BMWの人気コンパクトSUV「X1」を内燃機関モデルとEVで比較試乗

BMWの売れ筋コンパクトSUV「X1」のガソリンモデルとフル電動モデル「iX1」を比較試乗

内燃機関(左)に加えて、BEV(右)が最初から用意された新型X1。
内燃機関(左)に加えて、BEV(右)が最初から用意された新型X1。
人気コンパクトSUVの、BMW X1が3代目にフルモデルチェンジした。新型はX1として初となるフル電動モデルもラインナップ。磨き抜かれた新型は大ヒットの予感に満ちていた。電動モデルと内燃機関モデルを比較試乗した。(GENROQ 2023年7月号より転載・再構成)

BMW iX1 xDrive30 M Sport
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BMW X1 xDrive20i xLine

7年半ぶりの刷新となる3代目

iX1は前後に2モーターを搭載する4WDの「xドライブ30」に試乗。

BMWのX1といえば、3シリーズ同様にエンジンを縦置きしていた初代から、2代目にあたる先代で横置きエンジンのFF(とそれベースの4WD)レイアウトへと大転換した。その先鞭をつけたのは、少し先行して登場していた初代2シリーズツアラーである。これらは連綿と後輪駆動(とそれベースの4WD)だけを造り続けてきたBMW初のFFであると同時に、初のハイトワゴン/ミニバンでもあった。低重心アスリート体形の後輪駆動を売りにしてきたBMWだから、FF化されたX1や2ツアラーが、好事家間で賛否両論を巻き起こすのは当然だった。しかし、実際にはどちらもヒット商品となり、その後もX2、1、2グランクーペと、FFのBMWは増殖の一途でもある。

それだけではない。BMWの近未来を表現したフラッグシップ電気自動車のiXもハイトワゴンだし、今後の「M」を示唆するというXMはクロスオーバーSUVだ。となれば、今のBMWではX1やアクティブツアラーこそが正統派であり、3シリーズのほうがニッチな傍流になっていくのかもしれない? ……と、それはともかく、約7年半ぶりの刷新となるX1は、先代が成功作だったこともあり、いわば正常進化である。スリーサイズやホイールベースはすべて大きくなったが、拡大幅は20〜45mmと控えめ。現実のサイズ感は先代と変わらない。

一方で、新型X1には先代から大きく変化したポイントもある。それは一般的な内燃機関(ICE)に加えて、BEV(車名はiX1)が普通に用意されることだ。これも新しいBMW像か。本体価格は668万円で「いま最もコンパクトで手ごろなBMWのBEV」でもある。

新型X1&iX1ともに選択肢はひとつ

今回の取材では、ICEとBEVのX1を1台ずつ連れ出した。日本仕様のX1は、どちらのパワートレインも1種類ずつ。ひとまずの売れ筋となるICEは、本国では3気筒やディーゼル、さらにFFもあるが、日本は2.0リッターガソリンターボ+4WDの「xドライブ20i」のみ。対してiX1は本国でも選択肢はひとつで、前後に190PS/247Nmを積む2モーター4WDの「xドライブ30」。さらに、どちらのパワートレインでも「Mスポーツ」と「xライン」という対照的なトリムグレードが選べる。トリムグレードによる価格差はない。

まずはICEから乗る。試乗車はいわばラグジュアリー系グレードのxラインだった。最近のBMWはグレードによって走行関連部分にあまり差をつけなくなっており、それはX1も例外ではない。実際、このクルマのタイヤもMスポーツやiX1と共通である。ただし、ひとつだけダンパーが固定減衰になる(他のX1はすべてMアダプティブダンパーが標準)のが、このガソリンエンジン搭載のxライン特有のところだ。

新型X1はひと言で手堅くまとまっている。最新のアクティブツアラーとデザインが共通化されたインテリアの使い勝手もいい。カーブドディスプレイやアイランド型のシフトパネル、コンソールの特徴的なスマホ/タブレットホルダーなどは、いかにも新世代のそれだ。特に意外に置き場に困るスマホが、信号待ちなどのスキにすぐアクセスできる形で固定できるのは重宝する。

走りもしかり。ホイールベースやボディ剛性の違いからか、同じハードウェア構成のアクティブツアラーより総じて乗り心地もいいが、良くも悪くもサプライズも特にない。一方で、背の高さを活かしたインテリアの使い勝手や雰囲気、従来のドライブモードとは一線を画す「マイモード」など、これが新しいBMW像か……とも実感させてくれる。

確実にICEを凌ぐiX1の走り

X1は2.0リッターガソリンターボ+4WDの「xドライブ20i」。

逆に、走りで驚かせてくれたのはBEVのiX1だ。目に見える部分にICEとほとんど差はない。意地悪に観察すれば、後席のフロア部分がわずかに高かったり、荷室の床下収納が大きく削られていたり、キドニーグリルが通気機能のないただ飾りになっていたり……といったツッコミどころはあるものの、リアルな使い勝手にほぼ遜色はない。

iX1が搭載するバッテリーの総電力量は66.5kWhで、一充電航続距離は465km(WLTC)。昨今の高性能BEVと比較すると物足りない気もするが、本体価格におけるICEとの差は112万円。いろいろな補助金を駆使すれば実質価格差は解消、あるいは逆転する可能性はあるわけで、コスパは高い。また、このiX1から新たにはじまったリースサービス「BMW iライフパッケージ」には、出先の公共充電器による充電費用まで含まれる。

そんなiX1の走りは確実にICEを凌ぐ。スポーツモードではのけぞるほどの加速なのに、乱暴にアクセルを扱ってもギクシャクするようなクセは皆無。それでいて、明らかなラグがあるわけではない。また、風切り音やロードノイズも印象的なほど静かだ。こうした細かな仕立ては従来のBMW製BEVより明らかに洗練されており、ノウハウを蓄積していることがうかがえる。

さらに、しかるべき場所で、DSCをスポーツプラスモードにして、積極的にアクセルを踏むと、嬉々として回頭しはじめる。その積極性はFR風でもあり、同時に安心感は後輪駆動ベース4WD的でもある。しかし、アマチュアドライバーの筆者にも綺麗に弧を描かかせてくれる回頭性は、やはりICEよりはるかに高反応のBEVならではだろう。これが新しい「駆けぬける歓び」か。……なんのヒネリもないが、iX1に乗ってそう思ったのは事実だ。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
MAGAZINE/GENROQ 2023年7月号

SPECIFICATIONS

BMW iX1 xドライブ30 Mスポーツ

ボディサイズ:全長4500 全幅1835 全高1620mm
ホイールベース:2690mm
車両重量:2030kg
モーター システム最高出力:140kW(190PS)/8000rpm
モーター システム最大トルク:247Nm(25.2kgm)/0-4900rpm
バッテリー 総電圧:286.3V
バッテリー 総電力量:66.5kWh
トランスミッション:1速固定
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
航続距離(WLTCモード):465km
車両本体価格:668万円

BMW X1 xドライブ20i xライン

ボディサイズ:全長4500 全幅1835 全高1645mm
ホイールベース:2690mm
車両重量:1640kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1998cc
最高出力:150kW(204PS)/5000rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1450-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
燃料消費率(WLTC):12.9km/L
車両本体価格:556万円

【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

2.0リッター直4ターボエンジンを搭載するX1。最高出力150kW、最大トルク300Nmを発揮。燃費はWLTCモードで12.9km/リットルとなっている。

非公開: BMWの売れ筋プレミアムスモールコンパクトSUV「BMW X1」日本市場に導入

2023年2月17日、BMWのコンパクトSUV「X1」の第3世代となる新型発表会が開催された。X1は日本の道路環境に適したサイズ、現代的なデザイン、高度なデジタル化、そして快適なインテリアが魅力の注目モデルである。同時にフル電動モデル「iX1」の導入も発表された。

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