【フェラーリ名鑑:37】最新PHEVミッドシップ「フェラーリ296 GTB」「296 GTS」

新世代フェラーリを印象付けたPHEVミッドシップ「296 GTB」「296 GTS」【フェラーリ名鑑:37】

最高出力663PSのV型6気筒ツインターボエンジンにエレクトリック・モーターと8速DCTを組み合わせる。システム最高出力は830PSを発揮。
最高出力663PSのV型6気筒ツインターボエンジンにエレクトリック・モーターと8速DCTを組み合わせる。システム最高出力は830PSを発揮。
フェラーリが2021年に発表した「296 GTB」「296 GTS」。最初の「29」は排気量2992cc、「6」は6気筒エンジンを意味する「296 GTB/GTS」を表すようにV6ツインターボエンジンを搭載する最新ミッドシップは、SF90に続くPHEVモデルである。2023年現在、まだまだ発展中だが、その概要をお伝えする。

Ferrari 296 GTB/GTS

先進的なPHEVパワーユニット

かつての250LMを彷彿させるリヤフェンダーの造形。フェラーリが2021年に発表した「296 GTB」「296 GTS」の姿は、たしかに美しく、そして多くのフェラーリスタの心を刺激して止まないものであった。

だがその一方で、この296シリーズに導入されたメカニズムに、一瞬の戸惑いを抱いたカスタマーも存在したこともまた事実。それは将来のフェラーリ像をも予感させる、きわめて先進的なパワーユニットを持つモデルであったからだ。

296 GTB/GTSがミッドに搭載するエンジンは、もはやはるか昔と表現することにさえ抵抗のない、あのディーノ246 GT/GTS以来の採用となるV型6気筒。バンク角は120度で、そのバンク内にIHI製のターボチャージャーがツインで搭載される。さらにSF90ストラダーレに続くPHEVシステムを採用しているのも、この296 GTB/GTSの特徴。

V型6気筒エンジン単体でも、その最高出力は663PSと実に魅力的な性能を発揮しているが、さらにエレクトリック・モーターが組み合わせられることで、830PSの最高出力にまでその数字は高められる。組み合わせられるトランスミッションは8速DCT。そのシームレスな加速は大きな魅力だ。

実用性の高いスパイダーモデルも

296 GTB/GTSというネーミングに関しては、もはや多くを語るまではないだろう。それはフェラーリの伝統に即したもので、最初の「29」は排気量が2992ccであること。それに続く「6」は6気筒エンジンを意味し、また「GTB」はグラン・ツーリスモ・ベルリネッタを、「GTS」はグラン・ツーリスモ・スパイダーを示している。参考までにGTSのリトラクタブル・ハードトップは、その開閉に必要な時間はわずかに14秒。車速が45km/hまでなら走行中でも開閉が可能であるというから、その実用性は高い。

エクステリアの魅力的なデザインからも想像できるように、この296シリーズのエアロダイナミクスは他車を確実に圧倒するものだ。フェラーリから発表された最高速は330km/h。0-100km/h加速は2.9秒、0-200km/h加速では7.3秒というデータが残る。これはドライウエイトで1470kgという軽量性も大いに影響した結果だろう。

サーキット走行によりフォーカスしたパッケージも

しかしフェラーリのパフォーマンスに対する取り組みは、これでは終わらなかった。サーキット走行によりフォーカスした「アセット・フィオラノ」パッケージの存在がそれで、こちらもSF90ストラダーレに続いての設定となる。

さらなる軽量化や専用のエアロパーツの装着、またサーキット走行に最適化されたアジャスタブル・マルチマチック・ショックアブソーバー、レキサン樹脂製のリヤスクリーンなどはその代表的な特別装備で、それらの多くはアセット・フィオラノ仕様でなければ選択できないオプションアイテムとなっている。250LMをイメージした専用のカラーリングもまた同様だ。

フェラーリの現行ラインナップでは最もコンパクトなモデルとなる296 GTB/GTS。そのヒットは間違いない1台といえるのではないだろうか。

「デイトナSP3」のボディサイズは全長4686、全幅2050、全高1142㎜で、ホイールベースは2651㎜。外観から感じるより、はるかにコンパクトだ。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…