トヨタ・ヤリスクロスGR SPORT 200万円台でGRの世界観を味わえる 見た目だけはないその中身とは?

トヨタ・ヤリスクロス GR SPORT HYBRID(FF) 車両本体価格:275万4000円
TOYOTA GAZOO Racingは8月8日にヤリスクロス GR SPORTを発売している。GR SPORTは、モータースポーツを起点とした「もっといいクルマづくり」を通じて鍛え上げたスポーツカーシリーズ「GR」の世界観を、より多くのユーザーに提供することを目指したモデルだ。ヤリスクロス GR SPORTはハイブリッド車とガソリン車の設定があり、前者のメーカー希望小売価格(消費税込)は275万円、ガソリン車は236万7000円だ。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

まずは外観から

ラインアップの拡充するGR SPORT

GRの頂点に位置するGRヤリスやGRカローラと比べると、格段に手ごろな価格設定である。といって、外観をGR風に仕立てただけのクルマではない。“走り”に対するこだわりが強いモデルだ。開発を担当した田中義輝氏のコメントをまじえながら、ヤリスクロス GR SPORTのポイントを見ていこう。

エクステリアはワイド&ローを強調している。フロントはフォグランプベゼルを大型化。「両サイドを大きく見せて、どっしりした感じを表現したかった」と説明する。さらに、フロントグリルのパターンをGRの「G」をモチーフにした新意匠にした。見る角度によって光の反射の変化が味わえる仕掛けだ。このGモチーフのパターンはGR SPORTの最新モデルであるアクア GR SPORTにも受け継がれている。

リヤバンパーにも新しいGモチーフのグリルパターンを採用。さらに、ディフューザー風の処理を施してスポーティなイメージを付与している。

3本スポーク専用本革巻きステアリングを装着する。

インテリアでは、コーナリング時に姿勢が崩れないよう、ショルダーを高くしてホールド性を高めたスポーティなシートの採用が目立つ。表皮はエアヌバックと呼ぶスエード調の素材と合成皮革のコンビだ。インテリアに統一感を持たせるため、ドアトリムにもエアヌバックをあしらっているのがポイント。ヘッドレストにGRのロゴがあり、ひと目でスペシャルな仕立てとわかる仕掛けだ。

センタースポークにGRロゴが入ったステアリングホイールは、ディンプルが入ったグリップが特徴。ベース車のインテリアはシルバー系の加飾で統一されているが、GR SPORTはガンメタ系として輝度を落とし、運転に集中しやすい環境を整えた。

狙いは「キビキビとした走り」

フロア下とロワーバックにブレースを追加。
実際の床下。右が車両前方、左が後方。
ブレースはこの位置に付けられている。
リヤサスペンションはトーションビームアクスル式

走りに関しては、シャシー、ボディ、パワートレーンに手を入れた。フロントサスペンションはロワーアームのブッシュをGRヤリスと同じものに変更。剛性感を高めるためだ。ベース車のブッシュには乗り心地を良くするため「すぐり」と呼ぶ切れ目が入っているが(それにより、意図的に剛性を落としている)、GR SPORTは「キビキビとした走り」を狙い、GRヤリス用を選択した。

「ロワーアームにはY字形の補強パッチを追加しています。GRヤリスにも入れているのですが、下からパッチを当ててボルトで留め、剛性を上げています。これらの変更により、フロントはだいぶ剛性が上がっています。バランスをとるため、リヤのサスペンション部品の締結には溝付きワッシャーボルトを採用しました。溝付きにすることにより、締め上げたときにしっかり面あたりするようになります。こうした変更に加え、コイルスプリングやアブソーバー(ダンパー)に専用のチューニングをかけた結果、コーナリング時のロールがかなり抑えられています」

ボディではセンタートンネルの2ヵ所にブレースを追加。リヤバンパーの内側にロワーバックブレースを追加し、剛性アップを図っている。これら、シャシーやボディの変更により、ステアリングを切り込んだ際の応答が良くなる方向。電動パワーステアリングの特性もチューニング済みで、引き締まったシャシー&ボディとの調和を図っている。

タイヤは215/50R18サイズのファルケンFK510

「実はもうちょっと味つけしたいという思いがあり、タイヤを換えました。18インチサイズであることは(Z系と)変わりないのですが、ファルケンのFK510というスポーツタイヤを履いています。このタイヤの効果もあり、走りの質はかなり上がっていると思います」

ハイブリッド車のみになるが、パワートレーンの制御を変更しているのがポイントで、GR SPORTでは初のトライである。レスポンスの向上が狙いだ。

エンジンやモーターの最高出力/最大トルクはノーマルと同じ。過渡の特性が変えられている。
エンジン
形式:直列3気筒DOHC+THSⅡ
型式:M15A-FXE
排気量:1490cc
ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm
圧縮比:ー
最高出力:91ps(67kW)/5500pm
最大トルク:120Nm/3800-4800rpm
燃料供給:PFI
燃料:レギュラー
燃料タンク:36ℓ
フロントモーター:1NM型交流同期モーター
最高出力:80ps(59kW)
最大トルク:141Nm

「システム最高出力やモーターの最高出力は変えていません。過渡の特性を変えています。例えば、コーナーに入っていく際、ベース車はアクセルを抜くとちょっと空走感が出ます。ヤリスクロス GR SPORTでは、それが出ないようにしました。いっぽう、アクセルをオンにしたときは、オンにしたと同時にモーターの出力が出るような制御にしています」

パワートレーンの制御変更に合わせ、ドライブシャフトを変更。材質を変えることで剛性をおよそ1.5倍に高めたという。これにより、モーターの力がドライブシャフトのねじれに食われることなく、応答性高く路面に伝わる。この点、田中氏は「結構大きなポイント」と指摘。「走っていただくと『わかる』変更が多いですね」と付け加えた。

ヤリスクロス GR SPORTのハイブリッド車はベースのZに対して14.4万円高。ガソリン車はベースのZに対して13.5万円高である。施された変更の内容を考えれば、大バーゲンだ。

トヨタ・ヤリスクロス GR SPORT HYBRID(FF)
全長×全幅×全高:4185mm×1765mm×1580mm
ホイールベース:2560mm
車重:1180kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列3気筒DOHC+THSⅡ
型式:M15A-FXE
排気量:1490cc
ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm
圧縮比:ー
最高出力:91ps(67kW)/5500pm
最大トルク:120Nm/3800-4800rpm
燃料供給:PFI
燃料:レギュラー
燃料タンク:36ℓ
フロントモーター:1NM型交流同期モーター
最高出力:80ps(59kW)
最大トルク:141Nm
燃費:WLTCモード 25.0km/ℓ
 市街地モード25.9km/ℓ
 郊外モード:26.1km/ℓ
 高速道路:23.9km/ℓ
車両本体価格:275万4000円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…