「BMW M2」対「ポルシェ 718 ケイマンGTS4.0」を比較試乗

今注目の手頃なスポーツモデル「BMW M2」と「ポルシェ 718 ケイマンGTS4.0」を比較試乗

毎日乗ってもストレスが溜まらないスポーツカーの筆頭とも言える「BMW M2」と「ポルシェ718ケイマンのGTS4.0」。2台を比較試乗した。
毎日乗ってもストレスが溜まらないスポーツカーの筆頭とも言える「BMW M2」と「ポルシェ718ケイマンのGTS4.0」。2台を比較試乗した。
コンパクトなボディに460PSの強心臓を積むFRスポーツが新型「BMW M2」だ。小気味良い走りが売りのM2に挑むのは自然吸気6気筒を搭載する「ポルシェ 718 ケイマンGTS4.0」。素晴らしき官能的なエンジンを積むコンパクトスポーツ2台のポテンシャルを味わった。(GENROQ 2023年9月号より転載・再構成)

Porsche 718 Cayman GTS 4.0
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BMW M2

クルマ好きにとって魅力的な選択肢

460PSのM2と400PSの718ケイマンGTS4.0。そのパワーはコンパクトボディには有り余るほど。

車格や視界に気遣うこともなく、毎日乗ってもストレスが溜まらないスポーツカーにして、ライバルとはひと味違うエンジンを搭載しているモデル。その筆頭を挙げるなら、718ボクスター/ケイマンのGTS4.0ではないだろうか。911であればGT3一択となってしまう伝統の自然吸気フラット6を、昨今のポルシェとしてはお求めやすいお値段で所有することが出来る。多くのクルマ好きにとって魅力的な選択肢ではないかと思う。

と、そこに現れた好敵手がM2だ。初代のディスコンから約1年、ベースとなる2シリーズクーペのフルモデルチェンジを踏まえて復活した2代目は、昨今の時勢に沿って価格は上がったが、なんとか三桁万円のところで踏ん張っている。搭載するエンジンはもちろんストレート6。3.0リッターツインターボのそれはチューニングこそ異なれどM3/4と同じ、S58型だ。内燃機との時間は大切にしておかなければならないという意味でも、M2はGTS4.0と同じくらい、期待にしっかりと応えてくれるだろう。

新しいM2は初代に対して全長で105mm、全幅で30mmアップしている。それでもM4に対しては225mm短いので、長さ方向の圧はない。むしろ身構えるのはM4と同じ1885mmの全幅だろう。ちなみにタイヤサイズもM4と同一と、いってみればM2は、M4の凝縮版という側面もある。ちなみにホイールベースはM4に対して110mm短い。

実用性の高さがM2の魅力

M2の美点のひとつは、身軽な人であれば1台で完結する実用性の高さだ。その気になれば4人で移動できる後席空間は4:2:4のフォールディング機能を持ち、390Lのトランクスペースと繋いで使うことも出来る。前後の荷室部に加えてエンジンフード上にもスペースを有するケイマンもその気になればミッドシップ離れした積載力を使いこなせるが、乗車定員の差はいかんともしがたい。

M2の内装の基本意匠は2シリーズクーペに準じていて、センター側と連結したカーブドディスプレイのメーター周りなどをみると、もう少しスポーツカーとしての造形的な色気が欲しいなぁと思うところもある。そのぶん、というわけでもないだろうが、ドアトリムに配されるMカラーのオーナメントが明快にスポーティネスを伝えている。この点、ケイマンはむしろ古典的ともいえるが、直感的なインターフェースは安心感が大きい。M2は他のBMWのモデルと変わらないリッチなインフォテインメント環境が美点といえるだろう。

最新デバイスという点でいえば、M2の2ペダル仕様は渋滞時ハンズオフはないものの、全車速ACCやアクティブレーンキープアシストなどのADASはひと通りが標準装備となる。また、M2とケイマンは3ペダルMT仕様が選択できるところが大きなポイントになるが、右ハンドルでのドラポジは共に若干のオフセットがあることを認識しておいた方がいいだろう。特にM2はオプションのMカーボン・バケット・シートを選択すると、ホールド感が高まる一方で、座面中央で大腿部をサポートする凸面がペダル操作を窮屈にしてしまう側面もある。

