ついにCX-60が納車!ディーゼル推しのボクが考える煤(スス)問題について【工藤貴宏のCX-60オーナーレポート:Vol.3】

自動車ライターの工藤貴宏氏が愛車をCX-5からCX-60へ買い替えるというのでスタートした連載企画。ついに第3回目でCX-60が納車された。以前の愛車であるCX-5とのボディサイズの違いに戸惑いながらもオーナーレポートがスタートするかと思いきや、その前にディーゼル推しの工藤氏が「マツダのディーゼルの煤(スス)問題」に触れておきたいという…。その真意とは?
TEXT&PHOTO:工藤貴宏(KUDO Takahiro) PHOTO:工藤貴宏(KUDO Takahiro)/MAZDA

納車されたCX-60のレポートの前に、ひとつお話したいことが…。

こんにちは、ライター工藤貴宏です。
ついに自身で購入したCX-60が納車されました。車体番号はKH3P(ハイブリッドではないディーゼル)の101400番台。わかっていたことですが、納車されていつもの駐車場に収めてみるとやっぱり車体が大きく感じますね。実際に使ってその感覚がどう変化していくのかは、おいおいレポートしていこうと思います。

もうひとつ「やっぱりそうなるよね」と思ったのはガソリンスタンドのコイン洗車。サイズ的には問題ないのに、車体左右の路面に置かれているガイドバーがギリギリでタイヤを接触させないように妙に神経を使うのです。CX-5に乗っていた時はまったく気にならなかったんですけどね。

というわけでCX-60についてレポート……の前に、今回は、どうしても書いておくべき「あの事」について触れておきましょう。

それは、「マツダのディーゼルの煤(スス)問題」です。
CX-5のディーゼル(2018年2月の改良を受けたKF系)を5年弱所有した自身の経験からお伝えしたいと思います。これは自分自身の話であり、すべての車両が当てはまるわけではないことを先に断っておきましょう。

以前の愛車CX-5と比べると車体が大きく感じる。ガソリンスタンドのコイン洗車機はけっこうギリギリです。

「マツダのディーゼルの煤問題」が発生しやすい傾向とは?

もしかすると「マツダのディーゼルの煤問題」をご存じないかたもいらっしゃるかもしれませんね。簡単に説明しておくと「マツダのディーゼル車で煤が発生し、エンジンが不調になるケースがある」というもの。過去にはその対策のためのリコールも行われています。
ネットのコメント欄などを見ると「煤でトラブルになるのが嫌だからマツダ車は買わない」とか「CX-5を買うけれど乗って魅力的なのはディーゼル。でも煤がたまるからガソリン車を選ぶ」なんていう書き込みもあったりして。まあ、大切な愛車選びなので気持ちはわかります。

たしかに、ディーゼルエンジン搭載車において煤による不調が起こっているのは事実でしょう。煤が堆積した写真を公開しているウェブサイトもあるし、実際にマツダがその対策のためにリコールをおこなっているわけですから。

ボクの愛車だったCX-5では煤問題は発生しなかった。ディーゼルは走行距離が増すほど煤が蓄積しやすいので、手放す際の走行距離が3万キロ弱と、あまり走らなかったことも有利に働いたのかもしれない。

しかしいっぽうで、必ずしもすべてのマツダのディーゼル車にトラブルが起きているわけでもありません。これもまた事実なのです。「起きている」も「愛車には起きない」も、どちらも嘘ではないのです。

実際のところ、筆者が所有していたCX-5はまったくトラブルを起こしませんでした。マツダによると「ディーゼルエンジンにおいて、低車速で加減速する走行を繰り返すと、燃焼時に発生する煤の量が増え、インジェクタ噴孔部に堆積し、燃料の噴霧状態が悪化することで、さらに煤の量が増え、排気側バルブガイド周辺に堆積することがあります」とのこと(平成30年に1.5Lディーゼルに関するリコール届け出時の記述より)。

つまり低車速での走行を繰り返すのは、煤の付着に対してはよくないことといってよさそう。しかし、筆者の愛車だったCX-5は日常的に妻が活用していたこともあり、移動のほとんどは街中移動で短距離かつ低車速。わずか数キロしか走らない“チョイ乗り”がほとんどで、ディーゼル車の使い方としては悪条件だったのは間違いありません。いや何を隠そう「悪い」と言われる条件で使ってみて実際どうなるのかという自動車ライターとしての興味からあえてディーゼルを選んだと言っても過言ではないでしょう。ある意味人柱。でも、トラブルは起きませんでした。

ディーゼルエンジンの構造上どうしても煤は発生してしまう。煤はフィルターでキャッチし燃焼処理するが、10分以内の“チョイ乗り”を繰り返すと煤の燃焼が間に合わなくなってしまう。これには「1週間に一度は30分以上運転する」という対応が有効。たまにはエンジンを気持ちよく回すことも重要なようだ。

もちろん、「愛車に起きなかったからほかの車両にも絶対にトラブルが起きない」なんて断言できることではありません。でも、周囲のマツダ車オーナーやネット上の情報を見ても「実際に煤の堆積で不調になった」という声はエンジン内の清掃するショップの記事以外は多く見かけないので、発生する確率はそう高いものではないといえそうです。

ちなみに、筆者の愛車だったCX-5は手放す際の走行距離が3万キロ弱でした。それほど距離が伸びていないのです。煤は累計走行距離が増すほど蓄積しやすいので、あまり走らなかったことは有利に働いたでしょう。
でも、言い方を変えれば「短距離走行を繰り返す人ほど累計走行距離は伸びない」のです。だから、確率論とすれば短距離走行を繰り返すからといって所有している間に煤問題に直面しやすいとは限らないと言っていいのでは。やはり、ネット上のオーナーの声を見ると走行距離が伸びているクルマに煤蓄積の症状が出やすい傾向にあるようです。
また、マツダもディーゼルエンジンの煤対策に関するノウハウが蓄積されたことで、新しいエンジンになればなるほど煤対策も進んでいます。

総合的に考えると… 煤問題があってもボクはディーゼル推し!

愛車となるCX-60は、もちろん3.3L直6ディーゼルを選んだ。

そんなことを考えると、煤を恐れてディーゼル車を敬遠するのは実にもったいない気がするんですよね。特に、新車で買って走行距離が伸びるペースも平均的かつ5年程度で手放すのであれば、煤を心配することなく力強い走りや優れた燃費に共感したなら積極的にディーゼル車を選んでいいのではないかと思っています。

購入してから5年間は新車特別保証もあるし、その後も延長保証に加入すれば、万が一ひどい状態になっても販売店で対応してもらえる可能性が高いわけですから。
CX-5ディーゼルを所有し、“ディーゼル車にとって最悪なチョイノリの繰り返し”をし、トラブルが起きずに次もディーゼルを選んだボクがいうのだから、そんなディーゼル推しも説得力あります……よね?

ただ、初代CX-5など初期のディーゼルエンジン車と2代目CX-5の初期モデルで10万キロを超えるような過走行の個体を中古で購入するのは、やめたほうがいいかもしれません。それは筆者だって選ばないでしょう。
ただ、2代目CX-5であれば2018年2月以降のモデルであれば、エンジンに大幅改良が入っているのでそれほど心配する必要はないと思います。

次回はいよいよ、納車されたCX-60のお話をお届けします!お楽しみに!

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著者プロフィール

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工藤 貴宏

自動車ライターとして生計を立てて暮らしている、単なるクルマ好き。

大学在学中の自動車雑誌編集部ア…