新型クラウンを○△×で判定してみた!○は乗降性。×はトランク開閉の操作性

大変革を迎えた新型クラウンクロスオーバーは、FF化と同時に、デザインの面でも先代の12代目「ゼロクラウン」とは比較にならないほどの変化遂げている。それではクラウンクロスオーバーの使い勝手の部分はどのように変わったのか、長短を○△×で判定してみよう。
TEXT:塚田勝弘 PHOTO:高橋 学、小林和久

グローバルモデルに変身した新型クラウンの長所短所を探ってみよう

車名こそクラウンの名が残ったものの、大変革を迎えた新型クラウンは「クロスオーバー」から日本デビューを飾った。さらに、「スポーツ」「セダン」「エステート」をラインナップし、グローバルモデルに変身。FF化と同時に、デザインの面でも過去の12代目「ゼロクラウン」とは比較にならないほどの大変革を遂げた。

「クロスオーバー RS」をメインとして、「G」系も含めたプレス向け試乗会が行われたのは箱根のホテル。全国旅行支援もあって平日でも多くの観光客が訪れていていたが、新型クラウンには、近寄る方や遠巻きに観る人も含めて多くの視線が集まっていたように感じられた。クルマ好きであってもそうでなくても、思わず振り返ってしまうそんな1台であるのは、間違いないだろう。デザインの良し悪し、好き嫌いはここでは論じないが、某ディーラー関係者に取材したところ、既存オーナーからの評価も概ね好評で、新しい顧客も呼び寄せているようだ。

さて、ここではデザインを除き、クラウン・クロスオーバーの長短について探っていきたい。

【新型クラウンのココが○】乗降性とスムーズなパワートレーン

サイドシルの張り出しが抑えられていて、フロア面との段差も少ないので乗降しやすい

ワイドな全幅を持つ高級車(とくに輸入車)に乗り降りすると、ワイドなサイドシル、そしてサイドシルと床面との段差などを実感することが多い。乗降性よりも衝突安全性能が重視されている証か。と納得するようにしている。グローバルモデルになった新型クラウンは、サイドシルは驚くほどワイドではなく、サイドシルと床面との段差も抑えられている。つまり、足の運びは良好だ。モックアップから乗降性を検討し、先代よりも前席の着座位置を80mm高めたことで、少し腰を上げ下げするだけで乗降できる。確かに、身長171cmの筆者にとっては、比較的楽に乗り降りできる感覚だった。

一方で、背高系の本格SUVと比べると、全高が低く、Aピラーから続くルーフラインもクーペのように弧を描いていることもあって、頭上まわりはそれなりという印象だ。長身の方だと、前席だけでなく、後席の乗り降り時も気を使いそう。なお、車内に乗り込むと違和感を覚えるのは、EVのようなフロアの上げ底感。ホンダeのように明確ではないものの、セダンとも背高系の本格SUVとも違う着座感覚で、FCVのMIRAIとも似ているかもしれない。

ルーフラインはクーペのように弧を描いているので、長身の方だと後席の乗り降り時に気を使いそうだ。

走りは、曲がりにくねった山道でもとにかく安定している。車速が上がっても路面をしたたかに捉えて放さない。21タイヤを履いているとは思えないほど、スムーズな乗り心地も得られるのは大きな美点だ。また、2.4Lターボ、2.5L NAエンジンともにスムーズなパワーデリバリーが得られるのもいい。パワートレーンのスムーズさもオーナーに走らせる喜びを与えてくれるだろう。

【新型クラウンのココが△】少しだけ大きくなったボディサイズ

グローバルモデル化で少しだけ大きくなったボディサイズ。全幅1840mmは決して大きい方ではないが狭い道では少し気になる。

ボディサイズは、全長4930×全幅1840×全高1540mm。サイズの拡大は、エクステリアデザインの見栄えにも大きく左右する。バンパーを張り出し、抑揚の効いた面にするには、大きい方が都合はいいはず。1840mmの全幅は、横幅1850mm制限のある駐車場への入庫に配慮したのだろう。同時に全高も1540mmに抑えることで、高さ制限1550mmの機械式立体駐車場などにも入庫できる。グローバルモデルであっても日本の道路や駐車場事情に十分に配慮されている。一方で、先代(全長4910×全幅1800×全高1455mm)までは1800mmの全幅を堅持し、狭い道でのすれ違いでも持て余さないサイズ感だった。先代の最小回転半径は、5.3m〜5.5m(4WDは5.7m)で、新型は5.4mとほとんど変わっていない。

ただし、取り回しの良し悪しは、前輪タイヤの接地面の中心からの距離である最小回転半径だけでなく、先述した狭い道でのすれ違いや視界、ウォールtoウォール、あるいはパワステの重さ(操作性)などでも実際のシーンでは変わってくるかもしれない。筆者は、とにかく道が狭い住宅街に住んでいて、最小回転半径の数値だけでなく、とくに全幅を意識させられることが多い。駐車のしやすさには十分配慮されているものの、先代までならギリギリ車庫に収まっていたケースでは新型を指名できないはずだ。

一方、最低地上高は先代の130mm〜135mmから新型クロスオーバーは、145mmと10mm高くなった。不整地や雪上などでも多少気を使わなくなっている。実際に段差のあるシーンでUターンする際も、下を擦る心配は先代よりも減ったように感じられた。なお、新型には、後輪操舵の「DRS(ダイナミックリヤステアリング)」が採用されていて、違和感の少ない操舵フィールを享受できる。箱根のホテルや山道では、低速域の取り回し性を実感できるシーンはあまりなかったが、住宅街などでどれだけ効果を発揮するか興味深い。

【新型クラウンのココが×】トランクの開閉とエンジン音

操作性でなかなか慣れなかったのが、トランクリッドオープナーの位置。手探りで探すのが難しく、屈むようにして視認しないと場所が分かりにくい。苦肉の策で位置が決まったそうだが、インパネ右下にもスイッチがあるとはいえ、良好な操作性とはいえないだろう。

走りの面で最も気になったのは、2.4Lターボ、2.5L NAともに急な上り坂や強め(深め)にアクセルペダルを踏み込んだ際に、エンジン音を含めた騒音が「クラウンとしては」大きめに感じられる点だ。同じエンジンを積む新型レクサスRXと比べてもノイズは大きめだ。

写真では分かりにくいが、トランクリッドオープナーの位置はマルで囲んだ部分。少し屈まないと見にくい場所にある。

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著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…