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E/Eアーキテクチャーの大刷新で中身は大進化を果たした
こんなことを言っては興ざめかもしれないが、大幅商品改良のきっかけは法規対応だ。国連規則のサイバーセキュリティ法(UN-R155)に対応することが、新型車だけでなく継続生産車にも求められることになったからである(OTA対応の継続生産車は2024年7月から適用)。
この法規に対応するため、ロードスターは俗にE/Eアーキテクチャーと呼ばれる電気/電子プラットフォームを刷新することになった。そのタイミングを生かし、ロードスターの柱である“人馬一体”の走りを進化させるべく、開発に取り組んだ。走りに関連する変化点は別のレポートで触れることにして、ここでは静的な変化についてお伝えしていこう。
大幅商品改良版のロードスターはデイタイムランニングランプ(DRL)の仕様が変わった。改良前のターンランプはバルブだったが、改良後はDRLがターンランプを兼用する。遠くから眺めても「新しくなった」ことがわかる変化点だ。
フロントに関しては、MRCC(マツダレーダークルーズコントロール)の追加にともない、レーダーセンサーを追加する必要があった。このセンサーを覆うカバーがグリルの左側に追加されている。目標物を捉えるレーダースコープからインスピレーションを受けたデザインだ。実車で確認したが、指摘されなければ気づかない程度の変化であり、違和感は皆無である。
そのグリルだが、バンパーも含めてデザインの変更を検討したという。だが、どの案もオリジナルを超えることはできないと判断され、お蔵入りとなった。「本当に中山デザインは素晴らしくて、何年経っても色あせないし、古さを感じさせない」と、チーフエンジニアの齋藤茂樹氏はND型ロードスターのチーフデザイナーを務めた中山雅氏(現デザイン本部 本部長)を称える。
大幅商品改良にあたって何も手を打たなかったわけではなく、さんざん検討した結果、「変えない」選択をしたのだ。
リヤコンビランプは、ロードスターのDNAである丸目のイメージを継承しつつ、ターンランプの光源をバルブからLEDに変更した。丸目の部分は「ジェットエンジンのアフターバーナーからインスピレーションを受けた」デザインにしている。
アルミホイールはこれまで16インチと17インチで相似形だったが、大幅商品改良版では意図を持って作り分けた。16インチは機能性と軽さを重視したパフォーマンスを感じさせるデザイン。17インチは切削ホイールを採用し、華やかで大きく見えるデザインとした。
ボディカラーは新色のエアログレーメタリックが追加された。大幅商品改良版ロードスターの受注は9月末から始まっており、約4ヵ月経った段階での受注は約3000台だという。月販目標が500台だから、幸先のいいスタートを切ったといえる。
ボディカラーの人気ナンバーワンはソウルレッドクリスタルメタリック、2位はスノーフレークホワイトパールマイカ、3位がエアログレーだそう。仕様やグレードによって人気色がはっきりわかれるのがロードスターのおもしろいところで、リトラクタブルハードトップモデルのRFは、グレードを問わずマシーングレープレミアムメタリックが人気。ソフトトップのNR-AとSはスノーフレーク、SレザーパッケージVセレクションはジェットブラックマイカが現時点での人気色だという。
待望のセンターディスプレイの大型化
インテリアではメーターの刷新とセンターディスプレイの大型化が目を引く。メーターは漆黒の文字盤となり、針やグラフィックも変更されている。左のメーターには、MRCCのグラフィックが表示できる。
インテリアで目を引くのはやはり、センターディスプレイの大型化だろう。従来型の7インチから8.8インチになった。これも、サイバーセキュリティ法対応の一環である。当初はMAZDA3のユニットをそのまま載せるプランだったが物理的に不可能なことがわかり、縁部分が狭い専用のディスプレイを新設するに至っている。センターコンソールの奥にUSBタイプC端子が2口設置されたのもニュースだ。
細かなところでは、ルームミラーがフレームレスになった。また、ハードプラスチックだったセンターコンソールがクッション入りの表皮巻き(合成皮革)になっており(S Leather Package系/RS)、ひざあたり、ひじあたりが向上。見た目の質感が大きく向上している。
現行ロードスターオーナーにとって気になるのは、自分のロードスターに大幅商品改良版のパーツが付けられるかどうかだろうが、残念ながらほとんどが不可だ。ヘッドライトもリヤコンビランプも、フレームレスのミラーも付かない。唯一、レトロフィットが可能なのは、表皮巻きのセンターコンソールだそう。裏を返せば、新車を購入しなければ手に入らないアイテムばかりだ。
■マツダ・ロードスターS Special Package 全長×全幅×全高:3915mm×1735mm×1235mm ホイールベース:2310mm 車両重量:1020kg エンジン形式:直列4気筒DOHC エンジン型式:P5-VP[RS]型 総排気量:1496cc ボア×ストローク:74.5mm×85.8mm 圧縮比:13.0 最高出力:100kW(136ps)/7000rpm 最大トルク:152Nm/4500rpm 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) トランスミッション:6速MT サスペンション形式 前/後:ダブルウィッシュボーン/マルチリンク ブレーキ 前後:ベンチレーテッドディスク/ディスク タイヤサイズ:195/50R16 84V 乗車定員:2名 WLTCモード燃費:16.8km/L 市街地モード燃費:11.9km/L 郊外モード燃費:17.6km/L 高速道路モード燃費:19.7km/L 車両価格:308万7700円