BMW118d ディーゼルの良さは健在。1タンク1000km以上の足の長さは魅力的

BMW118d Play Edition Joy+
BMWのエントリーモデルである1シリーズ。その118dに搭載されているのが、B47型2.0ℓ直4ディーゼルターボだ。世界的にはやや逆風が吹いているようにも見えるディーゼルだが、その魅力はまだまだ健在だ。

ロングドライブでこそ光るディーゼル

現行モデルからエンジン横置きのFWDモデルになった。ボディカラーはメルボルンレッド。

EV化の大きな波が押し寄せているとはいえ、ロングドライブに出るには充電施設や実走行距離に未だ不安が多い。かといってガソリン価格が高止まりしている状況下では、支出面での心配もある。
そこで、いま一度スポットを当ててみたのが経済性に優れたディーゼルユニットだ。

昭和時代ほどガソリンとの価格差は大きくないとはいえ、燃焼効率に優れたディーゼルの燃費性能は高く、給油時の負担は少ない。動力性能的にもトルキーで扱いやすく、街乗りはもちろん、ロングドライブにも適している。気がかりなことと言えば、音や振動レベルに関してだが、それもいまでは話題に上ることは少ない。

全長×全幅×全高:4335mm×1800mm×1465mm/ホイールベース:2670mm
最小回転半径:5.4m/トレッド:F1565mm/R1565mm/最低地上高:155mm
車両重量 1510kg/前軸軸重900kg/後軸軸重610kg

そんなディーゼルユニットを搭載し、走りの性能にも期待が持てるハッチモデル、BMW118dでロングドライブに出かけた。搭載されるユニットはB47型2.0ℓ4気筒で最高出力150ps/最大トルク350Nmのに8ATを組み合わせるFFモデルだ。車重1490kgのボディを走らせる。

街乗りではBMWらしい重めのステアリングと、路面からのズシリとくる硬めの乗り心地を持つ。エンジンは始動時こそディーゼル特有の金属音が外から聞こえてくるものの、室内においては尖った音は遮断され、冷間時以外は音圧も低い。アイドリングが落ちつけば、ディーゼルであることを忘れさせる。

形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ 型式:B47D20型 排気量:1995cc ボア×ストローク:84.0mm×90.0 mm 圧縮比:16.5 最高出力:150ps(110kW)/4000pm 最大トルク:350Nm/1750-2500rpm 燃料供給:DI 燃料:軽油 燃料タンク:50ℓ

発進時の力強さはBEVにも通じるものがある。トルクコンバーターや遊星ギヤを介してパワーを伝達することから振動と一瞬の間こそあれ、1000rpmをわずかに超えれば、即座に加速態勢に移る。大きく踏み込めばフロントタイヤはキュッと鳴くほどに力があり、実トルクの高さを実感。そのときだけフロント駆動であることも意識させる(前型1シリーズはFRだった)。

速度が上昇していけば、すぐにフラットな姿勢を保ち、ノイズもクリアとなって快適性はガソリン車と変わらず。エンジンや走行音は走りに比例して雑味を排した音が届き、BEVにはないドライブの高揚感と快適性を味わえる。

街中ではガソリン車と変わらぬ静粛性と実用トルクの太さが心強い。アクセル開度の小さな領域でも速度を調整するのがたやすいし、加速状態への移行もタイムラグなく行なえる。

なかでも低い回転でシフトアップしていっても加速感に衰えがなく、大きなトルクでありながらも変速ショックや加速の波が薄い。ライバル(VWゴルフ)とは異なりトルコンを使ったATのおかげで、この滑らかさはツインクラッチでは味わえない。

もっとも極低速域のレスポンスではスッと力の抜けるときがある。定常走行域からアクセルを戻し速度を戻そうとしたときに空走感が出て、ややもどかしかった。

BMWライブコックピットと呼ばれるメーターパネルは、ドライバーの眼前に10.25インチのデジタルメーター、ダッシュボードに10.25インチの液晶パネルを配置するもので、ふたつの画面で構成するあたりが現代風だ。

高速巡航域になると、もはや無敵だ。第2東名で100km/h・1500rpmくらいからの追い越し加速ではギヤをキープしたまま即座に加速態勢に移ることができる。ガソリン車であればキックダウンによる変速が必要なシーンなのに、350Nmという強力なトルクを最大限に発揮し加速体制を作り出す。

このあたり、変速させて一旦落ちてしまった過給を戻すことは避け、あえて負荷ををかけることでターボの過給によってトルクを絞り出している感じ。当然エンジンの回転は大きく上昇することなく、変速もないからボディは落ちついていて、快適。ATとディーゼルターボの絶妙なタッグが組まれていることがよく理解できた。

当然無駄がないから燃料消費も少なく加速時においてもリアル燃費がひと桁に落ちることは少なく常時20km/ℓ近くをキープ。第2東名の速い流れに合わせたり、渋滞のなかでの加減速を含めても大きく変わることはなかった。いかにトルクが強大で、無駄な回転上昇がないかを表した。

結果、市街地での渋滞を含めて18km/ℓ以上をマークし900km近く走行しても給油警告ランプが点灯することがなかった。
これならペースを意識することなく1000kmを超えるドライブも可能で、無給油で急ぎの移動をしたいユーザーには心強い。

トランスミッションは8速AT
1シリーズでもアクセルペダルはオルガン式

走行フィール面ではBMWのなかではコンパクトモデルに属するものの、街乗りで感じた落ち着き感は高速になるほど重厚さを増し、他のモデル同様に安定感を生む。FFでありながらドライブフィールに変わることがない点は、開発理念にブレがなくていい。価格的には国産上級モデルも競合してくるものの、欧州車ならではの走りの良さと、扱いやすさや経済性をみると、個人的にはこちらを選ぶ。

排気浄化用にAdBlue(尿素水)の補給などの手間やコストはかかるが、ディーゼルユニットの効率の良さは高速ロングドライブや高燃費で実証され、未だ整備が行き届かないBEV環境とは対照的。BMWもBEV化に大きく舵を切っているなかだけに消えていくモデルかもしれないが、日本市場においても環境性能的にもまだまだ生きる道が残されていることは確かだろう。

逆風のなかとはいえ、ロングドライブを終えて、いま一度ディーゼルユニットに注目してみたいと思った。

225/45R17サイズを履いていた。銘柄はハンコックventus S1 evo3
リヤサスペンションはマルチリンク式。ブレーキ:Fベンチレーテッドディスク/Rディスク
フロントサスペンションはストラット式
BMW118d Play Edition Joy+
全長×全幅×全高:4335mm×1800mm×1465mm
ホイールベース:2670mm
車重:1490kg
サスペンション:Fストラット式/Rマルチリンク式 
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
型式:B47D20型
排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0mm×90.0 mm
圧縮比:16.5
最高出力:150ps(110kW)/4000pm
最大トルク:350Nm/1750-2500rpm
燃料供給:DI
燃料:軽油
燃料タンク:50ℓ
トランスミッション:8速AT
燃費:WLTCモード 16.7km/ℓ
 市街地モード13.7km/ℓ
 郊外モード:16.1km/ℓ
 高速道路:19.1km/ℓ
車両本体価格:407万円
オプション価格115万5000円
メルボルンレッド8万円、iDriveナビパッケージ24万9000円、アドバンスドパッケージ28万5000円、プラスパッケージ41万1000円、ストレージパッケージ6万円、マルチスポークホイール7万円

アドバンストパッケージ
アダプティブLEDヘッドライト/BMWジェスチャーコントロール/ヘッドアップディスプレイ

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著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…