新型スバル・クロストレックは「いいクルマ感」アップ! 一度味わったらやみつきになる人、続出になるのではないか

SUBARU クロストレック Limited 車両本体価格:332万2000円(メーカーオプション39万0500円)計371万2500円
XV改めクロストレックとなったスバル期待のニューカマーの実力をいよいよ公道で試せる機会が巡ってきた。乗り味はどうか? e-BOXERはどう進化したか? じっくり味わってみよう。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:SUBARU

XVあらため「クロストレック」どんなクルマ?

全長×全幅×全高:4480mm×1800mm×1580mm ホイールベース:2670mm 車重:1620kg

SUBARU XV改めクロストレックになったスバルの新しいSUVは、先行予約を受け付けて5ヵ月が経過した時点で、1万2000台弱の注文があったという。出足は好調といっていいだろう。3月中旬になって全国の販売店に試乗車が行き渡ると注文が急増。直近1ヵ月の注文は3000台になるという。

ボディカラーは訴求色かつ新色のオフショアブルー・メタリック(深みのあるグレーがかった青)が一番人気で36.9%を占める。以下、クリスタルホワイト・パール22.5%、マグネタイトグレー・メタリック11.3%、クリスタルブラック・シリカ7.3%と続く。

XVはAWDの駆動方式のみだったが、クロストレックでFWDを追加。先行予約段階では72%がAWD(常時全輪駆動)を注文し、FWDは28%だった。グレードは上級のLimitedとベースのTouringの設定で、上級のTouringが75%を占めている。売れ線はリミテッドのAWD(328万9000円、税込)で、ボディカラーはオフショアブルー・メタリックということになる。

パワーユニットは1種類。グレードを問わず、そして駆動方式を問わず、e-BOXERと呼ぶ2.0L水平対向4気筒自然吸気エンジン(FB20型)とモーターの組み合わせだ。これに、リニアトロニックと呼ぶチェーン式CVT(無段変速機)を組み合わせる。エンジンの最高出力は145ps(107kW)/6000rpm、最大トルクは188Nm/4000rpm。モーターの最高出力は10kW、最大トルクは65Nmだ。

e-BOXERの恩恵はEV走行で感じる

公道で試乗したのは、まさに売れ線のLimitedかつAWDで、ボディカラーは人気色のオフショアブルー・メタリックだった。深みのあるグレーがかった青は近年の流行り色で、個人的にも好みである。クロストレックには無彩色から鮮やかな色まで9種類の設定があるが、自分で選ぶとしてもオフショアブルー・メタリックにしただろう。割り当てられた試乗車はまさに「欲しい仕様」で、ドライブに向けて気分が上がった。

以前、クローズドのコースでプロトタイプに対面した際はそれほど印象に残らなかったのだが、改めて対面してみると、フロントグリル中央の六連星バッジからヘッドライトに向かって伸びるバーが際立って見えた。反り上がった飛行機の主翼を連想させる。「とくにイメージしていない」とデザイナー氏は語ったが、航空機メーカーに出自を持つブランドのDNAを感じさせるポイントで、好印象だった。

本革シートは11万円のオプション

上級グレードのLimitedは運転席がパワーシートになる(助手席もパワーシートだ)。ステアリングホイールの右下にあるスタート/ストップボタンを押してシステムを起動。シフトレバーはコンベンショナルなレバータイプで、前後に動かしてドライブポジションを切り換える。ステアリングコラムの下にチルト&テレスコピック機構のレバーがあり、初めて乗り込んでも操作に戸惑うことはない。

パーキングブレーキは電動式で、ブレーキをかけたり、解除したりするスイッチはシフトレバーの後方に配置されている。これも、あるべき場所にあるので、初見でも戸惑うことはない。使う/使わないに好みはあるだろうが、信号待ちなどで停車中にクルマが自動的にブレーキを保持し、ドライバーはブレーキペダルから足を離しておけるオートビークルホールド(AVH)のスイッチはあるべき場所にはないので注意が必要。

電動パーキングブレーキ(EPB)とセットで配置するケースが多いが、レヴォーグを筆頭に最新世代のスバル車はタッチパネルで操作するセンターインフォメーションディスプレイにAVHのボタンがあり、「最近のスバル車はディスプレイで操作する」ことを知っていないと戸惑う。オーナーになってしまえば問題ないのだろうが、改善要望が少なからずあったとみえ(?)、クロストレックではAVHのボタンがホーム画面に表示されるようになった(以前はもっと階層が深かった)。一旦システムをオフにし、再起動してもAVHオン状態は維持されるので、慣れてしまえば面倒はなさそうだ。

