ダイハツ新型ムーヴ キャンバス | ストライプスはかわいらしく、セオリーはシック男性もターゲット

ダイハツ・ムーヴキャンパス ストライプスG 車両本体価格:167万2000円 メーカーop:9インチスマホ連携ディスプレイオーディオスマートパノラマパーキングパック付き14万8500円 ディーラーop:カーペット:2万6026円、ETC車載器1万7380円 ドライブレコーダー3万4760円
「かわいい軽自動車」の代表格、ダイハツ・ムーヴ キャンパスが新型に切り替わった。今回のムーヴ キャンパスは「ストライプス」と「セオリー」の二本立てだ。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

「ストライプス」と「セオリー」

ダイハツ・ムーヴキャンパス ストライプスG
ダイハツ・ムーヴキャンパス セオリーGターボ

車名は思い出せなくても、「かわいい軽自動車」のワードで検索すると、高い確率で上位に出てくるのが、ダイハツのムーヴ キャンバスだ。「かわいらしさ」を狙って開発したクルマなので、そう評価されるのは狙いどおりだ。7月13日にフルモデルチェンジした新型も、初代で好評だった「かわいらしさ」を受け継いでいる。

どう受け止めるかは人それぞれだろうが、筆者はムーヴ キャンバスが漫画・アニメ・映画『キングダム』の主要キャラクターのひとつである河了貂(かりょうてん)のかぶり物にダブって見えて仕方がない。とぼけた表情がいい。そう見えてしまってからは、ムーヴ キャンバスを見ると頬が緩んでしまう。

2016年にデビューした初代ムーヴ キャンバスは、「母×娘」をイメージしつつ、若年女性をターゲットに据えて開発した。実際、ユーザーの約9割が女性だったという。ところが実際には(月平均5600台が売れ、累計販売台数は38万台を超える)、「父×娘」や「母×息子」でムーヴ キャンバスを共有するケースが少なからずあったという。

だったら2代目はそっちもしっかりターゲットに据えて開発しようということになった。そこで、新型ムーヴ・キャンバスは2本立ての構成とした。ひとつは初代で好評だったかわいらしさを継承した「ストライプス」で、最新のトレンドに合わせてすっきりと洗練されたムードでまとめた。ストライプスの名称は2トーンのボディカラーを表すオプション名として初代から存在しており、新型ではグレード名として独立させた格好だ。

2本立ててのもうひとつは「セオリー」で、大人の男性がターゲットだ。この人にはムーヴ キャンバスが合っていると思ったので販売店側で勧めようとしても、「これは女性向けのクルマでしょ?」「自分が乗るにはちょっと恥ずかしい」という声があったのだという。2トーンではなくモノトーンなら少しはかわいらしさを抑えることができるが、先代のモノトーンは下位グレードの位置づけだったため装備面で見劣りがし、そこも敬遠される理由になっていたという。

ダイハツ・ムーヴキャンパス ストライプスG 全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1655mm ホイールベース:2460mm
ダイハツ・ムーヴキャンパス セオリーGターボ 最小回転半径:4.4m 最低地上高:150mm

需要はあるのに取りこぼしていたわけだ。新型では、前型で取りこぼしていたこうしたユーザーをすくい取るべく、セオリーというシックな内外装を持つグレードを用意した。ボディカラーはモノトーンで、メッキ調のピンストライプが側面に入るのが特徴。インテリアは深みのあるブラウンとネイビーの組み合わせで落ち着いたムードを漂わせている。もちろん、世代を問わず女性がセオリーを選んでもいいし、大人の男性がポップな2トーンのボディカラーと、ホワイトを基調とした明るいインテリアのストライプスを選んでもいい。筆者の気持ちはストライプスに傾いている。明るく居心地のいいインテリアが気に入った。

ダイハツ・ムーヴキャンパス ストライプスG

ダイハツ・ムーヴキャンパス セオリーGターボ

前型には設定のなかったターボエンジン仕様が設定されたのも、新型ムーヴ キャンバスのトピックだ。ストライプス/セオリーの両グレードで選択することができる。自然吸気(NA)エンジン仕様(最高出力52ps/最大トルク60Nm)とターボ仕様(最高出力64ps/最大トルク100Nm)を乗り比べたが、正直、1名乗車ならNAエンジン仕様で充分だと感じた。NAエンジン仕様の場合、交差点の角を曲がると急坂という、非力な軽自動車にとって過酷な状況では、アクセルペダルを踏み込むとエンジン回転が4000~5000rpmまで一気に跳ね上がる。

エンジンが高回転まで回っていることは音の感じから伝わってくるのだが、どこか遠くで鳴り響いている印象で、騒々しくはない。ブルブルした振動が発生するでもない。苦しげな感じも伝わってこない。だから、「これでいいのでは?」と感じた次第。ところが、ターボエンジン車に乗り慣れた人にとっては、ターボ仕様の設定がないとわかった時点で、クレジットカードが使えない店を拒絶するように「じゃあ、いいですぅ」となるケースもあるらしい。そういうことないようにするのも、ターボ仕様を設定する動機になったようだ。もちろん、ターボ仕様の走りは元気いっぱいで、NA仕様では精一杯な感じだった急坂を軽々と上っていく。エクストラの投資をしただけの見返りはあると断言していい。

