ホンダZR-Vを○△×で判定してみた!○は加速感と操舵性。×は値段の割に小さく見えるボディ

ZR-VはヴェゼルとCR-Vの中間に位置するモデル。サイズ的にも日本の道路でストレスを抱えることなく、扱いやすい大きさに収まっているといえる、スタイリッシュな都市型SUVだ。それでは、ホンダ期待の新型SUVであるZR-Vの長短を○△×で判定してみよう。
TEXT:塚田勝弘 PHOTO:中野幸次、MotorFan編集部

ホンダの新型SUV「ZR-V」の長所と短所は?

ホンダZR-Vは、ヴェゼルとCR-V(22年12月終了)との中間に位置するモデルだ。賛否両論ありそうな縦型フロントグリルが話題になっているが、実は最大の魅力は走りの良さ。全長4570×全幅1840×全高1620mmというボディサイズは、全長4575×全幅1845×全高1690mmというマツダCX-5の全長、全幅と近い。

それでも実際のサイズよりも小さく見えるのは、やや低めの全高、内側に絞り込まれたようなフロントマスクなど、引き締められた台形フォルムにある。サイズ的にも日本の道路事情で、ストレスを抱えることなく扱いやすい大きさに収まっているといえるだろう。
それでは、ホンダ期待の新型SUVであるZR-Vの長短を探ってみよう。

【ZR-Vのココが○】爽快な加速感とハンドリングの良さ

ホンダZR-V:ボディサイズは長4570×全幅1840×全高1620mm、ホイールベースは2655mm。縦型フロントグリルは好みが分かれるポイントかもしれない。

筆者は、クローズドコースでのプロトタイプの試乗に加えて、半日ほど事前撮影会に同行し、走りや乗降性、居住性、積載性などをチェックする機会を得た。
残念ながら公道試乗会には出向けなかったが、クローズドコースでの走りでは、シビックシリーズに通じる爽快な乗り味を確認できた。仕上がりの良さを実感できるのは、「スポーツe:HEV」を謳う2モーターハイブリッド。電動駆動モデルらしく低速域からアクセルを踏んだ分だけ、スムーズに加速する。もちろん、ひと昔の日本車のように、アクセルを軽く踏んだだけなのに、車体が前に飛び出してしまうような感覚もない。極低速域でも扱いやすい。


さらにアクセルを踏んでいくと、加速シーンにおけるハイブリッドモード時には、エンジンは発電機に徹しているにもかかわらず、エンジンによる加速フィールのようにダイナミックに速度を上げていく。モーター駆動とエンジン駆動の良いとこ取りという印象だ。

試乗ステージは、多様なコーナーと勾配、起伏が続く、群馬サイクルスポーツセンターという日常ではあまり走らせないような厳しい状況下、しかも強めの雨が降っていたが、フットワークの良さも披露してくれた。コーナーでは一発で舵角が決まり、奥で回り込むようなコーナーでも自在にノーズを変えてくれる。操舵を何度も微修正することもなく、圧倒的なライントレース性の高さを堪能できる。さらに、路面に川のような流れができている大雨下でもスタビリティも高い。4WDの方がより安定したコーナリング姿勢を披露してくれた。

【ZR-Vのココが△】後席の突き上げ感とCVTのうなり音

ガソリンモデルは、1.5L直噴VTECターボにCVTという組み合わせで141ps/182Nmを発揮。

ハンドリングSUVともいえるZR-Vは、シビックと比べるとストローク感は強まるものの、後席では、前席よりも上下の突き上げ感や左右の揺すぶられる感じも伝わってくるのが惜しい。かつてのCR-Vよりも車両重量が50kg軽いこと、リヤサスペンションはCR-Vのマルチリンクをチューニングしているが、CR-Vよりも若干、ラフな乗り心地に感じられた。

また、スムーズなe:HEVもガソリンターボも急加速をすると、CVTにありがちな音の高まりが室内にまで侵入してくる。ステップ変速もあってラバーバンドフィールはかなり抑えられているものの、音が先行する感覚は、拭えていない。ターボ仕様は、より軽くてキビキビしている一方で、低中速域のトルク感、高速域のパンチ力ともにハイブリッド仕様と比べてしまうとやや力不足という印象。軽さを活かした、より素直なハンドリングなどの美点もあり、街乗り中心であれば1.5Lターボを指名する手もありそうだ。

【ZR-Vのココが×】車体が小さく見えるので迫力に欠ける

パッケージングを含めて特に不満はなく、優等生タイプの都市型SUVといえるだろう。引き締まった台形フォルムゆえにコンパクトに見えてしまうので迫力に欠ける。

ZR-Vの最低地上高は190mmで、シティ型SUVとしては平均的なクリアランスになっている。タフさを前面に押し出している日産エクストレイルは、4WDが185mm、2WDが200mm。雪国やキャンプなどの相棒としては、不足はないだろう。床面や座面は高すぎず、セダンライクな乗降性、シートに収まった時の感覚も普段使いでストレスなく扱えそう。後席を前倒しした際の段差も抑えられていて、ホンダが得意とする開口部の低さ(地上開口高)も良好な積載性に貢献している。つまり、パッケージングも含めて大きな短所は見当たらない。

あえて惜しいと思わせる点を上げると、引き締まった台形フォルムは、サイズ以上に小さく見えてしまう点。先代の5代目ステップワゴンの登場時(17年9月のマイナーチェンジ前)は、内側にギュッと絞り込まれたようなフロントマスクで、遠目で見ると弟分のフリードのように小さく見えてしまった。

筆者は、エクステリアデザイナーのインタビューで縦型フロントグリルも含めたデザインの狙いを伺い、腑に落ちた点もあったが、市場からの評価は気になるところ。冒頭で紹介したように、全長と全幅はマツダCX-5と似通っているのに、やや小さく見えてしまうのだ。そうなると、294万9100円〜411万9500円という価格帯は、一見すると割高に思えるかもしれないのも惜しい。

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著者プロフィール

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塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…