デビュー25周年を迎えた「アウディ TT」を振り返る

アウディのスタイリッシュスポーツクーペ「TT」が25年の歴史に幕「強烈な個性を放った3世代を振り返る」

1998年の初代デビューから25年、3世代にわたって個性的なフォルムから世界中で高い人気を集めた「アウディ TT」。
1998年の初代デビューから25年、3世代にわたって個性的なフォルムから世界中で高い人気を集めた「アウディ TT」。
1998年のデビュー以来、「アウディ TT」は独自のスタンスを持つスポーツモデルとして、世界中で高い人気を集めてきた。1998年の初代誕生から25周年を迎えた2023年、アウディ TTはその歴史に幕を下ろすことが決まっている。

Audi TT

1995年のフランクフルトショーで公開

1995年のフランクフルト・モーターショーでコンセプトカーとしてデビューした「アウディ TT クーペ」。
フリーマン・トーマスによってデザインされたコンセプトカー「アウディ TT クーペ」は、1995年のフランクフルト・モーターショーで公開された。

1990年代半ば、アウディはラグジュアリーモデルの「A8」を投入。ブランドのポジショニングを高めると同時に、アウディ 80は「A4」、アウディ 100は「A6」とモデル名を切り替えていった。特に1994年に導入されたA4は、アウディの新たなデザイン言語を具現した最初のモデルとなった。

1996年にはプレミアムコンパクト「A3」、1997年には第2世代「A6」を発売。新鮮かつ進歩的なデザインにより、アウディファンが世界中で拡大するなか、米国人デザイナーのフリーマン・トーマスがスポーツカーコンセプト「TT クーペ」をデザインした。

1995年9月に開催されたフランクフルト・モーターショーにおいて、アウディはこのデザインスタディをワールドプレミア。「TT」というネーミングは1907年に初開催された伝説的な2輪レース「マン島TTレース」をイメージし、1960年代のスポーツモデル「NSU TT」も思い起こさせた。アウディが当時のネーミングルールをあえて採用しなかったのは、このクーペの斬新さを強調することが目的だったという。

ほぼコンセプトカーのままデビュー

1998年にデビューした初代「アウディ TT 」。
ショーでの大反響を受けて、1995年12月にアウディ TTの量産化が決定。リヤサイドウィンドウが追加された以外に、ほぼデザインに変更を受けることなく市販仕様が完成した。

1995年12月、アウディ TT クーペの量産が決定。コンセプトカーから市販モデルへのデザイン変更に携わったデザイナーのトルステン・ヴェンツェルは当時の状況を次のように振り返った。

「アウディ TTの市販モデルへの移行に際しては、プロポーションを含む数多くの技術仕様を細かく調整する必要がありました。楽な作業ではありませんでしたが、市販モデルが発表された段階で、多くのメディアがコンセプトカーからデザインが変更されていなかったことを高く評価しています。これは私たちデザイナーにとって、最高の賛辞となりましたね」

市販化に際して最も大きなデザイン変更は、リヤサイドウィンドウの追加だろう。より伸びやかな印象となり、スポーツカーとしてダイナミックなスタンスを手に入れることになった。ヴェンツェルは、初代アウディ TTは「最高のボディラインを備えた、走る彫刻作品」だったと指摘する。

「アウディ TTのボディは、ひとつの大きな塊から削り出されたように見えるはずです。バンパーに従来のオーバーハングのないフロントセクションがそのクリアなフォルムを強調しています」

独自のシルエットを形成しているもうひとつのデザイン要素が「円」だろう。ヴェンツェルは円こそが「完璧なグラフィック形状」だと断言する。アウディ TTのインテリア デザインにも多くの円形要素を採用。バウハウスからヒントを得たTTのすべてのラインには目的があり、すべての形状に機能が備えられている。

「アウディ・デザインは、常に『レス・イズ・モア (less is more)』の哲学に従っています。アウディ TTのデザインでは、本質的なレベルまで要素を削減することによって、このクルマ特有のユニークなキャラクターを引き出しています。これは私たちデザイナーにとって大きなチャレンジであり、特別な仕事になりました」と、 ヴェンツェルは締めくくった。

ハンガリーで製造された初代TT

1998年にデビューした初代「アウディ TT 」。
1998年、アウディ TTの生産がアウディ・ハンガリーでスタート。初代は8年間で26万台以上が製造されている。

