トナーレにジュリア、ザガート……オートモビル・カウンシルで新旧アルファロメオを堪能! オールド・アルファは手放したら二度と手に入れられない!

1967年型ジュリア・スプリントGTV
トナーレにジュリア、ザガート……オートモビル・カウンシルで新旧アルファロメオを堪能! オールド・アルファは手放したら二度と手に入れられない!【旧車アルファロメオ・オーナーの現実 vol.2】
「オートモビル・カウンシル」の主役といえば、やはり国内外の希少な旧車たち。今回は段付きクーペを所有する熱狂的なアルフィスタにして、無一文から身を起こして、独力で今の貧乏ライターになった筆者が、会場で出会ったクラシック・アルファロメオをチェックする! 筆者も所有し、かつては「旧車入門用にも最適」と謳われた「ジュリア」シリーズの現在の中古車相場についても併せて語りたい。
PHOTO&REPORT:山崎龍

2023年4月14(金)~16日(日)にかけて千葉県の幕張メッセ・ホール9/10を会場に『オートモビル・カウンシル2023』が開催されたのはご存知の通り。
このイベントはメーカーやインポーターによる最新モデルの展示もあるが、主役はショップ自慢のヘリテージカー(旧車)だ。今回も全国から日頃なかなか目にする機会が少ないスペシャルマシンから、ノスタルジアに駆られるヤングタイマーまで国内外のさまざまなクルマが集まった。

『オートモビル・カウンシル2023』の会場の様子。

アルフィスタも大満足! な展示車両たち

さて、以前MotorFan.jpの記事でも紹介した通り、筆者は1967年型アルファロメオ1300GTジュニアを所有するアルフィスタ(アルファファン)だ。
1995年に新車で155ツインスパーク(最後のアルファ 純血ユニットの8V)を購入して以来、四半世紀の間に145ボクサー(145の水平対向エンジン搭載グレード)、SZ (ES30)、1750GTV(フラットノーズのジュリアクーペ)を所有してきた。自宅が複数所有可能な環境にあるので、他のメイクスも所有してきたが、アルファだけは途切れることなく乗り続けてきた。

1967年型アルファロメオ”段付き”ジュリアに装着できる新品タイヤはあるのか!? 選んだタイヤと気になるお値段は……

【旧車アルファロメオ・オーナーの現実 vol.1】 アシに使っているジャガーSタイプの記事が好評とのことなので、趣味車として筆者が8年ほど所有している1967年型アルファロメオ1300GTジュニアについて書いてみたい。ラインオフから56年が経過した旧車ということでコンディションは年式相応。内外装、メカともに痛みはあるが、とりあえず動かす分には支障がないレベルにはある。本来ならばフルレストして一気に新車に近い状態に戻したいところだが、万年金欠病の筆者にそんな余裕があるはずもなく、対処療法で悪くなったところを修理している状況だ。今回は迫り来る車検に備え、購入時から履かせっぱなしで息絶えたタイヤ交換についてリポートする。

そんな筆者なだけに会場を訪れると、どうしてもアルファに目が行ってしまう。そこでひとまずざっと会場を一周してから、あらためて出展車両のアルファを細かく見て行くことにした。

アルファロメオ155ツインスパーク8V
アルファロメオSZ(ES30)

やはりクロスオーバーSUVとハイブリッド車は悪い文明!! 粉砕する!!

(編集部注:個人の感想です)

まずはステランティスのニューカーからだ。
ブースにはプジョー308GT Blue HDiの隣に、導入されて間もない「トナーレ」が展示されていた。サイズは思いのほか小さく、SUVと言ってもタッパは思ったよりも高くない。フェイスは昔乗っていたSZを彷彿とさせるもの。運転席に乗り込むとアルファらしく適度なタイト感があって悪くはない。

