2023年こそ実現したい! 初めてのキャンピングカーはどのタイプを買うべきか? 【キャンピングカー基礎講座】

日本のキャンピングカー市場はここ数年右肩上がりで需要が拡大してきたが、2019年からは特にコロナ禍の影響もあって、広く一般化した感がある。個人的にこの現象を「キャンパー・モータリゼイション」と呼んでいるが、もはやキャンピングカーはかつてのような“特殊なクルマ”でなくなったことは確かだ。
TEXT:山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka)/PHOTO:Motor-Fan.jp

キャンピングカーに興味をもつ人は年々増えている

お手頃サイズのバンコンなら、キャンピング使用と普段使いを両立するのに便利だ。

キャンピングカーが注目されたのは、2011年の東日本大震災の後のことで、当時はシェルターやパーソナルスペースの確保として考えられた。その後、幾度かの台風災害もあったことから、未だに防災対策の一環として購入を考える人が多いようだ。

だが昨今の流れは、何と言っても「旅行の手段」として考える人が大半を占める。日本RV協会がまとめている「キャンピングカー白書」の統計によると、キャンピングカーを購入した人の約半数が、使用目的を「旅行」と答えているのだ。「キャンプ」と答えた人は次点で、キャンプ場よりも観光地や温泉に乗っていく人が多いのは意外だった。

最近は、キャンピングカーで宿泊できるのはオートキャンプ場だけではなく、日本RV協会が整備に尽力している「RVパーク」などもそのひとつになっている。RVパークは郊外だけでなく、都市部の観光地近くにも設置されており、そこに愛車を駐めて、観光スポットに公共交通などを使って行くというスタイルが一般化しつつある。食事は外食店で済ませ、入浴は日帰り温泉など利用。キャンピングカーは、寝泊まりするだけの“宿”なのである。

数は少ないものの、シトロエン・ベルランゴのような個性派ミニバンベースのキャンピングカーも存在する。

そんな旅のスタイルに憧れて、自分もキャンピングカーを購入しようと思っている人は少なくないだろう。しかし、ひと口にキャンピングカーと言っても、そのタイプはいろいろ。初めてキャンピングカーはどんなタイプを買えばいいのか、非常に悩むはずだ。

まずキャンピングカーには、「自走式」と「牽引式」がある。自走式はエンジンが付いているクルマがベースで、それにキャンピングカー装備が架装されている。牽引式はいわゆるトレーラーで、別に牽引するためのクルマが必要となる。

自走式は1台で移動できるが、クルマなのでメインテナンスが必要だ。車検代もそこそこかかる。また経年や走行距離の増加で、動産としての価値も目減りする。

一方のキャンピングトレーラーは、まず価格が安く、居住空間は自走式よりも広めになっている。運転席やエンジンがいらないからだ。基本的に車両重量750kg以下であれば牽引免許は不要で、車検代もほとんどかからない。

そこそこきれいに使っていれば、10年経っても、ほとんどリセールバリューが下がらないのも魅力のひとつと言える。旅先で、トレーラーヘッドとなる愛車だけで行動もできる。ただ、運転にはコツが必要で、日常で駐めておく場所を探さなければならない。

牽引役のトレーラーヘッドがあり、不使用時に止めておく場所を確保できるなら、キャンピングトレーラーという選択も。

日本では、キャブコン、バンコン、軽キャンが人気

日本では自走式が圧倒的に人気だが、「キャブ・コンバージョン(キャブコン)」「バン・コンバージョン(バンコン)」「トラックキャンパー(トラキャン)」「軽キャンパー(軽キャン)」あたりがスタンダードなタイプとなる。バスに架装した「バス・コンバージョン(バスコン)」や専用シャシーの上にゼロから造り上げる「フルコンバージョン(フルコン)」といったタイプもあるが、価格や免許の関係であまり一般的とは言えない。

この中で多くの人がチョイスするのが、キャブコン、バンコン、軽キャンのどれか。初めてとなると、「買って失敗したくない」「安価で済ませたい」という心理が働くのか、ファミリー以外はまず軽キャンに目を付ける。サイズが手頃で、価格は300万円以下。税金やガソリン代といったランニングコストも抑えられる。それでいて、就寝スペースは十分快適だ。

