冬の運転、これだけは気をつけたい! トラブルの約40%は「バッテリー」(JAF救援回数/2022年1月調べ)

本格的なウインターシーズンに突入すると、クルマはバッテリーが上がったり、雪道でスタックしたり、冬ならではのトラブルが起きやすくなる。これらのリスクを少しでも減らすには、事前のチェックや準備が欠かせない。ここでは冬に起こりやすいクルマのトラブルのほか、クルマに常備しておきたいアイテムについて紹介しよう。
REPORT&PHOTO小原裕一郎(OHARA Yuichiro)

冬のトラブルNo.1はバッテリー上り

東京や大阪など太平洋側の都市部に住んでいると、冬になっても最低気温が氷点下になることは稀だし、雪も滅多に降ることはないので、冬のトラブル対策といっても、あまりピンとこないかもしれない。

しかし、ひとたび南岸低気圧が接近すると、太平洋側の都市部でも大雪に見舞われることがあるし、帰省やウインタースポーツなどで寒冷地へ行くこともあるだろう。

JAF(日本自動車連盟)が公表している「ロードサービス救援データ」を見てみると、2022年1月にもっとも多かったトラブルは過放電バッテリー(バッテリー上り)で、以下タイヤのパンク・バースト・エア不足、落輪・落ち込みなどが続いている。

というわけで、まずは冬に起こりやすいクルマのトラブルをピックアップし、これらの原因や対策について紹介していこう。

データは一般道と高速道路の件数を合算した数値。冬のトラブルの中でバッテリー上りの構成比は37.16%と圧倒的に高い。<出典:JAF>

●バッテリー上り

バッテリーは、低温になると比重が下がって性能が低下する傾向があり、例えば氷点下になる地域では、気温が25℃の状態と比べて性能が75%まで落ちるといわれている。さらに、バッテリーの寿命は通常2~5年といわれているので、劣化したバッテリーを寒冷地で使っていると、最悪の場合はバッテリーが上がってエンジンがかからなくなる。

バッテリートラブルについては、後日、別の記事で詳しく解説する予定だが、ひとまず冬になる前にバッテリーの健康チェックを行い、もし弱っていると感じたら思い切って新しいバッテリーに交換した方がよいだろう。

温度が低いとバッテリーの性能が低下するので、冬になる前のチェックは欠かせない。少なくとも電圧や比重のチェックをしておこう。

●タイヤのパンク・バースト・エア不足

タイヤ内の空気は気温が高いときは体積が膨張し、低い時は収縮するので、冬はタイヤの空気圧が低下しやすくなる。また、冬になるとスタッドレスタイヤに履き替えることもあるが、交換時にエアチェックを怠ると、当然ながらタイヤの空気圧が不足する。

この状態で走行しているとパンクやバーストを起こしかねないので、冬になる前の空気圧チェックはとても重要だ。とりわけ、使用と保管を何度も繰り返すスタッドレスタイヤの場合は、ゴムの劣化が起きやすいので、空気圧だけでなく、表面のビビ割れや摩耗にも注意が必要だ。

冬はタイヤの空気圧が低下しやすくなるので、チェックを怠るとパンクやバーストの原因になりかねない。ここも冬の定番チェックポイントだ。<出典:Pixabay>

●側溝などへの落輪や落ち込み

落輪や落ち込みも、冬に起こりやすいトラブルのひとつだ。例えば、雪が積もっているとセンターラインや路肩の位置がわかりづらくなるので、無意識に左に寄り過ぎたり、対向車を避けた拍子に誤って側溝へ落輪するケースもある。かつて筆者も、アイスバーンでステアリングのコントロールを失い、そのまま左前輪が側溝にハマったことがあった。

雪道やアイスバーンにはさまざまな落とし穴があるので、スタッドレスタイヤやチェーンを装着したうえで、十分速度を落としてセンターライン寄りを走り、急なハンドル操作やブレーキ操作を控えることが肝要              。万一、落輪や落ち込みをしてしまったら、JAFや加入している自動車保険のロードサービスへ救援要請をしよう。

雪道やアイスバーンでは若干センターライン寄りを走り、「急」がつく操作はしないのが鉄則だ。<出典:Pixabay>

●フロントガラス・窓ガラスの凍結や結露

寒い冬の朝はフロントガラスが凍結していることがあるが、これはガラスの表面温度が下がることで空気中の水分が凍って起こる現象。また、冬は暖房を効かせて車内を暖かくするが、こうすると車内外の気温差が生じてガラス部分に結露が起きやすくなる。

