母が乗っていたのと同じサニーが欲しかった! 極上のB110サニーを20年以上維持し続ける!【昭和・平成クラシックカーフェスティバル】

2022年に関東で開催される最後の旧車イベントとなった「昭和・平成クラシックカーフェスティバル」。会場には200台前後の国内外の名車たちが展示され大いに目の保養ができたことだろう。今回からは会場の中からピックアップしたクルマを紹介したい。まずは幼少期に母が乗っていたのと同じサニーを手に入れた方のお話だ。
PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
ダットサン・サニー1200GX。

埼玉県北本市にある商業施設「HEY WORLD!!」の屋上駐車場を借り切って開催された「昭和・平成クラシックカーフェスティバル」。イベントの模様は過去の記事にある通りで、多くの参加者が常連であることも特徴。主催者である日本旧軽車会の代表、吉崎 勝さんの人柄によるところだろう、顔見知りの方達が数多く参加され和やかなムードに包まれている。筆者も過去に取材した人が大勢いるため、会場を歩いていると声をかけられることも多い。

この日もそうで、声をかけてくれた人に大村誠市郎さんがいた。大村さんは20数年前からB110サニーに乗り続けている人で、長く乗り続けるうちに今回撮影したセダンだけでなくB110クーペ、B310クーペと台数を増やしていった。それほどサニーが好きな大村さんだが、どうしてサニーを選んだのか聞くのを長年失念していた。お恥ずかしい話だが、今回ようやくお聞きすることができたので紹介したい。

ナンバーは型式であるB110と同じ数字にしてある。

サニーは1966年にブルーバードより小さな大衆車として発売されている。当初は1リッターの4気筒OHVエンジンを搭載していたが、発売直後に1.1リッターの排気量で新発売されたトヨタ・カローラと長きに渡り販売合戦を繰り広げたことで有名。そこで2代目になるB110サニーは排気量を1.2リッターに拡大して1970年にモデルチェンジするが、この世代でもカローラは1.4リッターエンジンを追加して差別化を図る。

そこでサニーもブルーバード用だった1.4リッターOHCのL型エンジンを搭載するエクセレントシリーズを追加して対抗するなど、ラインナップが複雑化していった時代でもある。また小型軽量で高回転までよく回るA型エンジンの特性を活かして、サニーはSUツインキャブを採用するスポーティグレードのGXを追加している。特にクーペGXはツーリングカーレースのTSクラスで無敵の速さを見せつけたもの。実にレーシングカーのA型エンジンは1万rpmまで回る驚異的な性能を誇った。

この時代の国産車によく似合うRSワタナベの8スポークホイール。

TSレースで無敵の存在だったため、B110サニーといえばクーペGXが長らく人気を牽引したもの。ところがセダンGXとなると悲しいものでクーペ用の部品取りにされたりで残存数がとても少ない。だからこの日に見た大村さんのサニーがセダンであることに新鮮な思いを抱いたもの。ではクーペも所有しているのになぜセダンを今も維持し続けているのだろう。

そう思えば、実は大村さんが幼い頃にお母さんが乗っていたのがB110サニー・セダンだったのだとか。思い入れのあるクルマだから手放すことなど考えもしなかったことだろう。さらにこのセダンはとても程度と素性が良い個体だった。大村さんが見つけた時は新車からの1オーナーもので、長年車庫保管されてきた。

そのため致命的なサビや腐りがなく、しかも20数年前は安価に買えた。そこで購入と同時に日産車のオーソリティであるサファリモータースで全塗装することとした。サニーGXに多いホワイトへ塗り替えボディサイドにストライプも加えてスポーティな装いとしたのだ。

1.2リッター4気筒OHVのA12型エンジンは1.3リッターへ拡大している。
セッティングのしやすさとパワー感からウエーバーキャブレターを組み合わせた。

ボディを全塗装したが、その後もサニーへ手を加えることが続く。A12型エンジン定番のチューニングを施すことになるのだ。今では社外メーカーから鍛造ピストンなども入手可能だが、日産のエンジンはL型をはじめ純正流用チューンができたことが人気の理由。A型でいえば当初の1リッターに始まり1.2、1.3、1.4、1.5リッターもの仕様が存在する。

それゆえ純正ピストンやコンロッドの組み合わせなどにより排気量アップが比較的簡単にできてしまうのだ。ただ、1.5リッターになるA15型だと高回転まで回らない仕様になるため、人気があるのは1.3リッター仕様。前述したTSマシンでも1.3リッターの排気量で1万rpmという高回転を実現していた。

このサニーも1.3リッター仕様としつつハイリフトカムシャフトや軽量フライホイールを組み込み、抜群のレスポンスとパワーを手に入れている。また純正のSUに代えてウエーバー40DCOEキャブを2連装している。これもパワーを生み出す大事な要素で、定番のソレックスよりセッティング面で有利かつ、加速ポンプの効果が大きい。

ステアリングとダッシュカバーは同じ赤いステッチ入りを選んだ。

チューニングの効果もあり、とても楽しく運転できるようになったサニー。小さなボディとよく回るA型エンジンの魅力は他車で味わうことができない爽快さがある。母が乗っていた思い出のクルマであることも大事なポイントだが、やはり乗って楽しいと思えるクルマだからこそ、大村さんも20年以上乗り続けることができたに違いない。また、このセダンに続いてクーペGX5やB310サニークーペまで増車しているのだから、もはやれっきとしたサニーマニアといえるだろう。

正面の3連メーターは左のタコメーターだけオートゲージ製に変更した。
チューニングエンジンなので3連メーターを追加してある。
コンソールのアナログ時計は上にデジタル時計を貼り付けバッテリーチェッカーも常備する。

チューニングした旧車といえば、追加メーターや小径ステアリングホイールでインテリアを彩っていることが多い。大村さんのサニーセダンも同様の手法でインテリアを仕上げてある。よく回るエンジンだから正確な回転数を表示してくれるタコメーターは必須だし、水温や油温、油圧計といった計器はトラブルを予防するうえでも非常に有効。

またサニーGXといえばセンターコンソールに大型の時計を装備していたことが特徴だが、大村さんは純正時計の上にデジタル時計を貼り付けている。正確さを求める性格がそうさせたのだろうか。また日頃からよく乗るわけでもないのでバッテリーの状態をモニターできるバッテリーチェッカーを装備している。

シートは純正のままだが、アームレストを追加してある。

旧車のカスタムとしてバケットシートに変更することも定番メニュー。ところがこのセダンには純正のシートが残されている。コーナリングを楽しむなら別に所有しているクーペが適しているということで、クーペにはバケットシートを装着した。だから普段使いにもできるセダンにはあえて純正シートを残しているのだ。

しかも写真を見ればお分かりのように、破れや切れがない程度の良さを保っている。これだけキレイなシートはそうそうあるものではなく、せっかくならこの状態で楽しみたいと思う理由にもなっていることだろう。ライトウエイトスポーツカーのようにも楽しめるB110サニーだが、セダンはセダンらしい乗り方で付き合っている大村さんなのだ。

著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…