で探すにあたって、知っておくべき基本知識として、前期後期でのミッション違いがある。前期はトルコン、後期(2011年〜)はスピードシフトMCTで、共に7速だから、検索サイトなどでは7ATとシンプルに書かれる場合もあるので注意したい。

どちらがいいか、これはもう好みの問題で、日常使いの乗りやすさなら前期、エンジンをよりダイレクトに感じたいのであれば後期だろう。グリルをはじめルックスにも若干ながら前期後期で違いがある。

意外とクーペという選択肢も

さっそく中古車検索してみれば、もちろん距離にもよるけれどもイメージ的に前期は200万〜300万円、後期で400万〜500万円くらいが相場感である。ちなみにエディション507になると跳ね上がって1000万円級となる。おすすめはズバリ、前期の走行距離少なめ、だ。大排気量の自然吸気ハイパワーエンジンゆえ、前期モデルにはヘッドボルト問題など少なからず弱点が存在する。それを距離とディーラー整備記録でなんとか折り合いをつけるというわけだ(完璧な中古車など存在しないのだ)。

もうひとつの美味しいチョイスがワゴンだ。セダンより507を含めて1割は安い。ちなみにクーペもあるが、こちらはブラックシリーズの2000万円オーバーという別格が存在するためか、標準モデルはセダンとほぼ同じ相場。数は少ないので、将来的には美味しいかも!

SPECIFICATIONS

メルセデス・ベンツ C 63 AMG(W204)

ボディサイズ:全長4725 全幅1795 全高1438mm
ホイールベース:2765mm
車両重量:1730kg(Kerb)
エンジン:V型8気筒DOHC
総排気量:6208cc
最高出力:336kW(457PS)/6800rpm
最大トルク:600Nm/5000rpm
トランスミッション:7速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前3リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前235/40ZR18 後255/35ZR18
最高速度:250km/h※電子リミッター
0-100km/h加速:4.5秒

R8最大の魅力は毎日のように通勤や移動に使えること。ミドシップスーパーカーの範疇にありながら、真逆の使い方ができるのだ。

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C6コルベットZ06。LS7の魅力はアメリカンV8ファンなら誰しも認めるところ。早晩、奪い合いになることは必至だ。

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西川 淳