ダイハツ・ムーヴキャンパス ストライプスG エンジン 形式:0.66ℓ直列3気筒DOHC 型式:KF型 排気量:658cc ボア×ストローク:63.0×70.4mm 圧縮比:11.5 最高出力:52ps(38kW)/6900pm 最大トルク:60Nm/3600rpm 燃料:レギュラー 燃料タンク:30ℓ
トランスミッション:CVT
ダイハツ・ムーヴキャンパス セオリーGターボ エンジン形式:0.66ℓ直列3気筒DOHCターボ 型式:KF型 排気量:658cc ボア×ストローク:63.0×70.4mm 圧縮比:9.0 最高出力:64ps(47kW)/6400pm 最大トルク:100Nm/3600rpm 燃料:レギュラー 燃料タンク:30ℓ トランスミッション:CVT

NAのエンジンが高回転まで回っても騒々しくないのは、プラットフォームがDNGA(Daihatsu New Global Architecture)と呼ぶ最新世代に切り替わったのが大きい(2019年のタントが初出し)。これにより、衝突安全性をはじめ、乗り心地や走りに効く剛性や振動・騒音面など、およそ安全性や走りや快適性に効果がある領域が全体的にレベルアップした。エンジンが高回転まで回っても騒々しくないのは、DNGAを適用した効果のひとつだし、乗り味が全般的にシャキッとした。

ステアリングの操舵感もDNGAの適用によって自動的にレベルが上がっているが、ここは「特別に労力をかけた」領域だという。軽すぎず、重すぎず、ちょうどいい。角を曲がるときも、曲がってステアリングを元に戻すときも、クルマ任せで済んでしまう。真っ直ぐ走るのに気を使わないし、角を曲がった後で意識してステアリングを元に戻そうとしなくて済む。要するに、安心して運転できる。

新型ムーヴ・キャンバスが使いやすいクルマなのは相変わらずだし、使い勝手は増している。開発期間がコロナ禍と被っていたこともあり、コロナ禍でのクルマの使われ方を自然と意識した開発になったという。クルマの中で過ごす時間が増えている傾向に合わせ、物を置くスペースや収納に気を使った。インパネアッパーボックスは外したマスクを置くのに便利だし、助手席側のインパネスペースはテイクアウトした食べ物を載せるのにちょうどいい。ホッとカップホルダーは、室温25℃前後で2時間、42℃をキープしてくれる(ペットボトル、紙、缶、プラスチックに対応)。軽自動車では初採用だ。

運転席/助手席にシートヒーターを設定したのも大きい。登録車から軽自動車にダウンサイズする際、「前のクルマに付いていた装備は欲しい」と訴える声に応える狙いだ。軽自動車をファーストカーに位置づけるユーザーが増えている状況に対応するためである。そういう層にとっては、電動パーキングブレーキ+オートブレーキホールドも、「やっぱりこれは欲しいね」となる、一度使ったらやめられない機能だろう。

というように、新型ムーヴ・キャンバスは多種多様な好みを持つ人たちに幅広く選んでもらおうと、バリエーションを増やし、装備を充実させている。スマホネイティブ世代を意識し、スマホと信頼性の高い機能や装備を充実させているのも特徴のひとつだ。

初代から受け継ぐこのクルマの魅力はなんといっても、両側スライドドアだ。買い物した荷物や手荷物を後席に置く際、ヒンジドアだと後ろまで回り込まなければならないが、スライドドアなら、運転席ドアを開け閉めする立ち位置のまま、後席ドアを開けることができる。それに、後席を休憩や作業で使うときにアクセスするにも便利だ。ストライプスはかわいらしく、セオリーはシック。そして、どちらも使いやすく、気が利いている。

ダイハツ・ムーヴキャンパス ストライプスG
全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1655mm
ホイールベース:2460mm
車重:880kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
駆動方式:FF
エンジン
形式:0.66ℓ直列3気筒DOHC
型式:KF型
排気量:658cc
ボア×ストローク:63.0×70.4mm
圧縮比:11.5
最高出力:52ps(38kW)/6900pm
最大トルク:60Nm/3600rpm
燃料:レギュラー
燃料タンク:30ℓ
トランスミッション:CVT

WLTCモード燃費:25.7km/ℓ
 市街地モード22.9km/ℓ
 郊外モード20.5km/ℓ
 高速道路モード24.2km/ℓ
車両本体価格:167万2000円
メーカーop:9インチスマホ連携ディスプレイオーディオスマートパノラマパーキングパック付き14万8500円
ディーラーop:カーペット:2万6026円、ETC車載器1万7380円 ドライブレコーダー3万4760円
ダイハツ・ムーヴキャンパス セオリーGターボ
全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1655mm
ホイールベース:2460mm
車重:900kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
駆動方式:FF
エンジン
形式:0.66ℓ直列3気筒DOHCターボ
型式:KF型
排気量:658cc
ボア×ストローク:63.0×70.4mm
圧縮比:9.0
最高出力:64ps(47kW)/6400pm
最大トルク:100Nm/3600rpm
燃料:レギュラー
燃料タンク:30ℓ
トランスミッション:CVT

WLTCモード燃費:25.2km/ℓ
 市街地モード22.4km/ℓ
 郊外モード19.9km/ℓ
 高速道路モード23.7km/ℓ
車両本体価格:179万3000円
メーカーop:ボディカラー2万2000円、スマートパノラマパーキングパック7万1500円
ディーラーop:10インチスタイリッシュメモリーナビ 23万1000円
カーペット:2万6026円、ETC車載器1万7380円 ドライブレコーダー3万4760円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…