センターディスプレイは、最新のスバル流である縦長タイプ。
エンジン 形式:水平対向4気筒DOHC+モーター 型式:FB20 排気量:1995cc ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm 圧縮比:12.5 最高出力:145ps(107kW)/6000pm 最大トルク:188Nm/4000rpm 燃料供給:DI 燃料:レギュラー 燃料タンク:48ℓ

e-BOXERはエンジン駆動を主体にしたハイブリッドシステムだが、発進時にモーターのみによるEV走行をするため、電動技術の恩恵を実感しやすい。エンジン音が目立ちやすい低車速時にエンジンが停止しているため静かで、余計に恩恵を感じる。車速が上昇するとエンジンが始動してエンジン走行に切り替わるが、ショックは皆無。エンジン回転計を意識していると、コースティング中もアクセルオフした瞬間にエンジンを停止させるが、やはりショックは皆無なので、「気づいたらエンジンが停止している」というのが実感だ。燃費に貢献しているのは間違いなく、それが視覚的に確認できるのはうれしい。

じゃあ実際の燃費はどうだったかというと、残念ながら今回の試乗ではしっかりと確認できなかった。往路と復路でクルマを乗り換えたこともあるし、往路は標高379mの鹿野山(千葉県)に向かって頂上付近でFWDに乗り換え(この段階で37.0km走って平均燃費は12.0km/L)、帰路はずっと下りだったからだ(36.2km走って平均燃費は18.1km/L)。WLTCモード燃費はAWDが15.8km/L、FWDは16.4km/Lである。

燃費は「頑張った」と技術者は説明した。エンジンやトランスミッションの効率を上げ、損失を減らしたという話が出てくるのかと思ったが(もちろん、取り組んだのだろうが)、頑張ったのは消費電力だという。なんと。運転支援システムのアイサイトを筆頭に、「ぶつからない」をサポートする技術を充実させるため、センサーの搭載は増え、それにともなって情報処理能力は増える。となると消費電力は増え、発電するために燃料の消費量は増える道理だ。そこを頑張って抑えたというのである。安全を担保するためなので、多少の燃料消費は大目に見たいという気持ちになった。

柔らかいのに抑えが利いている乗り味

約2時間の試乗で最も印象に残ったのは、「いいクルマ感が増している」ことだった。先代にあたるXVの乗り味も悪くなかった。新型のクロストレックは輪を掛けて良くなっている印象だ。乗り味は柔らかいのだが、減衰がしっかりしているので抑えが利いている。無駄な揺れがないのですっきりしている。

聞けば、サスペンション部品のひとつであるコイルスプリングの定数は落としているという。大ざっぱにいえば柔らかくしたということだ。乗り心地のためである。じゃあ動きはモサッとしているかというとそんなことはなく、狙いどおりに、かつ素直に向きを変えてくれるのでストレスがないし、気持ちがいい。旋回時の内輪の接地を意識して開発したそうで、ボディは剛性を上げ、振動や音の減衰を上げた。それらが、ゆったりしているのに、すっきりしている絶妙な「味」につながっている。クロストレックが提供するスバルの最新の味、一度味わったらやみつきになる人、続出するのではないか。

What3word(ワットスリーワーズ)って?

地球上を3m四方の正方形に区切り、各国語で3つの単語で割り当てている。ピンポイントで場所を設定できるわけだ。

帰路は、クロストレックで初採用したwhat3words(ワットスリーワーズ)を使った目的地設定を試した。what3wordsは世界を3m四方の正方形に区切り、3つの単語を割り当てることで、より詳細な目的地設定が可能になるシステムである。通常のナビ設定では施設の代表地点が目的地に設定されるが、what3wordsなら複数あるゲートの特定のゲートを指定できるし、広い駐車場の「この位置」と指定できる。待ち合わせにも便利だ。

3つの単語はタッチ画面でテキスト入力するだけでなく、音声入力も可能。スマホのアプリから目的地の3つのワードを検索し、入力すればいい。「いま乗っている自分のクルマにも欲しい」と感じた。

FWDの設定が新型クロストレックの魅力を引き上げているのは事実だが、機能はAWDのほうが明らかに上で、乗り比べればドライの舗装路でも違いは歴然としている。AWDのほうが直進時も旋回時も安定しており、走りの信頼感は高い。ぶれが少ないので安心感につながるし、長時間のドライブでは疲労度にも影響を与えるはず。クロストレックとの付き合いのなかでこうしたメリットを捨ててもいいのであればFWDを選択する、というスタンスで臨みたい。

SUBARU クロストレック Limited
全長×全幅×全高:4480mm×1800mm×1580mm
ホイールベース:2670mm
車重:1620kg
サスペンション:Fストラット式/Rダブルウィッシュボーン式
駆動方式:4WD
エンジン
形式:水平対向4気筒DOHC+モーター
型式:FB20
排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm
圧縮比:12.5
最高出力:145ps(107kW)/6000pm
最大トルク:188Nm/4000rpm
燃料供給:DI
燃料:レギュラー
燃料タンク:48ℓ
モーター:MA1型交流同期モーター
最高出力:13.6ps(10kW)
最大トルク:65Nm
トランスミッション:リニアトロニックCVT
燃費:WLTCモード 15.8m/ℓ
 市街地モード12.9km/ℓ
 郊外モード:16.0km/ℓ
 高速道路:17.3km/ℓ
車両本体価格:332万2000円(メーカーオプション39万0500円)計371万2500円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…