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パワーあふれるパフォーマンス 専用設計による剛性感も別格
それまで親しまれていた〝ヴィッツ〞の名を海外市場向けモデルに用いられてきたネーミングへと変更し、2020年2月から販売されているのが現行型のヤリス。一方、そのシリーズ中の一員という形態こそ採るものの、採用された多くのハードウェアはまったくの別ものと言える内容を備えたスポーツバージョンが、「世界中のモータースポーツに参戦するTOYOTA GAZOO Racingが極限で培った技術と情熱を惜しみなく注ぐスポーツカーブランド」と紹介される〝GR〞の名が冠された、GRヤリスだ。
エクステリア
全長×全幅が3995×1805mmで全高が1455mmというサイズは、オリジナルのヤリスの雰囲気を残しながらもフェンダー部分が大きく拡幅され、またリヤスポイラーへとスムーズに風を流すべくルーフラインが後方で大きく落ち込むなどした専用のデザイン。約200点のスポット溶接打点増し打ちが行なわれたり、カーボンファイバー複合樹脂を用いたルーフパネルを採用するなど、オリジナルのヤリスとは完全に異なる仕立てとなっている。
乗降性
通常のヤリスにも搭載される1.5lの自然吸気3気筒エンジンを10速シーケンシャルモードを備えたCVTと組み合わせた「RS」グレードを別にすると、GRヤリスの目玉アイテムのひとつとカウントできるのが、「排気干渉を嫌ってあえて3気筒を選んだ」と開発者が語るターボ付きエンジン。
シリンダーブロックはアルミダイキャスト製で、中空カムシャフトやセラミック・ボールベアリング・ターボを採用するなど、こちらもコンペティション・ユースを意識した専用の設計となっている。最高出力が272psで最大トルクは370Nmと、とても1.6lとは思えないデータを叩き出している。
インストルメントパネル
圧倒的に高い剛性感が味わえるボディにラバーバンド感など気にならないCVTを備える「RS」の走りのテイストもなかなか〝通好み〞だが、やはり圧巻なのはターボ付きエンジンを4WDシステムと組み合わせた「RZ」系グレード。サスペンションは硬派なセッティングだが、実はそれがあまり不快な印象につながらないのは、例の剛性感が際立つボディが振動を瞬時に減衰させてしまうゆえ。
居住性
「押さえるところはしっかり」という印象。着座位置はそれほど低くない。後席は膝まわりも足元もタイトで、日常的に大人が座る場所とするのはオススメできない。また、グリップなどつ かむ場所がないので峠道などで姿勢を保持するのにもちょっと苦労する。
日常使いでもやはり剛性感に富んで高い信頼感を抱くことができるブレーキのペダルタッチなどにも、このモデルの〝走り〞に対する意識の高さをイメージさせる。ワインディングロードへと差し掛かると、そこで実感するのはもはや無敵と言って良いスピード性能。無敵と言って良いスピード性能。
アクセルペダルを深く踏み込むと、3500rpmに達する付近からスペック通りのパワー感がさく裂。一方で、それはピーキーな特性というわけではなく、1300rpm程度の回転数をクリアしていれば、そこから徐々に速度を回復できるフレキシブルさも備えているのが街乗りではありがたい。
うれしい装備
月間登録台数 370台(21年11月22年4月平均値) 現行型発表 20年9月 WLTCモード燃費 18.2km/l※「RS」
ラゲッジルーム
単なるコンパクトカーとは一線を画する、随所に「このモデルだけのために構築された専用メカニズムを採用」という、現代では何とも稀有で贅沢な内容のスポーツモデルが、GRヤリスという存在だ。
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.142「2022-2023 コンパクトカーのすべて」の再構成です。
http://motorfan-newmodel.com/integration/142/