日産の電動化戦略を支える新型「キックス」登場

日産のコンパクトSUV、キックスが初めて日本に登場したのは2020年のことだ。同年に内外装のクオリティを一新したモデルが日本専用のe-POWER車として導入され、独自の電動化技術の訴求モデルとして存在感を示してきた。そのキックスが今回、フルモデルチェンジを果たし、新型として登場した。発表会場に立った日産自動車日本マーケティング&セールス執行職の杉本全(すぎもとあきら)氏は、このモデルの位置づけを明確に語っている。

日産自動車日本マーケティング&セールス執行職の杉本全(すぎもとあきら)氏

「新型キックスは新開発の第3世代e-POWERを日本で初めて搭載して電動化の価値をより多くのお客様にお届けする重要な戦略モデルであると同時に、日産の成長に向けた重要な一歩となるモデルです」

これは単なる代替わりではない。日産が今年4月に発表した将来ビジョンの中で、e-POWERを電動化技術の核と位置づけ、新型キックスをその中心的な量販モデルと定めたことを意味している。

「大人の遊び心を刺激する車」というコンセプト

日本のコンパクトSUV市場は過去10年で保有台数がおよそ3.8倍に拡大し、いまや登録車最大のセグメントにまで成長している。そこに多くのライバルが顔を揃えるなかで、新型キックスが目指したコンセプトは「大人の遊び心を刺激する車」という言葉に集約される。これを語ったのはチーフプロダクトスペシャリストの田中聡(たなかさとる)氏だ。

日産自動車チーフプロダクトスペシャリストの田中聡(たなかさとる)氏

「忙しい毎日の中でも気持ちが高まるようなワクワクする体験をお届けしたい。コンパクトサイズであるにも関わらず、妥協のないデザインや性能を実現した、あらゆるシーンで活躍できる多様なSUVを目指しました」

田中氏がターゲットとして明確に設定したのは、40代後半、成長したお子さんのいる3人家族のお父さん像だ。「ストーリー性のあるもの、新しい刺激があるもの、商品そのものの良さを重視される」ユーザーに向けた商品として、力強くダイナミックかつ俊敏で軽快なエクステリアデザインと開放的で心地良いインテリアデザイン、第3世代e-POWERとe-4ORCEに代表される先進技術、快適性と利便性を追求したユーティリティ性能の3つをコアバリューに据えている。

世界初出し、第3世代e-POWERは燃費10%向上

その先進技術の中核となるのが、今回の最大の訴求ポイントでもある第3世代e-POWERだ。1.4リッターの発電特化型エンジンと走行用モーターを組み合わせ、3世代目に当たるこのシステムは、日産が世界初出しとするもので、現時点では北米仕様のキックスにも搭載されていない、日本向けに開発された新機軸だ。

日本向けパワートレインには第3世代e-POWERを世界初搭載

「日産が磨き続けてきた100%モーター駆動ならではの力強い加速感を向上させています。また、アクセル操作でのワンペダル感覚もより扱いやすい減速感に仕上げております。第3世代では燃費も静粛性も大幅に向上させています」と田中氏は説明する。

e-POWERは高速定常走行での燃費が有利とは言えないが、現行モデルに対し高速燃費を含めて10%以上の燃費向上を実現し、加速中でも会話できるレベルの静粛性を確保した、という。それだけでなく、4WD仕様には電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」も搭載し、ドライバーへの思い通りの操作性と同乗者への安心感・快適さを両立させている。

安全・運転支援装備にも力が入っている。クラス初となる12.3インチの独立したメーターとセンターディスプレイを採用し、先進感と視認性を両立。従来のプロパイロットに加え、後退時の運転支援システムなどを拡充し、360度の運転支援装備でドライバーをサポートする体制を整えた。

クラス初の12.3インチデュアルスクリーンも採用、300万円を切る価格からスタート

室内の使い勝手も大きく進化している。現行モデルへの不満として多くの声があった室内空間の居住性を大幅に改善し、大人でも余裕のある頭上空間と快適な膝まわりの空間を確保。「コンパクトSUVクラスナンバーワンの居住性を実現した」と田中氏は自信をもって語っている。また、ラゲッジルームも開口部と容量を拡大し、家族でのお出かけにも十分なスペースを確保している。キックスとしてはじめてパワーバックドアと100Vコンセントが設定されたことも実用性向上に貢献している。

気になる価格については、スタート価格は299万円からという設定が発表された。多くの選択肢がひしめくコンパクトSUV市場において、ハイブリッド車でこの価格帯の実現は、ライバル車たちに対しても、購入を意識した多くのユーザーに対しても、衝撃を与える数値だ。

新型キックスは、日産が電動化を軸に勝負する上で、もっとも重要な「顔」と言うべき存在だ。すなわち、もっとも売れるカテゴリーにおいて、日産はすべて電動車ですと表明することになるのだ。ファミリーでのデイリーユースから週末のアウトドア、長距離ドライブまで幅広くこなしながら、走るたびに「乗ってよかった」と感じさせることを目指したクルマである。e-POWERの走りは、誰にもスムーズで、航続距離を気にせず電動車の体験を提供してくれる。すでに知っている人にも、その進化を実感する価値は十分にあるだろう。