EVドライブよりも難しそうな、エンジン直結率でナンバーワンを目指す!
先に断っておくと、この記事は自慢したい気持ちが先にある。つまり、手前味噌であり、自画自讃だ。11メディアが参加したメディア対抗の“チャレンジ”に参加して1位になったので記事化するに至った次第。2位以下だったらスルー(なかったことに)していただろう。
何のチャレンジかというと、ホンダ・スポーツe:HEV(イーエイチイーブイ)の「エンジン直結率」と「EVドライブ率」についてだ。試乗コースは大まかに言うと伊豆である。山の上のほうにある自転車の国サイクルスポーツセンターを起点に、沼津側(西側)の海の近くまで坂を下り、伊豆中央道を走り、今度は山を登ってサイクルスポーツセンターに向かう。到着地の手前で伊豆スカイラインを一定区間走るが、「純粋に走りを楽しんでほしい」との意図から、この区間はチャレンジにカウントされない。
ドライブしたクルマは、ホンダZR-Vのスポーツe:HEV仕様だ。走行用と発電用の2つのモーターを持つシリーズパラレルハイブリッドシステムのe:HEVには、3つのドライブオペレーションがある。EVドライブ、ハイブリッドドライブ、エンジンドライブだ。
EVドライブはバッテリーに蓄えたエネルギーを利用してモーターを駆動するモードである。基本的には、バッテリーに残量がある限りエンジンは停止したままにしておき、モーターで走る。ただし、バッテリー残量が一定以下になったり、ドライバーの出力要求が大きかったりすると、エンジンが発電のために始動。発電した電力でバッテリーを充電したり、走行用モーターのアシストを行なったりする。
駆動側だけでなく、下り坂で回生ブレーキを使っている場合もEVドライブにカウントされる。下り坂ではできるだけ無駄にアクセルを踏まず、回生してバッテリーにエネルギーを蓄えておきたい。当然のことながらチャレンジのコースは貸し切りではないから、前にクルマがいたり、後ろにクルマがいたり、信号に引っかかったりする。下り勾配の途中で信号につかまると、せっかく蓄えた電気エネルギーを発進時に使わなければならない。不本意だが、仕方ない。交通状況や信号のタイミングは完全に運だ。
伊豆中央道を降りてからの連続する上り勾配では、バッテリーに蓄えたエネルギーが尽きてしまうので、どうしてもエンジンを始動して発電する必要がある。条件がそろったときのEV走行に備えて、効率良く発電し、バッテリーにエネルギーを蓄えておきたい。メリハリをつけた運転が、エネルギーを効率良く蓄えるコツのようだ。
e:HEVの最大の特徴は、エンジン直結モードを備えていることだ。ハイブリッドドライブで走るよりも効率が高い(すなわち燃費がいい)とシステムが判断した場合は直結クラッチをつなぎ、エンジンの動力のみで走る。平坦路ではメーター読み60km/h付近でエンジン直結になるのがわかる。
なぜわかるかというと、メーターに表示されるからだ。エネルギーフローのグラフィックを表示させておくと、バッテリーからエネルギーを持ちだしてEV走行しているのか、エンジンで発電しているのか、発電しながら回生もしているのかなどが視覚的にわかる。左右の前輪を結ぶ横のラインと、ハイブリッドドライブトレーンとバッテリーを結ぶ縦のラインの交点に歯車が表示されたら、エンジン直結になっている証拠だ。
さて、エンジン直結率とEVドライブ率、どっちでナンバーワンを狙おうか。「両方狙おう!」Motor-Fan.jpチームの総監督を務める(?)局長に打診したところ、即座にNGを突きつけられた。二兎を追う者は一兎をも得ず、というわけだ。どうせなら、e:HEVの最大の特徴であり、EVドライブよりも難しそうな、エンジン直結率でナンバーワンを目指そうということになった。
自慢話ついでにお知らせしておくと、Motor-Fan.jpチームはエンジン直結率で1位、EVドライブ率で3位だった。「両方狙えたじゃないか」という気がしないでもない。狙って獲れるとは限らないが……。
エンジン直結狙いの走行に終始した結果、思わぬ発見があった。直結状態がなかなか粘るのである。エンジン直結が燃費率の観点で効率のいいゾーンを外れると、ハイブリッドドライブに切り替わる。それは頭ではわかっているのだが、実際に交通の流れに合わせてアクセルペダルの踏み込みを少し強くしたり、先行車の車速が落ちたのに合わせて車間を維持するためにアクセルの踏み込みを少し緩めたりしても、e:HEVはクラッチを離さず直結状態を維持したまま走る。
低速側はメーター読みで50km/h+αまでエンジン直結状態を維持する。ある程度のヒステリシスを持たせているのだろう。そんなことが可能なのは、シビック、ZR-V、アコードが搭載するスポーツe:HEVの2.0L直列4気筒自然吸気直噴ガソリンエンジンが、広い領域で熱効率の高いゾーンを実現しているからだ。ポート噴射だった従来のエンジンに対し、とくに負荷の高い領域に燃費率の良好なゾーンが広がっている。
このため、負荷の変動に対して柔軟に対応できるようになったのが、エンジン直結で粘るようになった理由のひとつ。それだけでなく、直結状態を維持したまま走行用モーターで回生を行なって負荷を上げ、エンジンの効率の高い運転領域を維持するような制御も取り入れている。逆もまたしかりで、直結状態を維持しながら走行用モーターを力行(アシスト)側に使い、ドライバーの出力要求を満足させたりもする。
制御は常にシームレス。直結なのは歯車の表示でわかるし、そのときモーターは休んでいるのか、力行しているのか、回生しているのかもパワーフローのグラフィックはきちんと示している。体感上はまったく変化なし。極めてスムースに切り換えているということだ。
そんなことを考えながら走った結果の、エンジン直結率1位である(ウソです、「歯車出ろ!」と念じながら走っただけ……)。