旧車価格高騰を代表する一台!「R32スカイラインGT-R VスペックⅡ」【昭和・平成クラシックカーフェスティバル】

もはや説明の必要がないほど、旧車の価格が高騰するきっかけとなったのが「R32スカイラインGT-R」。なかでも人気が高いVスペックⅡのフルノーマル・極上車が北本市で開催されたイベントに参加していた!
PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
日産スカイラインGT-R VスペックⅡ。

いわゆる「25年ルール」により中古車相場が高騰した車種の代表がR32スカイライン。25年ルールとは、アメリカで新車が販売されなかった車種や保安基準などに適合していない車種であっても、製造から25年を経たものであれば登録することが可能になること。アメリカで販売されなかった国産スポーツカーは基本的に登録できなかったわけだが、25年ルールにより状況が変わる。

そのためR32スカイラインGT-Rの中古車を多くのバイヤーが買い付け、アメリカへ輸出してしまう事態となった。当然、日本国内でR32スカイラインGT-Rの中古車は相場を上げることになり、今でも高騰したままになっている。映画の影響もありR32スカイラインGT-Rだけでなく、国産スポーツカーの多くがアメリカへ輸出されている。ところが、事態は急変するかもしれない。アメリカの一部の州では25年ルールと関係なしに、排ガス規制や保安基準を満たしていない車両の登録を禁じているが、この動きが広がりそうなのだ。

車高や装備などはほぼノーマルの状態を保つ。

もしかすると国産スポーツカーの中古車価格が落ち着く可能性もある。これは推測に過ぎないので断言できないけれど、今後国産スポーツカーの輸出が減ることも考えられる。以前からR32スカイラインGT-Rに憧れ、いつかは乗りたいと思っている人にとって朗報となるかもしれないが、一度上がった相場はそう簡単には落ちないだろうことも想像できる。だから相場が高騰する前に買えた人は本当にラッキーだったと言える。

純正アルミホイールのスポーク間からブレンボ・キャリパーが見える。

2022年、関東地方で最後となる旧車イベントが埼玉県北本市にある商業施設「HEY WORLD!!」で開催された。イベントのタイトル通り「昭和・平成」の時代に生産された車種が対象になっているため、幅広い年式のモデルが参加可能だった。旧車イベントというとキャブレター時代、かつ排ガス規制前のクルマを対象としたものが多いけれど、今後は平成時代に生産されたクルマたちがこうした場所へ現れることが多くなることだろう。昭和・平成クラシックカーフェスティバルに展示された多くのクルマは1980年より以前のものだったが、それ以降のクルマたちも少なくない台数が参加していた。

ホワイトのボディはまさに極上。

なかでも目を引いたのがホワイトのボディカラーが鮮やかなR32スカイラインGT-R。しかも良く見れば人気が集中するVスペックⅡで、なおかつほぼノーマル。なかなかお目にかかれる状態ではないため、早速近くにいたオーナーへ話しかけてみた。快く取材に応じてくれたのは48歳になる相原裕二さん。年齢的に運転免許取得時に新車として販売されていたスカイラインがR32型で、ストレートに憧れた世代でもある。そんな相原さんはグループAによるツーリングカーレースを席巻した時代を目の当たりにしていたことから、R32スカイラインGT-Rに長らく想いを寄せ続けていた人なのだ。

純正ステアリングのままな個体は珍しいと言えるだろう。
走行距離は12万キロを超えたところ。
3連メーターやCD・MDステレオも新車時のまま。

一時期は100万円以内で売られている中古車が数多くあったものだが、2014年を境に25年ルールが適用されたため相場が高騰し始める。そんな状況を苦々しく感じられていたことだろう。だが、できれば相場の底辺付近で取引されているような個体ではなく、極上の1台を見つけたいと考えていた。しかもベースグレードではなくVスペック、さらにはVスペックⅡに照準を当てて探し続けた。運命の1台に巡り会えたのは2019年のこと。すでに相場は上昇傾向だっだが、今のようにべらぼうな価格ではない極上のVスペックⅡが見つかったのだ。

純正シートのヘタリも最小限。

購入されたのは第二世代GT-Rの専門店から。購入時点でほぼノーマルを保っていたため、改造することは考えず状態をさらに引き上げるべく努力された。変更したのはマフラーくらいで、しかも選んだのは純正と呼んでもいいニスモ部品。すでにチューニングベースとして選ぶ時代ではないため、ブーストアップ+社外マフラーで性能を引き上げることは考えず、ノーマルプラスアルファで楽しまれているのだ。

また極上だったボディだが、どうしても経年により樹脂部品などは劣化する。どれだけ塗装の状態が良かったとしても、樹脂部品が劣化したままだと外装の見栄えが悪く感じられるもの。そこでモール類は純正新品にすべて交換している。だからこそ、今の状態があるのだ。

名機RB26DETTエンジンはオーバーホールしていない。
本体にトラブルはないがタービンを純正新品に交換した。
エアフローメーターなど年式なりのトラブルはある。

エンジンやサスペンションなども可能な限り純正であることにこだわっている。現在の走行距離は12万キロだから、そろそろ電装系などにトラブルが起こる可能性がある。これまでに修理や交換を要したのは少ないが、RB26DETT型エンジンの要であるタービンが疲弊してきた。そこで純正タービンに交換するのだが、すでにR32用としては製造廃止になっている。

とはいえ、R34まで共通部品であるため部品入手に困ることはなかったそうだ。「この状態を保ってこられた前オーナーに感謝です」と語る相原さん。確かに旧車の状態は歴代オーナーの扱い方次第で大きく変わる。丁寧に乗られてきた個体を気長に探すことが、旧車選びのポイントなのだ。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…