だが日頃から伝えるのだが、軽キャン、とくに商用バンベースのモデルは初心者には難しい部分がある。まず居住スペースだ。軽キャブコンなら、そこそこの広があるが、軽バンベースは非常に狭い。ル−フテントを付けたモデルでも、パーソナルスペースは1畳あるかないか。

室内空間はそれなりだが、より手軽にアプローチするなら軽キャンが選択肢に入るだろう。

晴天であれば、車外にチェアやテーブルを並べてくつろげるが、天候が悪ければ狭い車内にずっといなければならない。そういった状況に耐性がある人はいいが、“普通の生活”をしてきた人は、使うごとにその狭さに我慢できなくなってくるという話も聞く。

軽キャンは基本的にひとり、しかも釣りや登山、自転車といった趣味のベースとして使うような人にオススメだ。もしくは、長時間ずっと一緒にいても喧嘩しないご夫婦。災害時のシェルターにもいいだろう。

初心者は、まずバンコンをチェックしたらいいと思う。バンコンは、ハイエースやキャラバンベースが一般的だが、その中でも標準(ナロー)ボディ、標準ハイルーフ、ワイドハイルーフなどいろいろ。車体によって、税金や高速料金が違うからよく検討しよう。

ハイエンドモデルともなると、キャブコンにも負けない装備を持っており、シャワーやトイレルームさえある。だが、バンコン最大の美点は日常生活へのマッチング。ワイドハイルーフ車は少々大変だが、標準ボディ車ベースであれば、買い物や家族の送り迎えも苦にならない。

初心者が手を出しやすいのは、ワンサイズ下のタウンエースやNV200バネットをベースにしたモデル。扱いやすいサイズなわりには居住空間が広く、ルーフテント付きを選べば、ストレスのない空間を享受することができる。ファミリー4名でも、十分に楽しく旅行ができる。価格もリーズナブルだ。

ハイエースより小さいNV200をベースとしたバンコン。居住空間も広く、何より日常使用での運転のしやすさは大きなメリットだ。

日常使用も含めてバンコンは初心者にもおすすめ

キャブコンは日本独自のキャンピングカー文化と言ってもいいカテゴリーで、国内ではやはり頂点に位置している。大きさの差違はあるが、もっともポピュラーなのはトヨタ・カムロード(ダイナのキャンピングカーシャシー版)に、居住空間となるシェルを載せたモデルだ。ハイエースやタウンエースの後部をカットし、そこにシェルを載せたモデルもある。

ハイエースでも、ボディシェルをそのまま使わずにボディをカットしてキャビンを架装したモデルはキャブコンに分類される。バンコンのハイエースよりもより大きい空間が得られる。

装備がいろいろ付いており、モデルによっては5〜7人ほど寝られるクルマもあるが、居住空間として考えると外観から想像するより広くない。晴天時にはやはり、サイドオーニングと呼ばれる日除けを出して、その下でくつろぐ時間が多くなるだろう。また見た目の通り投影面積が大きいため、高速道路をスピーディに移動というわけにはいかない。機動力はバンコンに軍配が上がる。

その他、出先での駐車場の問題や日常生活の親和性の低さなどがネックになるが、小さな家を1軒持つような満足感は、他のカテゴリーにはないものだ。だが、やはり購入するには慎重を期する必要はあると思う。

カムロード(トラック)をベースとしたキャブコン。カムロードはキャブコンベース車としては一番人気のモデルだ。

モーターファンwebでも、バンコンの情報が圧倒的な人気であるように、やはり日本という土壌を考えると、バランスがよくて使いやすいのはバンコンと言えるだろう。リセールバリューも悪くないし、1ナンバー車でも8ナンバー登録をすれば、車検代、高速道路代を抑えることができる。つまり、初心者が手を出しても失敗しにくいカテゴリーなのだ。

ただし選択する際には、車内レイアウト、装備、オプションなどを十二分に検討することをオススメする。これで後から後悔する人が多いという話を、販売店でもよく耳にする。

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著者プロフィール

山崎友貴 近影

山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…