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クラウンクロスオーバーとスポーツ、どう違う?
クラウン(スポーツ)に関して4月12日に追加発表された情報は、ごくわずかだ。しかし重要な情報ばかりで、全長×全幅×全高は4710×1880×1560mm。定員は5名で、パワートレーンはHEV(ハイブリッド車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)の2種類。発売予定時期はHEVが2023年秋頃、PHEVは2023年冬頃と発表されている。
「クラウン(スポーツ)プロトタイプ取材会」では、より詳細な内容が明らかになった。クロスオーバーとの対比では、全長が220mm短く、ホイールベースは80mm短い2770mmだ。全高は20mmプラスの1560mm、全幅は40mmプラスの1880mmである。
タイヤは「ひとまわり大径化した」との説明だ。クロスオーバーの225/45R21(19インチサイズの設定もある)に対し、スポーツは235/45R21サイズを履く。幅が10mmワイドになったぶんハイト(サイドウォールの厚み)が増し、そのぶん外形も大きくなっているということだろう。
ホイールベースの短縮で気になるのは後席の居住性だが、パッケージング図を見ると、クロスオーバーでは後席乗員に対して大きく後方に離れていたタイヤが、スポーツでは近づいたことがわかる。合わせて、クロスオーバーに対して乗員をややアップライトに着座させる格好。クロスオーバーと遜色ない居住空間が確保されている印象だ。
クロスオーバーとの対比では、ホイールベースの短縮に加えて前後オーバーハングを大きく短縮。「スポーツ」を名乗るにふさわしいエクステリアの凝縮感を出すとともに、前後重量配分を限りなく50:50に近づける効果も狙っている。アジャイル(意のままにキビキビ動く)なハンドリングを狙うためだ。クラウンシリーズの開発責任者を務める皿田明弘氏は、「クロスオーバーとの比較でいうと、よりヨーの出しやすさ、曲がりやすさにつながっています」と説明する。
クラウン(スポーツ)は「スポーツ」のネーミングが示すとおり走りを意識して開発が進められたが、意識したのはそれだけではない。「エモーショナルで感性に響く」ことも意識した。その意識が現れているのがエクステリアだ。チーフデザイナーの宮崎満則氏は、「単純にカッコ良くて美しいSUVを狙った」と話す。「街なかでこのクルマを見たときに、二度見したくなるような存在感を狙った」と。
「一番のウリはリヤスリークォーター(斜め後方)から見たキャビンとアンダー(ドアから下)の構えです。ボディサイドはプレスできる限界の立体感を表現しています」
リヤドアの途中から大きく張り出す(ように見える)グラマラスなヒップがクラウン(スポーツ)の最大の見どころだ。追加情報が発表された際に公開された画像を事前に目にしてはいたが、実物の迫力は段違いだ。絵画や彫刻などの美術品にしても、建築物にしても、印刷物や画面を見て感じる印象と、実物から受ける印象は大きく違ったという経験は誰にでもあるだろう。クラウン(スポーツ)のグラマラスなヒップもそのたぐい。二度見どころか、目が釘付けになること請け合いだ。
フロントはプリウスとも共通するハンマーヘッドをより立体的にあしらい、「クラウンとしての新しい顔」を構築した。ハンマーヘッドのグラフィックはデイタイムランニングライトとターンライト兼用。単眼のヘッドライトをバンパーに埋め込んでいる。
クロスオーバーは横一文字のリヤライトが特徴だが、スポーツは独立4眼のリヤコンビネーションランプとした。クラウンのスポーツ系グレードとして地位を確立した「アスリート」の特徴だった丸型4眼のリヤコンビランプのイメージを受け継いだもので、4眼を受け継いだうえでよりシャープに表現している。
インテリアについては、クラウンシリーズに共通するテーマとして「乗りやすさ」「運転しやすさ」「快適性」を意識したという。そのうえでスポーツでは、「ワクワクするような、今までにない遊び心」を表現した。それがアシンメトリー(左右非対称)な配色だ。助手席側は鮮やかな赤、運転席側を渋いブラックに配色したトリムもラインアップする。実に大胆な取り組みだ。
プロトタイプの走りは?
富士スピードウェイのショートサーキットに用意されていた試乗車(プロトタイプ)はPHEVだった。エンジンをはじめハイブリッドシステムの詳細については明らかにされていない。ただし、E-Four(電気式4輪駆動方式)であることは明かされたので、前輪は横置きに搭載するハイブリッドシステム(エンジン+モーター)で駆動、リヤはモーターで駆動するシステムと考えていいだろう。「スポーツ」を名乗るからには、どちらも相応のパワーとトルクを発生するはずだ。
当然のことながらEV走行換算距離も明らかにされていないが、プリウスやハリアーのPHEVと同様、EV走行をメインに考えた使い方を想定しているはずなので、大容量のバッテリーを搭載しているはず。クロスオーバーRSの車重が1900~1920kg、ハリアーPHEVが1950kgであることを考えると、クラウン(スポーツ)の車重は2t前後だろう。
重量級のボディを持つにもかかわらず、クラウン(スポーツ)はエンジンの力を借りないモーター単独のEV走行であっても、「スポーツ」を名乗るにふさわしい力強い加速を披露する。エンジンの力とモーターの力をミックスして走るHVモードの力強さは圧巻だ。
クラウン(スポーツ)の走りが印象的なのは、決して力任せではないことだ。しなやかで、引き締まっている。重たい物を支えようとすると、ばねは硬くしたくなり、結果としてヒョコヒョコと落ち着きのない動きが出がちだ。サーキットという限定された環境での確認にはなるが、「硬い」とか「落ち着きがない」と表現したくなる動きとは無縁だった。
手応えが強め(クロスオーバー比で意図的にそうしているそう)のステアリングを切り込むと、クラウン(スポーツ)は狙いどおりに気持ち良く向きを変える。そのとき、車体がグラリと傾いて(ロールして)ドライバーを不安におとしいれるようなことはない。ジワッと傾き、ほどよいところで落ち着く。素早く左右に切り返しても、リズミカルにクルマの動きは追従してくる。だから気持ちがいい。ステアリングにしても、アクセルにしても、ブレーキにしても、「打てば響く」反応が返ってくる。
クラウン(スポーツ)は「新しい形のスポーツSUV」にしようと開発を進めてきたと皿田氏は説明した。デザインに関しても、走りに関しても、従来のスポーツの概念を覆す新しさに満ちている。実物は二度見どころかガン見必至だし、硬さとは無縁でキビキビ動く、新しい走りが体験できる。