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ホンダ・フリードは2008年にデビューした1.5Lクラスのコンパクトミニバン。2016年に二代目にモデルチェンジし、2024年、三代目へのフルモデルチェンジが発表された。
ちょうど良いサイズとプレーンなデザイン、優れた居住性と使い勝手の良さから子育て世代を中心に幅広い層に支持されるホンダ屈指の人気モデルである。
そのライバルとなるのがトヨタ・シエンタ。2003年にデビューした初代から人気を集め、一時生産中止になるもユーザーの要望に応え生産を再開。2015年まで販売されたロングセラーモデルとしてブランドを確たるものにした。2015年に二代目、2022年に三代目にモデルチェンジし現在に至る。
シエンタは2023年度の年間販売台数が13万2332台で3位(1位ヤリス、2位カローラ)の人気モデル。2022年8月のフルモデルチェンジにより前年比192%という大幅な伸びを見せた。
フリードは7万7562台の10位。モデル末期を噂されつつ前年比は97%と販売を維持しただけに、新車効果が逆転する2024年ー2025年でフリードはシエンタにどこまで迫れる、あるいは超えることができるだろうか。
エクステリア
新型フリードのデザインは、上位モデルのステップワゴンにも通じるテイストでまとめられたシンプルでクリーンなもの。今回のモデルチェンジでは「クロスター」をよりSUVテイストを高めたモデルに設定することで、スタイルの幅を広げている。
一方、シエンタはボディサイドのブラックパネルや、ブラックアウトされたフロントバンパー、リヤバンパーサイドなど、最初からSUV的なデザイン要素が組み込まれている。
また、直線基調のフリードに対し、曲線的なシエンタと、キャラクターも異なっている。B・Cピラーをブラックアウトし、Dピラーを太いカラードにしたフリードはウインドウ全体をひとつに見せているが、シエンタはA・Bピラーをカラーに、Cピラーをブラックアウト、Dピラーをリヤコンビネーションランプで隠す複雑な構成をしつつフローティングルーフ的な演出をしているのも両車の違いだ。
ボディサイズ
新型フリードはパワートレインにe:HEVを搭載する関係で全長が先代モデル(4265mm)より45mm延長されており、シエンタ比では50mm全長が長い(先代フリードはシエンタ比+5mm)。
一方でホイールベースは先代と変わらない数字となっており、こちらはシエンタ比で−10mmだ。
全幅は5ナンバーサイズであることが前提ということもあり、1695mmは不変で両車共通の数字となっている。ただし、フリード・クロスターはSUV的なアーチプロテクターを装着しているため全幅は1720mm(エア比+25mm)の3ナンバーサイズとなっている。
全高はフリードが60mmほど高い。先代の1710mm(FF車)から+45mmだが、アンテナまで含めると先代よりも全高は下がっているという。1700mmを切るシエンタに対して約50mmほど全高が高いわけだが、その点が居住空間に生かされているのだろうか。低床を得意とするホンダだけに、気になるところだ。
車名 | フリード | シエンタ |
全長 | 4310mm | 4260mm |
全幅 | 1695mm (クロスター:1720mm) | 1695mm |
全高 | 1755mm(ルーフアンテナ) | 1695mm (4WD:1715mm) |
ホイールベース | 2740mm | 2750mm |
今回の取材車両はいずれも15インチアルミホイール装着車で、エア1種類、クロスター2種類が用意されており。タイヤは185/65R15サイズのグッドイヤー・エフィシエントグリップパフォーマンス2だが、これが純正装着かはまだわからない。
185/65R15のタイヤサイズはシエンタも同様で、アルミホイールはオプション(ノーマルはスチールホイール+ホイールカバー)。今回の撮影車両には用意されていなかったものの、フリードもスチールホイール+ホイールカバー仕様が用意されるようだが、アルミホイールは全車オプションなのか上級グレードで標準装備になるかは現時点では不明だ。
メーター&インストゥルメントパネル
フリードもシエンタもダッシュボード中央にインフォテインメントシステムを配置し、センタコンソールにシフトレバーを置くレイアウトはオーソドックス。フリードはステアリングホイールが左右2本となっている。
また、フリードは助手席側のダッシュボードに蓋付きのインパネアッパーボックスを設置し、収納力と高級感を両立させようとしているようだ。
また、ナビについてはグレードやオプションで変わってくることになるが、フリードは8インチのディスプレイオーディオ(Honda CONNECT対応)のほか、8インチ、9インチ、11.4インチのHonda CONNECTナビを用意している。
