ホンダが2026年から5回目のF1参戦、今度はどれほど続くのか?過去の活動は最短5年、最長10年だが…。

本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部 敏宏
F1参戦記者会見にて意気込みを語る。本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部 敏宏さん。
ホンダが、FIAフォーミュラ・ワン世界選手権へワークス・パワーユニットを引っさげて再び参戦する。2021年の参戦終了時には再参戦は考えていないという姿勢だったが、2030年にまでのカーボンニュートラルを目指すF1と2050年までのカーボンニュートラル実現をかかげるホンダの方向性が合致したことが復帰の理由だという。ひとまず2026年からの新レギュレーションに合わせて開発するパワーユニットを供給するパートナーは、Aston Martin Aramco Cognizant Formula One® Teamと発表された。
REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:本田技研工業(Honda)

カーボンニュートラルを目指すF1はホンダの方向性と合致するという

Aston Martin Aramco Cognizant Formula One® Team
2026年からホンダのワークス・パワーユニットを搭載するのはAston Martin Aramco Cognizant Formula One® Team(アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チーム)となる。

2026年からホンダがワークス・パワーユニットの供給者としてF1に復帰することが発表されました。すでに多くの報道で話題になっているので、ご存じの方も多いでしょうが、新しいパートナーとなるのはAston Martin Aramco Cognizant Formula One® Team(アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チーム)です。

今シーズン参戦中の「アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チーム」

ホンダは2021年にいったんF1への参戦を終了させていますが、その段階ではF1参戦に割かれていたリソースを、ホンダ全体のカーボンニュートラル化へ向けた技術開発に振り分けるためといった説明がされていました。

そんなホンダが、F1に再参戦する理由として、2026年から採用される新レギュレーションではエンジンとモーターの出力比が50:50になることから量産車における電動化技術とのつながりが出てくること、カーボンニュートラル燃料であるe-fuel(100%カーボンニュートラル燃料)を採用することなどが挙げられています。F1自体が2030年までにカーボンニュートラルを目指すことに、ホンダが参戦する意義があると判断したということのようです。

2021年のRed Bull Racingではマックス・フェルスタッペン選手がドライバーズチャンピオン獲得する好成績だったが、ホンダはF1参戦を終了した。

F1に復帰してもホンダが内燃機関を止めるのは変わらない

本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部 敏宏
F1参戦記者会見にて意気込みを語る。本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部 敏宏さん。

とはいえ、ハイブリッドパワートレインとなるF1への参戦で、ホンダの量産車における環境対応のロードマップが変わるわけではないようです。

前述したe-fuelについては四輪への展開というよりも、ホンダジェットなど電動化が難しい航空分野で知見を活用することを考えているようです。記者会見における質疑応答では、ホンダの三部社長自身が「内燃機関を止めるという方針に変わりはない」といった内容の発言をしています。

F1活動をブランディングやマーケティングに活かし、電動スポーツカーにつなげたいといった発言もありましたが、エンジン技術を活用するという意図は現時点では感じることはできません。

ホンダは過去に何度もF1活動から離れていますが、今度で5度目の参戦となります。ポジティブに評価すれば、必要と判断すれば柔軟に方針を変える社風ともいえます。量産車においてもエンジンを止めるという判断が覆されることがないとは言い切れないと、歴史は教えてくれます。

もっとも開発を止めてしまうと、ライバルをキャッチアップすることが容易ではないのは、ホンダが2015年にF1復帰した際の苦労を思い出せば明らかです。市販車向けのエンジン技術についても開発を止めてしまえば、復活させる目はないといえるかもしれません。

過去のホンダF1活動は最短5年、最長10年だが…

RA621H
2021年にマックス・フェスタッペン選手がドライバーチャンピオンを獲得した原動力となったホンダのF1パワーユニット「RA621H」

すでに2026年からのホンダのF1活動について第5期という呼び方も使われているようですが、過去を振り返ると次のようになっています。

第1期:1964年~1968年(5年間)/ホンダ・レーシング
第2期:1983年~1992年(10年間)/ウィリアムス、マクラーレンなど
第3期:2000年~2008年(9年間)/B・A・R・ホンダ、ホンダ・レーシングなど
第4期:2015年~2021年(7年間)/マクラーレン、トロロッソ、レッドブルなど
第5期:2026年~

本田宗一郎氏が社長時代のF1第1期については歴代で最短の5年間で、最強エンジンと謳われた第2期の10年が最長期間となっています。平均すると一期は約7年というのが歴史的な事実といえます。はたして、第5期の活動はどのくらい続くのでしょうか。記者会見では、継続的な参戦を目指していることを期待させる発言も多くありましたが、歴史は繰り返すともいいます。

1987/Williams Honda FW11B
1991/McLaren Honda MP4/6

モータースポーツについては、技術面でもブランディング面でも継続することが大切なのは間違いありませんが、参戦と休止を繰り返すという伝統をホンダは変えることができるのでしょうか。

そうはいっても、上記のうち完全に空白期があったといえるのは第1期と第2期の間(14年)と、第3期と第4期の間(6年)といえます。

第4期の参戦終了以降、ホンダの知財を受け継いだカタチとなるHRCがレッドブルパワートレインズに技術支援をすることで最新のF1とつながっていますし、レッドブルのマシンにはホンダのロゴも掲げられています。

そして第2期から第3期にかけての期間について、当初はホンダF1エンジンの基本設計を活かした無限ホンダとして参戦していたことを覚えているファンも少なくないでしょう。

2002/Jordan Honda EJ12
2008/Honda RA108

オールホンダとして参戦するための準備として1998年に独自シャシーを開発する際にも無限ホンダのエンジンを使っており、そのテストドライブをマックス・フェルスタッペン選手の父親であるヨス・フェルスタッペンさんが担ったというエピソードは有名です。

ちなみに、無限ホンダとしての最終年に、そのエンジンを積んでいたのはジョーダンF1チームでした。ホンダが新たにパートナーシップを組むことになったアストンマーチンF1のチームとしてのルーツを辿るとジョーダンにつながるのは歴史のいたずらなのか、それとも必然的な絆といわれることになるのか。それは2026年以降のリザルトが答えを示してくれることでしょう。

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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。編集者を経て、過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コ…