日本導入間もないアルファロメオ・トナーレ。スタイリングは美しく、走りも良いのだろう。だが、「ジュリエッタ」の後継がクロスオーバーSUVで良いのかという疑問はどうしても残る。しかも筆者が嫌いなハイブリッド車だ。今や正統派アルファのセダンやクーペ、ハッチバック、スパイダーは絶滅寸前! 北極の白熊やアマゾンの熱帯雨林以上に存続の危機に晒されているのだ。「これで良いのか!」と世に問いたい。白熊が絶滅しても筆者は困らないが、アルファロメオがSUVメーカーになるのは非常に困る(主に私が)。ちなみに筆者はアンチ・環境派のエミッション大好き人間である。

ただし、筆者はSUVを必要とする生活をしていないし、マイルドハイブリッドとは言え、ハイブリッド車は好みではないので、自分の愛車にする気にはなれない。時代の流れとは言え、やはりアルファには純ガソリンユニットが相応しいのだ!

2012年にデビューしたこのジュリエッタは2021年12月に生産終了となった。

それにSUVがジュリエッタの後継というのも納得しかねる。もう時効だろうから言ってしまうが、ずいぶん前に先代のFCA広報部長から「オフレコですけどジュリエッタの後継車はFRで開発が進んでいますよ。楽しみにしてください」という話を聞いたことがあった。
その後、続報はなくステランティスも「トナーレがジュリエッタの後継」とアナウンスしているところを見ると、その計画はキャンセルされてしまったのだろう。おそらく、トナーレは運転すれば良いクルマなのだろう。良いクルマなのだろうが……アルファが主力製品にクロスオーバーSUVやハイブリッド車を作らざるを得なくなった世相というものが、なんとも憎く、腹立たしくて仕方がない。どこの誰が悪いのか、ここで追求することは敢えてしないが、「こんな世界、滅んでしまえ!」と本気で世を呪いたくなる。

走る世界遺産! アルファロメオ1900SSザガートと対面し、喜びに打ち震える!!

気を取り直して次に向かったのが、アジア初の会員制ドライビングコースのTHE MAGARIGAWA CLUBが展示したアルファロメオ1900SSザガートだ。これは大変な希少車で、1954~56年にかけてわずか39台がカロッツェリア・ザガートによって製作されたビスポーククーペだ。

アルファロメオ1900SSザガートを出展したTHE MAGARIGAWA CLUBは、都心から1時間の距離にサーキットを備えた複合リゾート施設のようだ。なお、利用は会員限定。正会員券は1口3600万円だとか。しかも、今まで売り出した会員券は即完売。エンスー世界でも格差社会を感じる今日この頃。

ベースとなったのはアルファ初の量産車である1900から派生した1900C (Cはイタリア語のCorto[短い]の意味でホイールベースを130mm短縮して2500mmとしたクーペモデル)で、レース参戦を前提にアルミボディが載せられた。心臓部はウェバーキャブレター付き2.0L直列4気筒DOHCエンジンで最高出力は115bhpを発揮する。エアロダイナミズムと軽さを武器にミッレ・ミリアを含む1950年代のモータースポーツで大いに活躍した。

とは言え、豊かな人がガンガン稼いでくれないとアルファロメオ1900SSザガートのような素晴らしいクルマは国外へ流出してしまうだろう。セレブリティの皆さんはぜひ名車をコレクションして、このようなイベントで披露し、日本のクルマ文化をより豊かなものにしてほしい。

筆者は1900SSザガートを見るのはこれが初めて。なだらかな傾斜がつけられたフロントスクリーンとボンネットの上にあるふたつのエアインテーク、そしてダブルバブルボディの組み合わせが、戦うために生まれたクルマであることを雄弁に物語っている。
だが、丸みを帯びた流麗なスタイリングはレースカーとは思えないほどエレガントで美しい。こうした歴史的に価値ある希少な名車を間近に見て感動できることも、オートモビル・カウンシルならではのことだ。

旧車イベントの花形・ジュエッタやジュリアもチェック!

