フェラーリが制したル・マン24時間レース「食事・睡眠・過ごし方」の舞台裏

長丁場のル・マン24時間レースでフェラーリドライバーは何を食べて、どのように睡眠を取った?

WECワークス復帰初年度、フェラーリはライバルを退け、499Pが見事勝利を獲得。51号車のステアリングを握った3名のドライバーは、それぞれ異なるスタイルで24時間のレースを戦った。
WECワークス復帰初年度、フェラーリはライバルを退け、499Pが見事勝利を獲得。51号車のステアリングを握った3名のドライバーは、それぞれ異なるスタイルで24時間のレースを戦った。
2023年シーズンの世界耐久選手権(WEC)第4戦ル・マン24時間レースにおいて、見事復活勝利を飾ったフェラーリ・AFコルセの 499P 51号車(アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラド/アントニオ・ジョヴィナッツィ)。今回、フェラーリは、休息時間や食事など、24時間レースで繰り広げられたその舞台裏を明かした。

24時間レース中いかに睡眠を取るか

WECワークス復帰初年度、フェラーリはライバルを退け、499Pが見事勝利を獲得。51号車のステアリングを握った3名のドライバーは、それぞれ異なるスタイルで24時甲斐様なレースを戦った。
24時間レースの鍵となるのが、いかに効率よく休息を取るか。優勝した51号車でも、カラドは一切睡眠を取らず、グイディは4時間ほど眠ることができたという。

2023年シーズンの世界耐久選手権(WEC)に、ル・マン・ハイパーカー規定で開発されたプロトタイプレーシングカー「499P」で、ワークス復帰を果たしたフェラーリ。第4戦ル・マン24時間レースでは、トヨタ、ポルシェ、プジョー、キャデラックといったライバルを従えて、499P 51号車が見事勝利を飾った。

ル・マン24時間レースでは、オントラックでの走行以上に休息が重要視される。レース中、スティントを担当していないドライバーは、短い時間でいかに体力を回復するかが目標となる。今回、各ドライバーのベッドは、フェラーリのクルー専用モーターホーム内にあるピットボックスから、数メートルの位置に設置されていた。

「ル・マンには何度も参戦していますが、今年は初めてレース中に眠りませんでした」と、優勝した51号車をドライブしたジェームス・カラドは振り返る。一方、チームメイトのアレッサンドロ・ピエール・グイディは対照的な戦略を採った。

「なんとか眠るように努力しましたが、レース中は4時間以上は眠れませんでした。決勝レースに関しては、前後も含めると24時間よりもずっと長い時間サーキットで拘束されることになります。土曜の朝に起きて、日曜の夕方まで、サーキットでずっと忙しくしているんですから(笑)」

短時間睡眠を採り入れたジョヴィナッツィ

スティント前か、スティント後か、ドライバーによって食事を摂るタイミングも様々。ジョヴィナッツィ(写真)はメインの食事2回に、随時スナックを追加している。
ジョヴィナッツィ(写真)は、レースウイークに向けて短い睡眠を3回に分けて取る、特別なルーティンを導入した。

F1ドライバーとしても活躍した経験を持つアントニオ・ジョヴィナッツィは、トレーナーからのアドバイスに従い、ル・マン24時間レースの数週間前から、短い睡眠サイクル「マイクロ・ナップ(Micro-Naps:超短時間睡眠)」を導入した。

レースのスティントに合わせて、午後10時50分、午前6時10分、そして午前11時55分に3回の睡眠を取るよう、ルーティン化したのである。

「目を閉じ、深呼吸をし、できる限り自分の体を感じるのが鍵です。そしてリラックスできる音楽を聴く。 たとえば、チベットの笛の音とかですね。この笛の音は、休憩中など、サーキットにいるときにヘッドフォンで聴いていますが、アドレナリンをコントロールするのに役立つんです。ルーティン化することで、これを聞くと自然に睡眠へと誘われるようなります」

ドライバーによって異なる食事のタイミング

ジョヴィナッツィは、レースウイークに向けて短い睡眠を3回に分けて取る、特別なルーティンを導入した。
スティント前か、スティント後か、ドライバーによって食事を摂るタイミングも様々。ジョヴィナッツィ(写真)はメインの食事2回に、随時スナックを追加している。

睡眠と同様に重要なのが食事だ。エネルギー摂取量と消化速度が最適化された軽食は、ル・マンでのレースウィークに欠かせないもの。食事に関しても、ドライバーそれぞれが異なるメニューを採り入れている。

「各スティントの前に、水分補給と小分けにした食事を摂ります。必要であれば、エナジーバーやジェル状のサプリメントも追加しました」とカラド。「499Pのドライブを終えるたびに、パスタやライス、タルトを一切れ食べていましたね」と、グイディは逆にマシンを降りてから食事を摂っている。

ここでも、独自のスタイルを貫いているのがジョヴィナッツィ。土曜夜のディナー、日曜午前3時の朝食、7回のスナック、そしてステアリングを握る直前の夜中には1杯だけコーヒーを自分に許したという。

「土曜のディナーには60gのライス、鶏肉とルッコラのスライス、チーズのパルミジャーノ・レッジャーノを食べました。典型的なスナックは、生ハム50g、ドライフルーツ200g、ローストしていないアーモンド15粒です。そして冷蔵庫にはいつもクレープを用意しておきました。必要なものや食べる時間帯によって、甘いクリームやフルーツ、ハムや野菜など、挟むものを選ぶことができます。24時間レースとしては、完璧な軽食です」

フェラーリ本社をスタートした2台のフェラーリ 499Pは、多くのファンからの歓声を受けながら、マラネッロの中心街までパレードランを行った。

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