とりわけ、フロントガラスの凍結や結露は運転に支障が出るので、解氷スプレーやデフロスタ機能を駆使してクリアな視界を保つようにしよう。

フロントガラスの凍結は冬の風物詩。できればワイパーも降雪時や低温時に強い冬用に交換しておくことをオススメする。<出典:Pixabay>

●安全装置の動作不良

最近は事故を未然に防止する目的で、衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、車線逸脱抑制機能といった安全装置を装備したクルマが増えてきた。これらの装置はクルマの各部に取り付けられたセンサーやカメラで動作するわけだが、冬になるとフロントガラスは凍結や結露が起こるし、ボディは雪や霜が付着するので、センサーやカメラの機能が妨げられ、安全装置が正常に動作しないことがある。

これを防ぐには、いつもフロントガラスに凍結や結露がないか気を配り、車外のセンサーやカメラにも雪が付着していないかチェックするなど、アナログ的だが、マメな対応が必要になる。

センサーやカメラは安全装置の「目」に当たる部分なので、動作がおかしいなと思ったら、まずは雪や氷の付着がないかチェックしよう。<出典:Pixabay>

●エンジンオイルの硬化

エンジンオイルの粘度は、例えば「10W-30」という具合に記号で表示されているが、「10W」は低温側の粘度指数、「30」は高温側の粘度指数を表している。通常は指定された粘度のオイルで支障はないが、極寒地へ行くとオイルが硬化して流動性が損なわれるので、始動性が悪くなったり、バッテリーに過度な負担をかけることになる。

対策としては、低温側の粘度指数の低いタイプに換えたり、部分合成油や全合成油といった高品質のエンジンオイルを使うことでオイルの硬化を防ぐことができる。

寒冷地でもエンジンオイルが凍ることはないが、間違いなく硬化はするので、普段から高品質なオイルを入れておくと安心だ。

●クーラントやウォッシャー液の凍結

クーラント(冷却水)は別名、不凍液と呼ばれていて、通常の濃度は30%(凍結温度-15℃)、毎日氷点下となるような寒冷地では45%(凍結温度-28℃)程度が目安。当然ながら、通常の濃度のまま極寒地へ行くとクーラントが凍ってオーバーヒートを起こす可能性があるので、冬になる前に適量のクーラントを足して濃度を濃くしておけば安心だ。

また、寒冷地では泥はねの除去などで、ウォッシャー液を大量に消費することが多く、時には凍ってしまうこともある。これを防ぐには、寒冷地用(不凍タイプ)のウォッシャー液へ交換したうえで、定期的に量のチェックを行うようにする。

(左)クーラントのリザーバータンク、(右)ウォッシャー液のタンク。どちらも凍る可能性があるので、事前の対策と量のチェックを忘れずに!

冬に常備しておきたいアイテム

これまで述べてきたとおり、気温が低く、降雪も予想される冬は、クルマにさまざまなトラブルが起こる可能性がある。これらのトラブルを未然に防いだり、万一トラブルが起きたときに困らないようにするには、やはり事前の準備が大切。そこで冬のトラブル対策として、クルマに常備しておきたい基本的なアイテムをピックアップしておこう。

・ブースターケーブル・ジャンプスターター(バッテリー上り時に使用)
・タイヤチェーン(雪道やアイスバーンの走行時に使用)
・凍結防止シート(フロントガラスの凍結防止に使用)
・解氷スプレー(フロントガラスの凍結時に使用)
・スノーブラシ(クルマに積もった雪や氷の除去に使用)
・スタックヘルパー・けん引ロープ(スタック時に使用)
・手袋・長靴・スコップ(各種作業や雪かき時に使用)
・毛布・防寒具(寒さ対策に使用)
・飲み水・食料・使い捨てカイロ・携帯トイレ(風雪などで立往生時に使用)
ブースターケーブルは他人の助けが必要だが、写真のジャンプスターターならば自力でバッテリー上がりを解決できる。冬に限らずオールシーズンで活躍するアイテムだ。

これらに加え、風雪などによる立往生対策として、出発時に燃料を満タンにしておくことも大切。ここで紹介したことを参考に、厳しい冬を安心・安全に乗り越えよう。

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著者プロフィール

小原 裕一郎 近影

小原 裕一郎

メディアプランナー&ライター。メディア業界でテレビ視聴率調査、マーケティング(リアル&デジタル)、…