見た目よりも中身が大進化したマツダ・ロードスター E/Eアーキテクチャー刷新でどう変わった?新旧比較

マツダ・ロードスターS Special Package
マツダは2023年10月5日に「ロードスター」の大幅商品改良を行なった。2015年にデビューした4代目ND型ロードスターとしては最大規模の商品改良である。マツダ自らが「最大」と表現するだけあって改良は多岐にわたっている。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

E/Eアーキテクチャーの大刷新で中身は大進化を果たした

大幅改良を受けたマツダ・ロードスター
ボディサイズは全長×全幅×全高:3915mm×1735mm×1235mm ホイールベース:2310mmで変わらず。

こんなことを言っては興ざめかもしれないが、大幅商品改良のきっかけは法規対応だ。国連規則のサイバーセキュリティ法(UN-R155)に対応することが、新型車だけでなく継続生産車にも求められることになったからである(OTA対応の継続生産車は2024年7月から適用)。

この法規に対応するため、ロードスターは俗にE/Eアーキテクチャーと呼ばれる電気/電子プラットフォームを刷新することになった。そのタイミングを生かし、ロードスターの柱である“人馬一体”の走りを進化させるべく、開発に取り組んだ。走りに関連する変化点は別のレポートで触れることにして、ここでは静的な変化についてお伝えしていこう。

新型のフロントフェイス
新型のリヤランプ周り
改良前のフロントフェイス
改良前のリヤ周り

大幅商品改良版のロードスターはデイタイムランニングランプ(DRL)の仕様が変わった。改良前のターンランプはバルブだったが、改良後はDRLがターンランプを兼用する。遠くから眺めても「新しくなった」ことがわかる変化点だ。

フロントに関しては、MRCC(マツダレーダークルーズコントロール)の追加にともない、レーダーセンサーを追加する必要があった。このセンサーを覆うカバーがグリルの左側に追加されている。目標物を捉えるレーダースコープからインスピレーションを受けたデザインだ。実車で確認したが、指摘されなければ気づかない程度の変化であり、違和感は皆無である。

新型のS Special Packageのフロント
レーダーセンサーはこの位置に違和感なく収まっている。

そのグリルだが、バンパーも含めてデザインの変更を検討したという。だが、どの案もオリジナルを超えることはできないと判断され、お蔵入りとなった。「本当に中山デザインは素晴らしくて、何年経っても色あせないし、古さを感じさせない」と、チーフエンジニアの齋藤茂樹氏はND型ロードスターのチーフデザイナーを務めた中山雅氏(現デザイン本部 本部長)を称える。

大幅商品改良にあたって何も手を打たなかったわけではなく、さんざん検討した結果、「変えない」選択をしたのだ。

Sに装着されてる16インチホイール(タイヤサイズは195/50R16
RF RSが装着する17インチホイール(タイヤサイズは205/45R17)

リヤコンビランプは、ロードスターのDNAである丸目のイメージを継承しつつ、ターンランプの光源をバルブからLEDに変更した。丸目の部分は「ジェットエンジンのアフターバーナーからインスピレーションを受けた」デザインにしている。

アルミホイールはこれまで16インチと17インチで相似形だったが、大幅商品改良版では意図を持って作り分けた。16インチは機能性と軽さを重視したパフォーマンスを感じさせるデザイン。17インチは切削ホイールを採用し、華やかで大きく見えるデザインとした。

ボディカラーは新色のエアログレーメタリックが追加された。大幅商品改良版ロードスターの受注は9月末から始まっており、約4ヵ月経った段階での受注は約3000台だという。月販目標が500台だから、幸先のいいスタートを切ったといえる。

お馴染みのソウルレッドクリスタルメタリック。やはり美しい
エアログレーメタリック

ボディカラーの人気ナンバーワンはソウルレッドクリスタルメタリック、2位はスノーフレークホワイトパールマイカ、3位がエアログレーだそう。仕様やグレードによって人気色がはっきりわかれるのがロードスターのおもしろいところで、リトラクタブルハードトップモデルのRFは、グレードを問わずマシーングレープレミアムメタリックが人気。ソフトトップのNR-AとSはスノーフレーク、SレザーパッケージVセレクションはジェットブラックマイカが現時点での人気色だという。

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待望のセンターディスプレイの大型化

新型のセンターディスプレイ 8.8インチになった。
改良前のセンターディスプレイ 7インチだ。
新型のメーター
改良前のメーター

インテリアではメーターの刷新とセンターディスプレイの大型化が目を引く。メーターは漆黒の文字盤となり、針やグラフィックも変更されている。左のメーターには、MRCCのグラフィックが表示できる。

インテリアで目を引くのはやはり、センターディスプレイの大型化だろう。従来型の7インチから8.8インチになった。これも、サイバーセキュリティ法対応の一環である。当初はMAZDA3のユニットをそのまま載せるプランだったが物理的に不可能なことがわかり、縁部分が狭い専用のディスプレイを新設するに至っている。センターコンソールの奥にUSBタイプC端子が2口設置されたのもニュースだ。

S Leather Package V Selectionのインテリア

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細かなところでは、ルームミラーがフレームレスになった。また、ハードプラスチックだったセンターコンソールがクッション入りの表皮巻き(合成皮革)になっており(S Leather Package系/RS)、ひざあたり、ひじあたりが向上。見た目の質感が大きく向上している。

現行ロードスターオーナーにとって気になるのは、自分のロードスターに大幅商品改良版のパーツが付けられるかどうかだろうが、残念ながらほとんどが不可だ。ヘッドライトもリヤコンビランプも、フレームレスのミラーも付かない。唯一、レトロフィットが可能なのは、表皮巻きのセンターコンソールだそう。裏を返せば、新車を購入しなければ手に入らないアイテムばかりだ。

1.5L直4DOHCエンジンはRON100のハイオクガソリンに合わせた専用セッティングで132ps→136psに出力アップした。
■マツダ・ロードスターS Special Package
全長×全幅×全高:3915mm×1735mm×1235mm
ホイールベース:2310mm
車両重量:1020kg
エンジン形式:直列4気筒DOHC
エンジン型式:P5-VP[RS]型
総排気量:1496cc
ボア×ストローク:74.5mm×85.8mm
圧縮比:13.0
最高出力:100kW(136ps)/7000rpm
最大トルク:152Nm/4500rpm
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
トランスミッション:6速MT
サスペンション形式 前/後:ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ 前後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:195/50R16 84V
乗車定員:2名
WLTCモード燃費:16.8km/L
市街地モード燃費:11.9km/L
郊外モード燃費:17.6km/L
高速道路モード燃費:19.7km/L
車両価格:308万7700円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…