シエンタはコネクティッドナビ対応のディスプレイオーディオが8インチモデルが一部を除き標準装備で、撮影車両の10.5インチモデルをオプションに用意している。
フリードのメーターはホンダの他の最新モデルと同様のレイアウトだが、中央に速度計、左右に燃料計と水温計を配置。中央にはマルチインフォメーションディスプレイを置く液晶メーターという点は非常に似通っている。といより液晶メーターのオーソドックスなスタイルと言えるだろう。
シート
フリード、シエンタともに5名乗車の2列シート仕様と7名乗車の3列シート仕様を用意するが、フリードは2列目シートを3名掛けのベンチシートではなく左右独立したキャプテンシートとした6名乗車の3列シート仕様を設定する。
このキャプテンシートの6名乗車仕様がフリードとシエンタの大きな違いになっており、フロントシートからのウォークスルーはもちろん、2列目から3列目へのウォークスルーも可能になっている。
今回の撮影車両では2列シートの5名乗車モデルは用意されておらず、比較することはできなかった。また、フリードも2列目ベンチシートの7名乗車モデルが用意されていなかったので、7名乗車同士で比較もできていないのは残念だ。
ラゲッジルーム&アレンジ
フリード、シエンタ共に2列目・3列目シートを格納してのラゲッジルームの拡張はミニバンとして至極当然の機能として備わっている。
特に大きな違いはサードシートの格納方法で、フリードが左右への跳ね上げ。シエンタが2列目シート下へのダイブインという点だ。
この3列目シートの格納方法にはそれぞれメリット・デメリットがあり、いずれを採用するかは各社・各車種ごとに異なっている。
左右跳ね上げは手軽である一方、荷室の左右幅が制限される。ダイブインは格納時に2列目シートを一度畳む必要があるが、跳ね上げタイプのようにベルトで固定する手間はない。ただ、床下にシートを収納するのでフロアの高さや室内高は犠牲になる。
特にフリードの低床は際立っており、フリードの開口部地上高(地面からラゲッジルーム開口部下端までの高さ)は2列シート仕様で335mm。シエンタは同じ2列シート仕様でラゲッジルームフロア高が565mmとなっている。(3列シート仕様では、フリードの開口部地上高は公開されていないが、シエンタは505mm)
この低床は荷室開口高にも効いており、同じく2列シート仕様の比較でフリードが1255mm、シエンタが1070mmとなっている。なお、開口幅はフリードが1080mm、シエンタが1070mmとほぼ同じだ。
なお、3列シート仕様車も含むフリードのラゲッジルーム寸法詳細については現時点では公開されておらず、シエンタとの公平な数値比較ができていない点はご了承いただきたい。
グレード比較&価格
新型フリードの特設サイトに紹介されているグレードは「エア」「エアEX」「クロスター」の3グレード。エアのみベーシックグレードと上級グレードが用意されることから、クロスターはそもそも上級グレードと同等以上と思われる。
エアは7名乗車と6名乗車で5名乗車の2列シート仕様はなし。逆にクロスターは6名乗車と5名乗車で、3列シートでも7名乗車はなし、という設定。
駆動方式では7名乗車がFFのみで、他はFFとAWDが設定される。つまり、7名乗車はエアのFFのみということになる。
一方でパワートレインは全グレードでガソリンエンジンとe:HEVを選べる。
車種 | フリード・エア | フリード・クロスター |
7名乗車(駆動方式) | ○(FF) | × |
6名乗車(駆動方式) | ○(FF/AWD) | ○(FF/AWD) |
5名乗車(駆動方式) | × | ○(FF/AWD) |
ドライブトレイン | ガソリンエンジン/e:HEV | ガソリンエンジン/e:HEV |
また余談ながら、ホンダが力を入れている福祉車両(スロープ、リフトアップシート)も用意されるが、現状ではクロスターのみになっているのが面白い。福祉車両ではあるが、マルチな使い方も提案したいホンダの意気込みを感じさせる。
シエンタはフリードのようなキャラクター分けはなく、下から「X」「G」「Z」の3グレードを展開。全車に2列シートの5名乗車と3列シートの7名乗車を設定し、ガソリンエンジンとハイブリッドが用意される。ただし、AWDが選べるのはハイブリッド車のみだ。
クロスターのようなSUVモデルはもちろん、6名乗車やガソリンエンジンのAWD車はフリードにしか無い仕様なので、その点がフリードのシエンタに対するストロングポイントになってくるだろうか。
価格については未発表だが、先代フリードが233万0900円〜321万5300円、シエンタが195万円〜310万8000円。昨今の物価上昇から先代より価格は上がりそうだ。特に付加価値のあるクロスターは高めに設定されることになるが、より独自色が強くなっていることから、先代モデルの約+27万円(ハイブリッドG/ハイブリッド・クロスターのFF6名乗車で比較)で収まるだろうか?