NOx規制対象外だからトラックでも大丈夫! A15改エンジン搭載のサニートラック! 【昭和・平成クラシックカーフェステバル】

古い商用車はNOx規制と称され地域によっては登録・使用が許可されない場合がある。ピックアップタイプの小型トラックが残っていない理由にもなっているが、規制年式より新しいものの古いままのモデルなら除外される。その代表例がサニートラックで、高年式モデルだといまだに乗り続けることが可能。そんなサニトラをカスタムした素敵な例を紹介しよう。
PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
1990年式日産サニートラック・ロング。

国産車で長寿を誇ったモデルといえば、誰もがトヨタ・センチュリーや日産プレジデント、三菱デボネアの名を挙げるだろう。確かにいずれもフルモデルチェンジまでの期間が20年から30年ほど開いたロングセラーだったが、忘れてはいけないのが日産サニートラックだ。当初はダットサン・サニートラックとして1967年に発売され、1971年にフルモデルチェンジして2代目になる。

ベースとなったサニーのモデルチェンジに合わせて進化したわけだが、その後の歴史が興味深い。というのも2代目になってからはマイナーチェンジこそするものの、1994年までエンジンを含め大きく変更されずに生産され続けたのだ。実に23年も大きな変化がなく、さらに海外では1984年にダットサン1400と名前やエンジンを変えたものの、2008年まで生産された。

これは主にアフリカでの需要に応えたもので、小型軽量なFR駆動方式のトラックであることが重宝されたから。実は世界に誇れる長寿モデルがサニートラックだったのだ。

フロントマスクを古い丸目仕様に変更している。

話を国内に戻せば、1971年に2代目となったサニートラック、俗称「サニトラ」はB120という型式のまま1977年まで生産された。1977のマイナーチェンジで型式がB121となり若干のデザイン変更を受け、続く1981年に排出ガス規制適合により型式がB122へ変更となる。

また1985年には海外ブランドを含め、車名がダットサンから日産へ変更された。そして最後のマイナーチェンジとなる1989年、さらなる排出ガス規制への適合と重ねてヘッドライトが角形2灯式に変更された。それでもエンジンはA12型を改良し続けていて、基本構成は1971年の発売時から大きく変わっていないという驚異的なロングセラーだった。

アルミホイールは定番のRSワタナベの8スポーク。

23年間も作り続けられた長寿モデルだから多くの台数が残っているように思えるが、現実は甘くない。1993年12月に発効された自動車NOx法をご存じだろうか。簡単に説明すると特定の地域で古い商用車を継続使用できなくするための規制法で、エンジンがガソリンかディーゼルかなど問わず古くなったトラックやバスの継続車検、移転登録などを禁じた。

このため多くの旧型商用車が姿を消すこととなったのだ。長寿モデルであるサニートラックも昭和56年排出ガス規制に適合していない古い型は事実上乗れないことになったため、減る一方となってしまった。ただ、昭和56年規制に適合してからもサニートラックは生産され続けたため、現在市場に出回っている多くが型式B122以降の規制適合車。

どんなクルマでも年式が新しいほど程度の良い個体が多く残っているものだが、サニートラックにしても同じことで角目2灯式になった最終モデルが数多く流通している。ただ、旧車イベントなどで見かけるサニートラックの多くが丸目2灯の古いタイプに思える。これは顔面を移植してあるからで、大きな変更を受けなかったから簡単に古いルックスへ変身させることが可能なのだ。

広い荷台にアルミのボックスを設置。

ここで紹介するサニートラックも、実は1990年式の最終型で本来なら角目2灯モデル。フロントマスクだけ初期のB120用を移植して旧車らしさを演出しているのだ。オーナーの中村彰利さんは現在53歳で、このサニトラを手に入れたのは2020年のこと。

旧車らしいスタイルがスポーツカーのように見え、トラックであることを感じさせないのが選んだ理由だとか。サニトラに長く乗り続けてきたわけではないが、中村さんは大抵の作業を自分でこなしている。その一例として、見事な室内を見ていただきたい。

ダッシュボード全体をアルカンターラ表皮で覆った。
ズラリと追加メーターが並ぶメーターパネル。

どうしても古いクルマの内装は紫外線などの影響により傷みが進行してしまう。特にダッシュボードが割れてしまう例は多く、直そうにも部品がないことは珍しくない。そこで中村さんはダッシュボード全面をアルカンターラの表皮で覆ってしまった。単に被せたのではなくしっかりと接着されているため、非常にまとまりの良い印象となっている。

またパネルも全面的に刷新されていて純正だと空調スイッチ付近で分割されているところ、1枚のパネルで作り直してある。純正にはない4連メーターを追加するとともに、タコメーターを社外品へ変更してあるのだ。

助手席側に吊り下げ式クーラーを設置。
グローブボックスを開くとナビやETCユニットが現れる。

さらに手の込んでいる部分がグローブボックス。フタまでしっかりアルカンターラ仕上げになっているのは当然としても、フタを開けるとカーナビやETCユニットが収められているのだ。しかもパネルを作って一体感ある仕上がりにしてあり、とてもセンス良くまとまっている。

旧車のようなスタイルを大事にするなら、ナビやETCユニットは見えない場所へ設置したいもの。でも中身は1990年式のモデルなのだから、便利な装備は盛り込みたい。そんな悩ましい葛藤への良い解決策になっているのではないだろうか。高年式のクルマをカスタムするなら、お手本にしたい例といえる。

リクライニングは事実上不可能なのでレカロのフルバケットシートを装着。

サニトラのようなピックアップトラックだと室内スペースが限られているため、シートは事実上リクライニングできない。だったらとばかり、中村さんはレカロのフルバケットシートを装着している。しかも古くからのデザインにこだわらず、最新のエルゴノミクスデザインを採用するRCSを選んでいる。これならスポーツドライビングに適しているだけでなく、長距離ドライブでも疲労は最小限で済むことだろう。

A15型のチューニングエンジンに載せ換えた。
ソレックスキャブレターのファンネルに網目のプレートを挟んでいる。

サニトラには長くA12型エンジンが採用されてきた。つまり、豊富なチューニングメニューが揃っているということであり、多くのサニトラがエンジンチューンを実施している。吸排気系だけだったり排気量を変更するなどチューニングの内容は様々だが、中村さんは元のエンジンが壊れたことを機に思い切ったことを考えた。

知り合いを通じて手に入れたA15型エンジンにスワップしてしまったのだ。サニーに搭載されたA型エンジンのなかで最もスポーティなのがA12で、排気量を1.3リッターに拡大すると高回転域での鋭いレスポンスとパワーが得られる。対してA型最大排気量であるA15をチューニングするとA12のように高回転域までは回らず、低中回転でトルクフルな特性が楽しめる。

スポーツカーというよりGTカー的な味わいになるのだ。そこで中村さんはクーラーを装着してシーンを問わず乗り回せるようにした。板金塗装して鮮やかなホワイトとされたボディにトルクフルなエンジン、なおかつ真夏でも涼しい顔して運転できるクーラー付き。最終型サニトラならではの楽しみ方だろう。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…