走行距離なんと1万キロ! 知人から託されたSW20MR2が極上すぎる! 【昭和・平成クラシックカーフェスティバル】

古いクルマとの出会いは縁だと言える。どれだけ欲しくても見つからない時は見つからないし、探していたわけでもないのに極上車と巡り合えることもある。今回で最後になる2022年12月に開催されたイベントの記事は、知人から託された極上のトヨタMR2を紹介したい。
PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
1995年式トヨタMR2 Gリミテッド。

2022年12月に埼玉県北本市にある商業施設「HEY WORLD!!」で開催された「昭和・平成クラシックカーフェスティバル」。イベントの模様とともに、展示された参加車両を何台か紹介してきた。今回がその最後になる。トリを飾るのは1989年にフルモデルチェンジされ2代目になったトヨタMR2。今ではすっかり旧車として扱われるようになったMR2だが、イベントで見かけるのは初代AW11が主流。2代目のSW20型を見かけることは少ないのだが、この日は赤い輸入車に囲まれても負けないくらい程度が良く存在感のある個体と巡り会えた。

新車時からの塗装は色褪せひとつない。

2代目のSW20は1989年に発売され、1999年まで10年間も作り続けられた長寿モデル。ところが生産期間中にバブル景気が崩壊したことで、日本国内にはスポーツカー冬の時代が到来する。数度のマイナーチェンジや一部変更を繰り返してきたMR2は、こうした逆境のなか思ったような販売実績を達成できなかった。現在は国産スポーツカーの中古車が世界的な人気となり、初代AW11同様に相場を高騰させている。それでも残存数は決して多くはなく、すでに希少車の部類に入るかもしれない。

魅力的なリトラクタブルヘッドライト。

今から探しても相場はすでに上昇していて、程度が良いと新車価格の倍近い相場になってしまった。こればかりは仕方ないことかもしれないが、魅力的なリトラクタブルヘッドライトを備えたミドシップ・スポーツカーは国産車として現在、新車は手に入らない。選択肢は中古車しかないわけで、なおかつMR2が現役だった当時を知らない世代にも人気が広がっているから、もはや新車価格という基準はあってないのと同じだろう。

2代目SW20は初代の1.6リッターから2リッターへ排気量を拡大した3S系エンジンを搭載。自然吸気とターボの2種類が選べ、やはり人気は高出力のターボモデル。なおかつトランスミッションはMTに人気が集中している。

熱の影響を受けやすいエンジンフードもツヤツヤしたまま。

だからと言ってATモデルの価値が低いのかといえば、そうでもない。例えば今回紹介する個体はATかつ自然吸気エンジンのGリミテッド。市場的には人気が低いかもしれないが、抜群の程度の良さを目の前にすれば人気のことなど気にならないはずだ。なにしろこのGリミテッドは新車から1オーナーのまま1万キロを走行して2代目オーナーの手に渡ったという、なんともすごいエピソードの持ち主なのだから。

エンジンはフルノーマルのままだ。

Gリミテッドのオーナーは75歳になる堀越憲治さん。紳士然とした堀越さんと真っ赤なMR2に違和感を覚えてお話を聞いてみた。すると堀越さんは長年1974年式メルセデス・ベンツSL、R107を所有されてきた人。メルセデス・ベンツクラブ107の副会長でもある人で、こうしたイベントでは有名人でもある。そんな堀越さんがなぜSW20に乗っているのか不思議に思える。

外装や機関同様にインテリアもノーマルのまま。
走行距離は1万キロを超えたばかり!

お話を聞くにつれ、その疑問も解消された。このGリミテッドを新車で購入して以来、長らく維持してきた友人が長期で海外へ行かれることになった。そこで次のオーナーへバトンを渡したいと考え、堀越さんへ打診があったのだそうだ。ご自身はあまり興味がなかったSW20だが、これだけの程度の良さと大事にされてきた友人のことを思えば断れない。この状態を今後も維持すべく受け継ぐことにされたのだ。

懐かしいカセット・CDステレオも当時のままだ。
サイドサポート部にスレすらないシート。

といってもSW20に魅力を感じていないわけでは、もちろんない。堀越さん自身「リトラクタブルヘッドライトであること、Tバールーフであること、NAエンジンで赤いボディカラー、さらにはフルノーマルなので」引き継ぐことを決められたそうだ。譲り受けたのが2020年のことで、すでに2年が経過したが、その間トラブルは皆無。変更したのはタイヤくらいで、初代オーナー同様にノーマルを維持することに努めている。

やはり古いクルマは良縁がないと手に入れることは難しいのかもしれない。ちなみに撮影するためエンジンフードを開けていただいき撮影後に閉じようとしたところ、フードのステー根元にある樹脂部品が割れてしまった。申し訳なく思いつつ、経年劣化を最も受けやすい樹脂部品の現実をあらためて見せられた。特にこの年式のクルマは部品がなくなっている状況。割れていないくてもスペアを用意しておくべきと強く感じた。

キーワードで検索する

著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…