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LEXUS RC F
レクサスの“F”に乗る
最新のIS500Fスポーツパフォーマンスに乗った。パフォーマンスと名乗る特別なFスポーツ、だけど、真性の“F”ではない。BMW Mでいえばハイパフォーマンス系ではなくパフォーマンス系。それでも和製V8のエンジンフィールに酔いしれた。“F”ではない、ということでとんがってはいないけれど、そこがかえって“長く付き合える感覚”があってよかった。V8自然吸気はこれでおそらく最後。それもあって「これは欲しい!」と思ったものだった。まず間違いなくレクサスで今買っておくべき一台。すぐには買えないらしいけれど。
ならばこの素晴らしいV8エンジンをさらに磨き上げたうえでスパルタンに向き合える“F”もやっぱり捨てがたい。同じ4ドアということでまずはIS Fを思い出し、中古車検索サイトを覗いてみれば、15年選手だけあって流石に安い。デビューの頃はR35 GT-Rと同じくらいの新車価格で、どちらも将来有望と言われたことを思い出す。
基本的に壊れないからなのだろう。距離を大いに伸ばした個体も多く、それが相場を下げるひとつの要因になっている。本体価格150万円くらいから見つかるのだ。そこでさらに思い出す。中古で安く買える実用的な高性能モデルだからだろう、街中ではけっこうヤンチャなIS Fユーザーを見かけることを。高速道路でも下品な走りのIS Fに何度か出会ったことがあった。同類には見られたくないよなぁ〜。
だが4ドアであることを諦めさえすればクーペのRC Fという選択肢があった。面白いことに実用を兼ねたセダンやミニバンには“ヤカラ的オーナー”が多くなりがちけれど、2ドアは少ない。今時の“格好良さ”じゃないからかもしれない。エレガントなスタイルのRCをFで乗る、というのもアリじゃないか!
8気筒エンジンの醍醐味
検索してみれば400万円台から見つかる。この企画にドンピシャの価格帯。やはりこちらも距離の伸びた個体が多いけれど、やさぐれてはいない。現行モデルであることと、レクサスのサービス網を考えると、メンテナンスで心配はない。それに5万km以下だって400万円台から見つかる。オレンジやブルーの個体だって!
2ドアモデルならば将来的なリセールバリューにも期待が持てる。4ドアではそうはいかない。それゆえ買う時の値段差はさほど気にしなくていい。そもそもIS Fにしたところで程度の良いフルノーマル個体を探すとなればRC Fとの価格差も縮まっていく。だったら新しい方の2ドアクーペを狙った方がいいという理屈も成り立つ。
“F”に積まれたレクサスV8の魅力は、専用にチューニングされたエンジンと呼吸を合わせて速く走れることに尽きる。右足を強く踏み込めば、エンジンが「いくぞ!」と応えてくれる。その力感の変化が右足からドライバーの腰へとダイレクトに伝わってくる。これが楽しい。8気筒マルチシリンダーエンジンの醍醐味のひとつだと言っていい。
エンジンとドライバーとの一体感をより強めているのがエキゾーストノートだった。力の盛り上がりを音でも見事に表現する。というか、強調する。それゆえドライバーは右足と耳とでクルマの状態を見極め、迫り来る景色とステアリングワークだけに集中できる。よくできたスポーツカーとしてドライビングを楽しむことができるというわけだ。
消えゆくリアルでラウドなサウンド
おそらく、今後これほど官能的で力強い和製V8エンジンが現れることは、残念ながらないだろう。たとえ内燃機関が生き残ったとしても、それはある程度の官能性を犠牲にしてでも効率を極めた、しかも電動の助けを借りたエンジンになっていかざるを得ないからだ。そして、リアルでラウドなサウンドから真っ先に消えていく。
エンジンが絞り出す力の変化を感じながらドライブし、空気を大いに吸って大いに吐き出すというV8エンジンの醍醐味を味わうことができるのは、“古いクルマ”に限られていく。RC Fはその中で最も新しいモデルゆえ、これからも長く人気を保ってくれるに違いない。
SPECIFICATIONS
レクサスRC F
ボディサイズ:全長4710 全幅1845 全高1390mm
ホイールベース:2730mm
車両重量:1720kg
エンジン:V型8気筒DOHC
総排気量:4968cc
最高出力:354kW(481PS)/7100rpm
最大トルク:535Nm/4800rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク