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死ぬまでに乗っておきたいベントレー
ロールス・ロイスもアストンマーティンも好きだがベントレーはもっと好きだ。戦前のW.O.ベントレーは今でもドリームカーだし、戦後のRタイプ・コンチネンタルもまた死ぬまでに乗っておきたい1台だ。
モダンシリーズも好きで、特に1990年代のクーペは大好物。過去にコンチネンタルRや同Tを所有したこともある。2000年代に入っても興味は薄れず、なかでもビッグクーペのブルックランズなどは今すぐにでも欲しいモデルである。そして、このあたりまでの2ドアモデルは趣味性が高く、再評価も始まった。買えないわけではないけれど、買うには強い決心のいる相場に差し掛かっていると言っていい。
一方でフォルクスワーゲングループとなってからブランニューモデルとして登場し、ブランド再興の礎となった2ドアクーペ&オープンのコンチネンタルGTシリーズもまた、個人的には大好きなモデル。グループテクノロジーに裏付けされたラグジュアリーGTは、この世代も優秀なグランツアラーだ。そもそも“コンチネンタル”という名前は、英国貴族がこのクルマに乗ってドーバー海峡を船で渡り、大陸を駆け巡るというライフスタイルを象徴するネーミングである。
めちゃくちゃ安い初代を選ばない理由
初代コンチネンタルGTは2003年にデビューした。フェルディナント・ピエヒのアイデアによるW12エンジン搭載と、伝統に基づいた大胆なクーペスタイルが話題となったモデルだ。カーセンサーでコンチGTを検索し、車両本体価格の安い順番にソートをかけてみれば、そんな初代が200万円台半ばから見つかる。
乗っていてとてもラク、性能も未だ現役クラスとなれば距離も伸びた個体も多いけれど、それにしても安い。安すぎる。12気筒だと思えば一層安い。世界で最も安い12気筒かも知れぬ。今どき300万円ではちょっとしたSUVも買えないのだから……。
けれどもその安さがアダとなるのか、街中で見る初代にはどこかやさぐれた感じが漂ってしまう。ホイールを妙に新しいデザインに替えてあったり、灯火類をダークにしたり、カッティングシートで似合いもしないマットにされていたり──と志のないモディファイが一層、クルマの価値を貶める。要するに、乗り手のセンスが疑われても仕方ない。勢い、クルマには罪がないというのに、フルノーマルの個体であってもなんだか佇まいに清々しさがなくなって見える。よほどこだわりのボディカラーであればまだしも、シルバーや黒が多いとなれば尚更だろう。
第2世代にはV8の選択肢も
というわけで、初代を諦めてスクロールしていくと、2代目が500万円台半ばから出始めた。2010年デビューの2代目、ヘッドライトのボディサイド側が小さくなって、よりワイドに見えるフロントフェイスのコンチGTは、初代とほとんど変わらぬシルエットだというのに、前後のイメージが異なるだけで随分とモダンに見える。
少なくともやさぐれては見えない。シルバーでも白でも黒でも、未だに“高級感”が漂っている。無理してベントレーに乗っているようには見えない。好きで乗り続けているように思ってもらえそうでもある(笑)。
それに2代目になるとV8とW12の2エンジンラインナップで、しかも相場はほとんど変わらないというから嬉しい。個人的には12気筒を好むが、乗ってバランスの良いのは2代目の場合、V8の方だ。出会った個体の色や仕様が気に入ればV8でも良いと思う。
20万kmを超えても堅調な個体も
それにしてもヘッドランプのデザインが違うだけで、こうも印象が変わるとは! 現行モデルも外側が小さいので、釣られて新しく見えるのかも知れない。いずれにしても大量に出回っているようなモデルではないから、イメージが最新モデルと似たことで鮮度の落ちもさほど激しくないというわけだ。
当然のことながら、年式と距離に応じて値札の数字は変わっていく。そういう意味では中古車としての相場がしっかりと成立している。つまり、人気もあるということ。流石にコンバーチブルともなると1000万円級に達してしまい、お得な感じはしないけれど、試しにピックアップした最も安い2011年型2代目(6万km、555万円)などは、深い銀に鮮やかな白内装でとてもセンスがよかった。ちなみに友人のコンチGTは20万kmを超えて未だ快調である。