室内空間や快適性の進化は著しいが、ライバル車との比較では平均的

新型のボディサイズはやや大型化し、後席膝まわり空間もわずかに向上した。荷室寸法は長さ900mm×幅980mm×高さ925mmであった旧型に対して、新型は885mm×1025mm×870mm。5人乗車時の荷室長はわずかに短くなったが、後席を倒した際の最大荷室長は旧型の1385mmから1500mmへと伸長されている。ただし、荷室床面と後席背もたれとの間に大きな段差がある点は変わっていない。

クルマ全体の使い勝手は旧型から大きな変化はないが、新型キックスは快適性や利便性が大きく向上している。後席には新たにエアコン吹き出し口が追加されたうえ、背もたれには2段階調整可能なリクライニング機構が備わり、中央座席の背もたれには格納式のアームレストが追加された。

ただし、これらはほとんどのライバル車が当たり前のように備えている機能や装備であり、キックスは新型でようやくライバル車に並んだというべきだ。

もっとも顕著な変化はデザインと言えるだろう。アメリカンフットボールのヘルメットをモチーフにした変形Vモーショングリルのフロントフェイスと、同社のリーフを思わせる張り出したテールランプ周りの造形はキックスの大きな個性だ。基本的なデザインは2年前から海外先行して販売されているモデルと同じだが、バンパー下部などの細部デザインは日本向けに手が加えられており、グレードによっても差異が見られる。

最上級グレードの“G”は前後バンパーとサイドシルのクラッディング部が質感高いグロスブラック塗装となるのに対し、ベーシックグレードの“X”とその派生グレードは、スニーカーソールを模したディンプル加工が追加され、廉価グレードでも安っぽく見えない工夫が凝らされる。なお、旧型の生産国はタイだったが、新型キックスは国内製造となる。

新型 日産 キックス X
ボディサイズ=全長4365mm×全幅1800mm×全高1615mm
ホイールベース=2655mm
車両重量=1430kg
タイヤサイズ=215/60R17(前後)

旧型 日産 キックス X
ボディサイズ=全長4290mm×全幅1760mm×全高1605mm
ホイールベース=2620mm
車両重量=1360kg
タイヤサイズ=205/55R17(前後)

第3世代e-POWERにより燃費性能1割アップ! とりわけ高まったのは静粛性

引き続き、新型キックスはエンジンで発電しモーターで走行する“e-POWER”のみの設定となる。ただし、ハイブリッドシステムは第3世代へとアップデートされた。

第3世代e-POWERでは、モーターやインバーター、減速機など5つの主要構成部品を一体化することで小型化と軽量化を図るとともに剛性を高めて作動時の振動を低減。モータースペックも旧型比で+7ps/+35Nmとなる最高出力143ps/最大トルク315Nmへと向上している。

発電機となるエンジンは旧型の1.2L 3気筒エンジンから、発電性能に特化した1.4L 3気筒エンジンへ変わり、絶対的な発電量も増加したことで新型キックスはe-POWERが苦手とする高速道路でも力不足を感じづらくなった。

こうした改善により、WLTCモード平均燃費は旧型の23.0km/L(Xグレード)から25.7km/L(Xグレード)へと約1割のアップを果たし、高速燃費も21.6km/Lから23.8km/Lへと向上。引き続き、1ペダルドライブの“e-Pedal Step”も採用されている。

動力性能や燃費性能の向上に加えて、新型キックスは静粛性の向上が著しい。パワートレインの刷新によってノイズ自体を徹底的に抑えるとともに車体自体の遮音性もアップ。“路面検知制御”も追加され、エンジン音がロードノイズにかき消されて聞こえづらい荒れた路面で積極的に充電を行ない、ノイズが小さくなる滑らかな路面ではエンジン作動頻度を低減し静粛性を高めてくれる。

また4WDモデルは、リヤモーターの最大トルクが+40Nmとなる140Nmへ向上したうえ“e-4ORCE”へとアップデートされた点も大きなトピックだ。

前後のモーターとブレーキを統合制御するe-4ORCEは、雨や雪の路面での安定性向上はもちろん、前後駆動の協調制御により車両姿勢がフラットになるように維持してくれる。とりわけ減速時には前後モーターの回生ブレーキを緻密にコントロールし、不快な前後の揺れなどを抑えて上質な乗り心地を提供してくれる点がe-4ORCEの大きな特徴だ。

新型 日産 キックス X
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1433cc
最高出力=98ps/6000rpm
最大トルク=115Nm/6000rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

旧型 日産 キックス X
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1198cc
最高出力=82ps/6000rpm
最大トルク=103Nm/4800rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

旧型より安い“Xシンプルパッケージ”に注目が集まる

旧型キックスのXグレードの新車価格は308万3300円だったのに対し、新型のXグレードは325万9300円だ。値上げ幅は約18万円であり、進化点を考慮すれば良心的なプライスと言えるだろう。なお、e-4ORCEモデルを選択した場合は約35万円アップとなる。

新型キックスはグレード構成も大きく変化した。新型ではパノラミックガラスルーフや電動シート、アダプティブLEDヘッドライトなどが標準搭載となる“G(389万8400円)”を最上級として、実用装備が標準で備わる“X+(354万9700円)”と、装備を簡略化した“Xシンプルパッケージ(299万9700円)”の合計4グレードが用意される。

ただしXシンプルパッケージは、メーター一体式となる12.3インチの“NissanConnectインフォテインメントシステム”が装着できず、ディーラーオプションナビしか装着できない。また、ボディカラーは1色のみとなり、トリム材質なども“X”以上のグレードとは差別化されている。

しかし、テーラーフィット巻きのステアリングや、体圧分散性に優れたゼログラビディシートは共通で備わり、プロパイロットも全グレード標準搭載だ。

実際は、多彩なオプションが用意されるベーシックな“X”、もしくは“X+”が売れ筋グレードとなるだろう。新型キックスの個性的なデザインやクルマの性能だけを享受したいならXシンプルパッケージで十分とも言える。新車価格がどんどん高くなっていくなか、廉価グレードの設定は消費者にとって嬉しい配慮だと言えよう。

車両本体価格

新型 日産 キックス X:325万9300円

旧型 日産 キックス X:308万3300円