Porsche 911 Carrera(’95/Type993) LONG-TERM REPORT Vol.1

ポルシェ 911(タイプ993)ロングタームレポート:第1回「突然ですが“空冷”買いました」

「空冷バブルは弾けた」と言われながらも、相も変わらず高値安定を続ける“空冷”ポルシェ 911。かつての中古価格を知る者ならば「欲しいけど、買わないよねぇ〜」な一台に、この期に及んで手をあげたヤツがいた! しかも現物を一度も確認せず、男のフルローン!? 時代遅れのドン・キホーテでも構わない! 根性の空冷レポートが、いま始まる!!(※この記事はGENROQ 2018年3月号の「ロングターム・レポート」に加筆・修正したものです)

空冷911に恋焦がれたモータージャーナリスト、山田弘樹の夢叶う!

「距離はイってるケド、いいのあったがやぁ〜!」

三河弁丸出しの弾んだ声で、本誌でもおなじみの鶴田御大が電話をかけてきたのは、2017年10月のこと。筆者はかねてから「icode」へ行くたびに、「掘り出しモノはないですかぁ〜♪」と井上陽水ばりにねちっこく訴え、「300万円で空冷売って下さ〜い、うふっふ~♬」と恫喝し、「そんなモンあるかいッ!」と怒られていたのですが・・・苦節5年くらい? とうとうそんな一台が、いや、値段はもう少し張りますが、本当に、出てきてしまったのですッ!!

とはいえicodeといえばポルシェ界では老舗中の老舗。普通なら筆者が買える価格帯の物件は、よほどの理由がない限り扱いません。特に狙っていたタイプ993の6速MTはタマ数が少なく、御大曰く「探してあげたくても、そもそもボロくて安い個体がないのよ」なのだそうで。今でこそ“空冷バブル”は弾けた、なんて言われていますが「まともな個体が1000万円以上するのは当たり前。これは昔を知る自分としても、信じられないことだよ。やめとき、やめとき!」と、常々たしなめられていたのでした。

空冷ポルシェに魅せられて

でもね・・・諦めきれないわけですよ。特に筆者の場合は「そろそろポルシェに乗ってみたい!」と思えるお年頃になって、ようやくポルシェに恋心を抱けたまさにその時に、あの忌まわしい空冷バブルがやってきたのですから。それまで400万円も出せば程度のよい993が手に入り、タイプ930だと100万円台が当たり前。タイプ964なら200万円も出せばコツコツ直して楽しめるベース車が手に入っていたのに、いざ買おう!と思った矢先におやおやおや!?っと値上がりが始まり、アッという間に大高騰してしまったのですから。

それでも、「手に入らない」と思うほどに恋心は募るもの。それからはもう、毎晩「カーセンサーnet」や「グーワールド」をネットサーフィンしては、タメ息つきながら、無理を承知の空冷探しが日課となったのです。その顛末はいずれ「庶民の993購入術」として紹介しましょう。

「こんなモン、故障のうちに入らんワイッ!!」by icode 鶴田氏

というワケで? とりあえず今回は、晴れて我が愛車となった993の素性をお伝えしようと思います。というかボクも、実は現車を見るのは今回が初めて(汗)。信頼を寄せる鶴田御大の言葉をまるっと信じて「かっ・・・買います!」と返事して、男のフルローンを組んでしまったわけでして。

さて“ボクの911”ですが(なんて素晴らしい響きなんだ・・・)、生まれは95年式。ヴァリオラムのない、いわゆるフツーのカレラです。走行距離はそれなりに進んだ23年選手のおじいちゃん(おばあちゃん?)ですが、3年ほど前に前オーナーが専門店でエンジンのオーバーホールを行っており(それでもヘッドからのオイルにじみがあります)、その作業写真がすべて保存されているというのが、鶴田御大にとっての決め手となったのでした。まぁ、トヨタのAE86に4台ばかし乗り、かつて1968年式のアルファロメオ(GT 1300 Jr.)をアシにしたボクにとって、911がハチロクやジュリアよりもボロいはずはなかろうし、距離や古さにも免疫はあるのですが、ボディも再塗装されていたり、きっちり整備手帳が付けられているなど、大切に扱われていた個体だったのは朗報でした。

というのもワタクシ、この993一台ですべてをこなしたいのです。こうしたスポーツカーには「距離が増えたら価値が落ちる」といった面倒くさい問題があるのは承知ですが、都心暮らしで2台所有は贅沢! これまで苦楽を共にしてきた1986年式トヨタ スプリンター・トレノを手放すのは勇気が要りますが(つか、ハチロクだけで生活してたんかい!)、もし今年の夏を993一台で乗り切れるようであれば、一台に絞ろうと考えています。

大事にされてた一台でした♡

それに世界には100万km超えの911 ターボや356といった先達が何台かいるわけで、彼らに勝とうと思ったら免許返納するまでにざっと年間4万7000kmくらい走らないといけない。この仕事で試乗車以外に自分のクルマを走らせる距離は、年間およそ4万km。むしろピッチを上げなくてはいけないくらいなのです!

なんかわけのわからないこと言ってますが、気持ちとしてはずっとこの993に乗り続けたいわけです。そしてこの連載では、ボクのように空冷が欲しくてたまらない“フツーのひと” が、勇気をもってその一歩を踏み出せるようなレポートをしていきたい。今回は前置きで終わってしまいま したが、次回からは気合いを入れて、 ねちっこくレポートしていきますので、どうぞよろしくお願い致しますッ!

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)

2022年 筆者追記:いやー、初々しいオッサンですね! ちなみに現在も993は、元気に走っております。その模様は、ぜひ自動車雑誌『GENROQ』の「ロングターム・レポート」でご覧下さい!!

【SPECIFICATIONS】
Porsche911 Carrera(’95/Type993)
ボディサイズ:全長4245 全幅1735 全高1300mm
ホイールベース:2270mm
車両重量:1370kg
燃料タンク容量:73.5リットル
エンジンタイプ:M64/05
形式:空冷水平対向6気筒SOHC
総排気量:3600cc
圧縮比:11.3
最高出力:272ps/6100rpm
最大トルク:330Nm/5000rpm
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ホイール:前7J×16 後9J×16(※)
タイヤ:前205/55ZR16 後245/45ZR16(※)
※ レポート車は社外品の18インチが装着されていた。

【COOPERATION】
アイコード
TEL 0565-46-0727

【関連リンク】
・アイコード 公式サイト
http://icode.jp/

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著者プロフィール

山田弘樹 近影

山田弘樹

モータージャーナリスト。自動車雑誌『Tipo』の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した…