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■快適な室内空間を実現したコンパクトな3列シートのミニバン
1996年(平成8)年5月8日、ホンダが5ナンバーミニバン「ステップワゴン」を発表、5月10日から発売された。ステップワゴンは、当時ホンダが進めていた“クリエイティブ・ムーバー(生活創造車)”の第3弾として登場、コンパクトながら広い室内空間と快適性で大ヒットした。
●RVに対抗したホンダ独自のクリエイティブ・ムーバー
1990年代はRVブームの真っただ中。ホンダは独自に「クリエイティブ・ムーバー(生活創造車)」というコンセプトのFFベースの新型モデルで対抗した。
第1弾は「オデッセイ(1994年~)」、第2弾「CR-V(1995年~)」、そして登場した第3弾がミニバンのステップワゴン(1996年~)、第4弾は「S-MX(1996年~)」である。
共通するのは、空間効率に優れ、走行中でも停車中でも楽しめるクルマであること。実質的にはRVと同じようなコンセプトだが、“クルマは使う人が自らの生活を思いのままに創造・演出するための道具と位置づけ、主人公はあくまで人”という考え方だ。
3列シートのミニバンであるオデッセイとステップワゴンは、多彩なシートアレンジで多人数乗車が可能。SUVのCR-Vは、悪路走行もできる都会派オフローダーだが、車内が広く個性的なシートアレンジができる。S-MXは、コンパクトカーながら全高が高く、ユーテリティに優れているのが特徴である。
●8人乗車も可能な5ナンバーミニバンのステップワゴン
ステップワゴンは、シビックをベースにしたボクシーなスタイリングのミニバンである。従来のセダンやハッチバックのファミリーカーとは異なる、多人数が楽しめる理想のファミリーカーを目指し、5ナンバーながら低床化と高いルーフにより、3列シートによる余裕の室内空間と快適性を実現した。
パワートレインは、最高出力125psを発生する2.0L直 4エンジンとコラム式ATの組み合わせ、駆動方式はFFとオンデマンド式4WDが用意された。FR商用車ベースのミニバンが一般的だった当時、乗用車のプラットフォームで作り上げた手頃な5ナンバーサイズのFFステップワゴンは、新鮮だった。
車両価格は、5人乗車が154.8万円、8人乗車は179.8万円。ちなみに、当時の大卒初任給は19.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で8人乗車が約212万円に相当する。
新しいファミリーカーの姿を具現化したステップワゴンは、発売から3年間、ミニバン首位を独走する大ヒットを記録。その後、トヨタ「ノア/ヴォクシー」、日産自動車「セレナ」などが追走、人気を集めて5ナンバーミニバンブームが起こったが、ステップワゴンはそのパイオニアだった。
●ステップワゴンのルーツはステップバン
ステップワゴンのネーミングのルーツは、1972年に登場した軽商用車「ステップバン」とされている。FFレイアウトの乗用車「ライフ」をベースにした、全高が1620mmに達する直線基調の1.5ボックスの商用車で、当時としてはデザインがユニーク過ぎてヒットモデルとはならなかった。
しかし、生産終了間近になると若者のカスタマイズの対象車としてRV的な使い方をされ、中古車市場では新車価格よりも高値で取り引きされたのだ。広い室内空間を確保したマルチユースのステップバンは、RV要素を持ったコンパクトミニバンやハイトワゴンの元祖的な存在だったのだ。
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ステップワゴン以前のコンパクトミニバンは、エンジンが前席下にあるFRベースの1ボックスだった。ステップワゴンは、FF乗用車のプラットフォームを使った5ナンバーながら3列シートのミニバンを実現したこと、これが画期的で人気の秘密だったのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。