【フェラーリ名鑑:36】過去のプロトタイプを思い出させる「デイトナSP3」

レーシング・フェラーリのような「デイトナSP3」とは?「ICONAシリーズ第3弾の狙い」【フェラーリ名鑑:36】

「デイトナSP3」のボディサイズは全長4686、全幅2050、全高1142㎜で、ホイールベースは2651㎜。外観から感じるより、はるかにコンパクトだ。
「デイトナSP3」のボディサイズは全長4686、全幅2050、全高1142㎜で、ホイールベースは2651㎜。外観から感じるより、はるかにコンパクトだ。
過去のアイコン的存在のフェラーリ車にデザインのモチーフを求めたフェラーリの新シリーズ「ICONA」。最新のパッケージに往年の伝説のモデルを彷彿させるスタイリングが与えられたスペチアーレ・シリーズである。その第3弾として登場した「デイトナ」の名前が与えられたレーシーなモデル「SP3」を紹介する。

FERRARI DAYTONA SP3

599台のみ計画された「SP3」

リヤミッドに搭載されるエンジンは、6496cc自然吸気V型12気筒。これはフロントエンジンの812用のそれをベースに改良を加えたものだ。

2018年、フェラーリが新たに市販車モデルのラインナップに加えたのが、「ICONA(イーコナ)」と呼ばれる新たなシリーズだ。500台規模の生産台数を想定し、過去のアイコン的存在のフェラーリ車にデザインのモチーフを求めた、このシリーズは、単に過去のモデルのレトロフィットではない。

とはいえフェラーリのデザイナーが効果的にそのモチーフを採り入れたことで、時間の流れを飛び越えたかのような、じつに魅力的なモデルに仕上がっている。ちなみにここで紹介する「デイトナSP3」は、先に発表された「SP1/SP2モンツァ」に続くもので、生産台数はこれらの両モデルよりやや多い599台が計画されている。

外観から感じるよりコンパクト

デイトナというネーミングからも想像できるように、このモデルが多くのモチーフを得ているのは「330 P3/3」を始めとする「312P」など、かつてサーキットで大活躍を見せたプロトタイプ・レーシングカーの数々だ。キャビン、すなわちモノコックは強靭かつ軽量なカーボンファイバーで成型されており、それは航空機にも使用される非常に高性能なもの。ラ フェラーリのカーボンファイバーモノコックが開発のスタート地点にはあったという。

デイトナというと、どうしても、後に「デイトナ」の愛称が掲げられるに至った365GTB/4をイメージするところだろうが、実際のデイトナSP3のエクステリア・デザインは、それとは異なり、ロングノーズのシルエットはさほど強く描かれていない。それはデイトナそのものというよりも、それに続いたPシリーズの歴史的な活躍にも敬意を表した結果であるのだろう。フロントフェンダー上に配置されたサイドミラーも、空力的には洗練されたフォームでありながら、どことなく懐かしさを感じさせるものに仕上がっている。

それにしても、何と刺激的なボディシルエット、そしてディテールを与えることにフェラーリのデザイン・チームは成功したのだろうか。実際のボディサイズは全長4686、全幅2050、全高1142㎜で、ホイールベースは2651㎜。外観から感じるより、はるかにコンパクトな設計であることがこの数字からも理解できる。さらにファンにとって嬉しいのはオープントップを備えていることで、軽量なカーボン製の着脱式ハードトップは、重量がわずかに8kgと使い勝手にも優れている。

6.5リッターV12は840PSを発揮

リヤミッドに搭載されるエンジンは、6496ccの排気量が設定されたV型12気筒ガソリン自然吸気で、これはフロントエンジンの812用のそれをベースに改良を加えたものだ。ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)コーティングの採用によって内部の摩擦係数を減少させ、それによってパフォーマンスや燃料消費率の向上を達成した。クランクシャフトもさらに精巧なバランス取りが行われている。これらのチューニングによって840PSの最高出力を得ることに成功している。

キャビンは2シーターとしては十分な広さを持つが、シートはモノコックに固定されているため、アジャストはペダル側で行う。室内からの視界も、左右で高さの異なるサイドミラーに象徴されるように、徹底的にその機能性が追求されているのが分かる。

最高速で340km/h、0-100km/h加速が2.85秒、0→200km/h加速が7.4秒と発表されたデイトナSP3。ステアリングホイール上のマネッティーノには「WET」「SPORT」「RACE」の3モードが設定されている。タイヤはピレリとの専用開発による「Pゼロ・コルサ」を装備。

フェラーリのICONAビジネスは、ごく一部のVIPユーザーのために用意された特別なプログラムだが、これからも次々に魅力的なモデルが誕生することを、大いに期待したいところだ。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…