1998年、アウディ TT クーペの生産が開始され、その1年後にはTT ロードスターが導入された。1996年に発売されたA3と同様、このスポーツカーは「フォルクスワーゲン ゴルフ IV」の横置きエンジンプラットフォームをベースに開発されている。

アウディ TTは、ハンガリーの「アウディ・ハンガリア・モーター(Audi Hungaria Motor)」で生産。TTのボディはドイツ・インゴルシュタットのアウディ AG本社工場で塗装された後、ひと晩をかけて ハンガリーのジェールまで鉄道で運搬。そこで最終組み立てが行われている。

インゴルシュタットとジェール、2拠点で生産するという方式は、当時の自動車業界では非常に珍しかったという。1993年2月に設立されたアウディ・ハンガリーは、当初エンジンのみを製造する工場だったが、1998年にインゴルシュタット工場と連携してアウディ TTの組み立てをスタート。2013年には本格的な自動車工場へと進化を果たしている。アウディ・ハンガリーは創業以来、4300万基以上のエンジンと、200万台近くの車両を製造した実績を持つ。

初代アウディ TTは、幅広いエンジンラインナップを揃えていた。さらに、数多くのオプションが用意されていたことも、特徴のひとつだと言えるだろう。「パパイヤオレンジ」や「ノガロブルー」といった専用カラーにだけでなく、TT ロードスターのレザーシートにはショーモデル用に開発された「ベースボールグローブ」デザインが導入されている。

第2世代TTから登場した「RS」仕様

2006年、2代目へと進化した「アウディ TT 」。
2006年、2代目に進化したアウディ TTは、内外装はキープコンセプトが貫かれたものの、パワーユニットが強化され、2009年には最強仕様の「TT RS」も導入された

2代目「A3」のプラットフォームをベース開発された2代目アウディ TTは、クーペが2006年、ロードスターが2007年に発売。2代目の開発においてデザイナーは初代から継承した「シンプルで本質的なデザインの追求」を基本コンセプトとしている。

燃料タンクキャップ、円形のエアベント、シフトノブなど、丸みを帯びたフォルムと円形のモチーフは、典型的なTTのデザインテーマであり、エクステリアとインテリアのデザインを統一する要素でもあった。

2008年には、最高出力272PSを発生する2.0リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載したスポーツモデル「TTS」を発売。その1年後には最高出力340PSを発生する2.5リッター直列5気筒ターボエンジンを搭載した「TT RS」と、最高出力を360PSにまで引き上げた「TT RS plus」が投入された。また、2008年には世界初のディーゼルエンジンを搭載した市販スポーツカー「TT 2.0 TDI クワトロ」も発売されている。

大幅な軽量化を果たした3代目TT

2015年から販売をスタートした3代目「アウディ TT 」。
2015年、アウディは大幅な軽量化を果たした3代目「TT」を投入した。25周年を迎えた2023年、アウディ TTはその歴史に終止符を打つことになる。

大幅な軽量化を果たした3代目アウディ TTは2015年にデビュー。2.0 TFSIエンジンとMTを搭載したTT クーペの重量はわずか1230 kgに抑えられており、2代目TT クーペから最大50kgも軽量化されている。

新型TTとTT RSの開発にあたりデザイナーは、初代TTの特徴的なラインを現代的に再解釈。象徴とも言える丸型燃料タンクキャップは世代を超えて受け継がれた。一方で技術的には長足の進化を果たした。3代目から多機能ディスプレイを備えたフルデジタルメーター「アウディ・バーチャルコクピット」も初採用されている。

2016年に投入された「TT RS」から、アウディはテールライトにOLED(有機発光ダイオード)を初採用。TT RSに搭載された2.5リッター直列5気筒ターボエンジンは最高出力400PSに達する。デビューから25周年を迎えた2023年、アウディ TTの四半世紀にわたるデザインとテクノロジーを讃える、100台限定の特別仕様「TT RS クーペ アイコニック エディション」も投入されている。

1999年から2016年にかけて、ル・マン24時間で13勝を挙げたアウディ。2023年にル・マンが開催100周年を迎えることを受けて、様々な企画を実施する。

非公開: アウディが歴代優勝車両をインゴルシュタットのミュージアムに展示「ル・マン24時間レース100周年を記念」

2023年5月21日の「国際博物館の日(International Museum Day)」に合わせて、ドイツ・インゴルシュタットのアウディ・ミュージアムでは、ル・マン24時間レースで活躍したアウディ製プロトタイプカーを展示。さらにル・マンで3勝を挙げたリナルド・カペッロのトークショーやサイン会も開催される。

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ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…