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スープラやGT-Rなど、魅力的なスポーツカーが席巻していた、あの頃
いまやネオクラシックカーど真ん中、1989年(平成元年)に初代ユーノスロードスター(NA6CE)は衝撃的なデビューを飾った。当時の日本はバブルの真っ只中、憧れのハイパワースポーツカーは、トヨタソアラ(Z20)やスープラ(A70)が絶好調で、ライバルの日産が自主規制枠いっぱいの最高出力280馬力を誇るスカイラインGT-R(R32)とフェアレディZ(Z32)を発売し逆襲を開始。
手に届くスペシャリティカーでは前年に発売された日産シルビア(S13)とホンダ・プレリュード(BA5)が大人気でライバル関係にあった。マツダは5チャンネル戦略を推し進め、新しく展開するユーノス店から発売する看板スポーツカーとして「ユーノスロードスター(NA6CE)」を発表。
車検証に刻まれる車名まで「ユーノス」として、拘ったブランド展開を行い、新しいマツダをイメージさせた。時代を先取りした、丸く、キュートでシンプルなデザインに時代の流れと共に消えて無くなりかけていたライトウェイトスポーツカーの定義「FR」「ライトウェイト」「オープン」という魅力的な内容で登場。
古き良き時代のそれに憧れていた年配の層から、初めて見る「全く新しいスポーツカー」として魅力を感じた若者まで、潜在的に世界中が持っていた「ライトウェイトスポーツカー」への思いや憧れを見事に掘り起こし、老若男女問わず、多くのスポーツカーファンの心を捉え、発売当時価格170万円からと手頃だったこともあり、発表と同時に爆発的な人気となった。
「ユーノスロードスター(NA)の魅力」とは何だったのか
やはりまず、デザインが魅力的だった。それまで見たこともないほど四隅が丸く絞り込まれたデザイン、特徴的な楕円のフロントウインカーレンズと小さなラジエター開口部の表情は控え目で、親しみやすく、愛着の湧くデザインだった。個性がなくなりがちだったリトラクタブルヘッドライトを採用しながらも、それを逆手に取り、目を閉じたこの表情が醸し出す雰囲気が様々な人々の心を惹きつけた。
屋根を開ければ、ソフトトップは綺麗に収納され、サイドビューは薄いトランクの高さと同一となるロードスタースタイルで「オープン専用設計」であることを実感すると共にその美しさに驚いた。屋根を閉めたデザインも格好良く、純正オプションとして用意されたハードトップは、マツダ往年の名車コスモスポーツのルーフを彷彿とさせるデザイン。これを装着したスタイルも格好良く、1台で3種類のスタイリングが楽しめる。リヤビューもグッと丸く絞り込まれ、特徴的な楕円のテールレンズがフロント、サイドに負けず劣らず、実に魅力的だった。
1本の指で開ける特徴的なドアノブ、車内に乗り込むと着座位置が低く、センターコンソールが高いため、スポーツカーらしい適度なタイト感があった。細身のステアリングを握り、当時としては極端にストロークが短く、カチッとしたシフトフィールの短いシフトノブに驚いた。インパネはシンプルで丸いエアコンの吹き出し口を囲うようなセンターパネルのデザインも魅力的だった。
「これ運転してみたい!」クルマ好きなら、実車を見て座っただけで誰もがそう思ったに違いない。
最近、ユーノスロードスター1600(NA6CE)平成2年(1990年)式のクラシックレッド、無事故フルノーマルのNAを知人から譲り受け、乗り始めた。当時、筆者が20歳の頃に所有していたのと全く同じ仕様だ。久しぶりに乗ってみると一瞬で30年前にタイムスリップして「あの頃の記憶」が蘇ってきた。今乗っても「やっぱりNAいいな!」と改めてのその走りの楽しさに感動した。