カジュアルにポルシェを楽しめる718

911が1850mmからのワイドスタンスになったこともあり、ケイマンの佇まいはもはや現代のナローポルシェの趣だ。日本のインフラ的にもジャストな1800mmの全幅はGTS4.0でも同じ。街中や路地裏でもストレスフリーで扱える。

搭載するのはGT3由来ではなくターボ由来の9A2系となるフラット6。911GT3の搭載する9A1系とボア×ストロークは変わりないが、中身は別物となっていてそのフィーリングも一瞥できるほど異なっている。端的にいえば低回転域のザラ味やレスポンス、高回転域の突き抜け感などはGT3のオーラに及ばない。が、逆にそのザラ味が内燃機らしい摺動感としてGTS4.0にリアリティをもたらしているのも確かだ。極低回転域からのトルクは実効的だし、7000rpm半ばまできっちり吹けきるそのフィーリングはスポーツユニットとして文句のつけようがない。

一級のスポーツユニットという点においては、M2の搭載するS58型も然りだ。ツインターボユニットとはいえ、7200rpmのトップエンドまでパワーのタレを感じさせず、スキッと芯の揃った回転フィールと共に直6らしい中高音を響かせる。M4のFRモデルよりわずかに低い460PSとはいえ、そのパワーは凝縮された体躯には有り余るほどだ。

純度を選ぶか万能性か

実用性の高さがM2の美点。その気になれば4人で移動でき、390Lのトランクスペースと繋いで使える。その気になればケイマンもミッドシップ離れした積載力があるが、乗車定員の差はいかんともしがたい。

M2には電子制御のMスポーツディファレンシャルが備わるが、この効果はあらかたで、アクセルをしっかり踏んでいくとクルマの側がインに積極的に向かっていく好戦的なセットアップになっている。この辺りの動きはやはりM4と似ているが、ホイールベースの短さもあって操舵の初動はM4よりはっきりとシャープだ。そうやってパワーをぐいぐいと掛けていくと伝わる、軸間の短さからくる車体の塊感も、もしやM4以上ではないかと思わせる。

一方で低中速域では電子制御可変ダンパーの効能もあり、M2は乗り心地的な面でも不満もない。460PSのFRをサンダルのように気軽に扱えていいものだろうかと狐につままれた気分になるが、これもまた技術のなせるところだろう。スポーツカー純度の高さから得られる官能性こそがフラット6を積んだケイマンの肝だが、M2の万能性を知ると、その選択は相当悩ましいものになる。

REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2023年9月号

SPECIFICATIONS

BMW M2

ボディサイズ:全長4580 全幅1885 全高1410mm
ホイールベース:2745mm
車両重量:1730kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2992cc
最高出力:338kW(460PS)/6250rpm
最大トルク:550Nm(56.1kgm)/2650-5870rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前275/35R19 後285/30R20
車両本体価格:958万円

ポルシェ718ケイマンGTS 4.0

ボディサイズ:全長4405 全幅1801 全高1276mm
ホイールベース:2475mm
車両重量:1510kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHC
総排気量:3995cc
最高出力:294kW(400PS)/7800rpm
最大トルク:430Nm(43.8kgm)/5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前235/35ZR20 後265/35ZR20
車両本体価格:1224万円

【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

今回は新型M2の6速MTモデルと8速ATモデルの同時に試乗した。

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BMWが誇る後輪駆動のコンパクトスポーツ「M2」が新型へスイッチした。いかにもエンスージアスト好みのサイズに460PSを発揮する3.0リッター直6ターボを搭載。大柄のスーパースポーツ全盛の今、M2の存在はすこぶる貴重なものとなるだろう。(GENROQ 2023年8月号より転載・再構成)

エリーゼやエキシージの生産終了から2年近く。待望の最新ロータスがエミーラである。対するはポルシェの誇るエントリーミッドシップモデル718ケイマンの上位グレードGTS4.0だ。

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