発売直後、ジムニーXC「5MT」のディーラー試乗車に初試乗!【出来利弘のジムニーオーナーレポート:Vol.6】

スポーツカーのようなダイレクトさを感じた!

「この感覚、スポーツカーだな」 走り出してまず感じたのは、レスポンスの良いエンジンとダイレクト感溢れるミッションとクラッチの感覚だ。


エンジンは低速からトルク感があり、ギヤを1速に入れ、スタートすると「グン!」と弾けるようにダッシュする感覚がある。シフトアップしてもギヤがクロスしているので、回転落ちは少なく、グイグイと車体を前に進めながら、健康的でアップテンポなリズム感が心地よく、楽しい。

水平基調でデザインされたインパネ。は奥行きが短く、コンパクトにデザインされており、どこか昭和の日本車のような懐かしさがある。「そうそう、この感じ!これくらいがいいよね。」と思わずそんな言葉が出てくる「ちょうどいい、心地よい空間」が新型ジムニーの魅力の一つだ。
 
ドアを開け、初めて見る5MTのウレタン製シフトノブとジャバラのシフトブーツになぜか胸が熱くなり、感激した。今から試乗できるなんて、「うれしい!!」
立体的なメータークラスターが格好いい。ヘアライン仕上げで硬質感を演出している。
オレンジのメーター文字盤は1980年代の国産車を彷彿とさせるレトロな雰囲気。
 
5MTを操作して、ギヤを入れ、サイドブレーキレバーを下ろす。昔は当たり前だったこの感覚がまたレトロでどこか懐かしく、ホッとする。その後ろには機械式副変速機のトランスファーレバーがあり、2H(2WD)、4H(4WD高速)、4L(4WD低速)とパートタイム4WDを切り替えられる。自分で操作感のあるレバーを切り替えられるのが嬉しい。
 

ファイナルギヤは3.818と大きめで燃費だけではなく、オフロードでの走りやすさや加速を重視した設定となっているのがうれしい。4ATはファイナルギヤは5.375とさらにローギヤードなので、5MTと同様に元気な走りだが、マニュアル車はさらにダイレクト感があるので、アクセルオンで「クオーン!!」といういかにもスポーツエンジンらしいサウンドと共に適度にパワフルなエンジンは6800rpm付近まで元気よく、スムーズに吹け上がる。ツインカムターボのサウンドも実に心地よく、気持ちいい。

エンジンは軽量R06A型660cc 直列3気筒DOHC12バルブインタークーラーターボで最高出力64PS/6000rpm、最大トルク9.6kgm/3500rpmと軽自動車自主規制のMAXパワーを絞り出すが、ボア×ストローク=64.0mm×68.2mmとストロークの方が長く、オフロードでよく使用する低速トルクに有利な設計と吸気VVTを組み合わせる。慣性モーメントの高いフライホイール採用などによって、低速域での走りやすさは素晴らしい。


コーナー入口付近でのヒール&トーによるシフトダウンは面白いように決まる。電子制御スロットルが増えてから、スロットルの遅開きによってコレができないマニュアル新車のどれだけ多いことか。もうこのエンジン音とダイレクトでレスポンスの良い走りだけで「ジムニー 5MT買ってよかった」と確信し、「今の時代によくぞ、このセッティングで発売してくれた!」と感激した。

「XC」のキネティックイエロー、シフォンアイボリーメタリック、ブリスクブルーメタリックには「ブラック2トーンルーフ」が設定されている。
「XC」のキネティックイエローのみ、ボンネットとAピラーをブラック塗装した「ブラックトップ2トーン(DHG)」も設定する。

丸いヘッドランプとスクエアなエクステリアデザインはとても新鮮。この車両はクラムシェルフードとAピラーがブラック塗装されており、コントラストが強烈でとても個性的。遊び心に溢れたこのカラーリングはキネティックイエローのみに設定されているが、ブラック2トーンルーフはキネティックイエロー、シフォンアイボリーメタリック、ブリスクブルーメタリックの3色に用意され、選択権があるのは「XC」グレードのみだ。

都内を冒険しているようなワクワク感と、MTの「自分で操っている感」が楽しい


ラダーフレームと3リンクリジットアクスル式サスペンションによる乗り心地はやはり、上質で快適だった。ラダーフレームとボディの間にラバーブッシュがあるのと、80扁平タイヤを選択しているため、衝撃や振動をうまく吸収してくれる。大きな段差でも突き上げなどなく、ホイールベースが2250mmとは思えないほど、落ち着いてしなやかな乗り心地だ。ボディ剛性の高さ、フレーム剛性の高さは軽自動車としてかなりの「オーバークオリティ感」があり、これこそがジムニーの最大の魅力だ。

軽自動車としては異例に長いボンネットフードはこのカラーリングだと更に低く、ルーフも低く、長く見える、オーバーハングをギリギリまで詰め、樹脂素材の質感を活かした前後バンパーがブラックなこともあり、大径タイヤ(大径ホイールではない!)は80扁平で分厚く、悪路走破性の高さを容易に連想できる。
タイヤは175/80R16のブリジストン製タイヤが装着されていた。静かで乗り心地もとてもよかった。現代の80扁平タイヤは侮れない!

これだけ骨格がしっかりした「プロ仕様」だから、わざわざ段差や凹みを探して、この足で踏み超えてみたくなるほどだ。新型ジムニーはタイヤで路面を踏みしめるかのような感触が楽しめる稀有なクルマだ。四角いボンネットを見下ろすようなドライビングポジションによって、視界は極めて良好で狭い道での車のすれ違いは容易だ。左後方の視界も四角いサイドウインドウによって良好。

垂直に立ったリヤゲートはいかにも荷物が積めそうだ。無骨なリヤスタイルも本格クロカン4駆らしさに溢れている。軽自動車の黄色いナンバープレートがこのカラーだと気にならない。
横開きのリヤゲートを開けるとスクエアで使い勝手が良さそうな空間。どんな荷物を積もうか、納車前なのに色々と妄想してワクワクする。

この視界の良さ、取り回しの良さは運転のストレスを減らしてくれる。街中でジムニーを足として使いたいユーザーにとって大きな魅力となる。

リサーキュレーティングボール&ナット式ステアリングはラック&ピニオン式よりもダルさはあるが、慣れれば少し早めにステアリングを切るだけで問題ない。むしろ穏やかなステアリング特性は長時間走行などでは好ましく思えるものだ。前後重量配分が50:50に近い縦置きエンジンのFRレイアウトを採用するため、FF車よりもステアリング切れ角が大きく取れるので、これだけの大径タイヤを履きながら、最小回転半径は4.8mと小さい。狭い道での切り返しやUターンが容易に出来るなど街中での取り回しがとてもしやすい。

ジムニー XC 5MTはスポーツカー顔負けのエンジンレスポンスと切れ味鋭いダイレクトなハンドリングが楽しめる。休日はアウトドア、オフロード走行などを楽しみに山に海にと出掛けられるのはもちろんだが、普段の街乗りの安全なスピードでも「スポーツ走行しているかような感覚」が手軽に楽しめるの。車内からの景色はどこかに冒険に出かける乗り物感覚。新型ジムニーは街乗りでもクルマから元気の源となるエネルギーをもらえるシティコミューターなのだ。

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著者プロフィール

出来利弘 近影

出来利弘

1969年千葉県出身だが、5歳から19歳まで大阪府で育つ。現在は神奈川県横浜市在住。自動車雑誌出版社でアル…