ほかにもアルファロメオの旧車は、ジュリエッタスパイダーとジュリア・スパイダー、筆者が所有する「段付きクーペ」が2台会場に並んでいた。
気になるのはそのお値段。ジュリア/ジュリエッタスパイダーはプライスボードがなかったので売り物かどうかは定かではないが、大阪のジロン自動車が持ち込んだ1967年型ジュリア・スプリントGTVは950万円、東京のCRANK TOKYOが出展した1969年型1300GTジュニアが795万円の値札が提示されていた。

ジュリエッタ・スパイダー(手前)とジュリア・スパイダー(奥)。ジュリエッタ・スパイダーは1955年に登場したアルファロメオのスポーツモデル(ほかにクーペがある)。スタイリングはピニン・ファリーナが担当した。エンジンにはアルミ合金製の1.3L直列4気筒DOHCを搭載。1962年に排気量を1.6Lに拡大し、その際に名称をジュリア・スパイダーと改め、1966年まで製造が続けられた。両車の外観上の違いはエンブレムとボンネットのパワーバルジの追加程度。

ここ最近の物価上昇の煽りを受けて卵も、もやしも、吉野家の牛丼もずいぶんと値上がりしたが、それでもクラシック・アルファの価格上昇の比ではない。維持のしやすさから「旧車入門用にも最適」などと謳われたジュリアシリーズもずいぶんと高くなったものだ。15年くらい前なら200~300万円程度の予算で買えた段付きクーペが1000万円近くとは……。

CRANK TOKYOが795万円で販売する1969年型1300GTジュニア。筆者の愛車とは年式違いの同型車。ただしコンディションは雲泥の差(羨ましい……)

相場高騰でクラシック・アルファロメオは今やすっかり高嶺の花に

大阪でクラシックカー販売を手がけるジロン自動車が950万円で販売する1967年型ジュリア・スプリントGTV。1300GTジュニアとの違いは排気量が1.6Lへと拡大されたことと、グリルの形状違い、そしてCピラーのバッジの有無となる。
さすがはクラシックカーの老舗が持ち込んだ車両だけあってコンディションは素晴らしく、内装も美しさをキープしている。隣に並べてあったポルシェ914/6は、1000万円を超えるプライスにもかかわらず、初日の夕方には販売済みになっていた。

筆者が今の愛車を手に入れたのは8年前の2015年のことだ。その頃、すでに相場は350~450万円と上がり始めており、そんな中で250万円の売り物を見つけたときには、契約書に判を押すべく小躍りしながら店に向かったものだ。もちろん、筆者のポンコツと会場に並んだ車両ではコンディションに雲泥の差があるが、年式相応の程度のモデルでも当時のような金額ではとても買えないようなのだ。

筆者が所有する1967年型アルファロメオ1300GTジュニア。コンディションは年式相応で内外装共にヤレが進んでおり、エンジンも圧縮が抜け気味で、オイル漏れも少々。いろいろやることが多く、これから徐々に手を入れて行く予定だ。なお、オートモビル・カウンシルに並んでいた旧車の価格は、あくまでも販売価格であって、よほどのミントコンディションでもなければ、売却(買取)価格は相場の1/3程度といったところだろう。旧車は仕入れ後になんらかの修理が必要となるし、在庫が長期化しやすいので売却(買取)価格は安くなる傾向にある。売値と買値の差が大きいので、筆者のような素寒貧な人間がカネに目が眩んで旧車を手放してしまうと、もう二度と買い戻すことはできなくなる。

自宅に戻ってから中古車情報サイトを確認すると、そもそも段付きは売り物が少なく、そのほとんどが「ASK」と表示されていた。数少ないプライスタグをつけた車両は798万円。後期型のフラットノーズや、ジュリア・スーパーなどのセダン系でも500~700万円はする。
つまり、筆者の乏しい年収では、今の愛車を手放してしまったら、もう二度とクラシック・アルファを買うことはできそうにもない。現在の財政事情ではフルレストアなどとても望めそうにもないが、なんとかやり繰りしながら少しづつでも悪いところを修理して、コンディションを維持、もとい少しずつでも良くしていこうと、あらためて決意したのであった……。

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…