継承よりも革新を選んだネーミングの妙、初代サファリここに誕生す!

三代目もパトロール…? いや、“初代”サファリで行こう! | 今だからこそ、初代・日産サファリを語ろうじゃないか!! 第1回(後編)

日産サファリ K-VR160 H/T ハイルーフDX(1980年モデル)
MotorFan.jp編集部から「海外で日産アルマーダが好評を博しているので、ここらで初代サファリを語ってみませんか?」というお誘い。三代目パトロール、日本名サファリ……私が一番好きな四輪駆動車ではないか!! 一も二もなくお引き受けし、初期型の黄色いハードトップと過ごした日々を思い起こしながら、前編に引き続き日産サファリの概要をお話しすることにしましょう。

四駆道楽専門誌『キュリアス』編集室 赤木靖之

TEXT&PHOTO:赤木靖之(『キュリアス』編集室)/一部写真提供:日産自動車

(初出:2021年6月10日・一部改稿)

三代目パトロールの登場と日本向けの改称

さて、いよいよ三代目パトロール、すなわち初代サファリの登場だ。

先代、二代目パトロールは、個人ユーザーにとっての非現実性で他を圧倒していた。そこへ一足飛びのフルモデルチェンジである。三代目パトロール=初代サファリの日本での発売は少し遅れて1980年6月のことだった。

国内向けで「サファリ(=狩猟行)」と名を変えたのは、マイカーとして乗るなら「パトロール(=警ら)」では何とも塩梅が良くなかったからだろう。

そうなると対するトヨタの「ランドクルーザー(=陸の巡洋艦)」は何とも語感も良く、映画に例えるなら戦争モノや政治モノの大群像劇から、ダンディな海の男、加山雄三や石原裕次郎のスターものまでを網羅するかのような命名の妙を感じてしまう。

さて、石原裕次郎といえばド派手な劇中改造車である“『西部警察』サファリ”が、ミニカーやプラモデルになるほど世間的には有名だが、個人的には『北の国から』に登場する“中畑木材の社用車”の方が好きだった。スッピンの佇まいこそ160系の魅力であり、舞台背景に馴染んでいたからだ。

1980年6月発行「日産4WDシリーズ」の簡易版カタログから。サファリ登場と同時に、ダットサントラックに4WDが追加された。

ボディ刷新と並び、ディーゼル化こそ「売れる要素」だった。6気筒3.3ℓのSD33型エンジンは、3tトラックC80系や、3/4t四輪駆動車のキャリヤ4W73系で実績がある。さらに遡ればセドリック等の4気筒に行き着く、日産ディーゼルによる小型エンジンの礎となったシリーズである。

ホイールベースは2種類が設定された。車検証上の型式は長尺車(販売名「バン」、のちに「エクストラバン」)K-VRG160と、短尺車(販売名「ハードトップ」)K-VR160、ハードトップには標準ルーフとハイルーフがある。

型式の頭につく排ガス記号「K-」はさておき、「V」はバン、「R」がSD33型、「G」は長尺を示す。よってフレーム本体にはR160/RG160とだけ打刻される。登録時に「1文字足りない!」と慌ててはいけない。

銘板表記はチトややこしい。バンがVRG160とそのままなのに対し、オープンを基本とするハードトップはKR160、そのハイルーフ仕様はJR160とされ、海外ではこの型式で通っている。たとえばネット検索でKR160と打ち込むと世界中で活躍する様子にヒットし、ランクルに及ばなかった国内販売が不思議に思えてくる。

ガソリンのFG160も作られたが、一般向けのカタログに載らないキャブシャーシだった。

初代サファリは大雑把に「前期と後期」あるいは「丸目と角目」と分けて語られるが、モデル中途の改良もあるため、本稿では4期に分けて紹介する。まずは「第1期」モデルを1980年7月発行の本カタログでご覧いただこう。

カタログに使用されたものとは別カットの画像。左のモデル男性のポーズが違う。(提供:日産自動車)
ここに書かれたディーゼルエンジン/フルシンクロ/サイドタイプのパーキングブレーキ/広い視界/ディスクブレーキ/フリーランニングハブ などが160系で新たに加わった装備だ。コストの掛かったテーパーリーフやスタビライザーなどは先代から備えていた。完全閉断面の捻れないフレーム構造も伝統。
ダットサンブランドのドイツ版カタログから。エンジンはSD33型のほか、国内では設定のないL28型も。

簡素なDXと上級のADというグレードが設定されたのも、初めてのことだった。ADにはパワステとフリーハブが備わり、タコメーターが備わるべき位置に大きな時計がはめ込まれる。ハンドルやシフトノブの材質・意匠も異なり、バンパーはメッキ。しかし座席やフロアトリムはDXと同じビニール製だった。それでも十分にRVとして使える「四輪駆動車」と思われた。

■日産サファリ ハードトップ 標準ルーフDX K-VR160(1980年)主要諸元

寸法  全長4070mm×全幅1690mm×全高1845mm
ホイールベース  2350mm
トレッド 前/後  1405mm/1405mm
車両重量  1670kg
エンジン  SD33型 直列6気筒OHVディーゼル
総排気量  3246cc 
最高出力  95ps/3600rpm
最大トルク  22.0kg-m/1800rpm 
トランスミッション  4速MT 2速副変速機付き
サスペンション 前後ともリジッドアクスル・リーフスプリング
ブレーキ前  ベンチレーテッドディスク
ブレーキ後  デュオサーボ
タイヤサイズ  6.50-16(前6PR/後8PR) 
前期型図面
サファリのエンジンルームとSD33型ディーゼルエンジン。SD型エンジンは日産ディーゼル工業(現・UDトラックス)が日産向けに生産していたエンジン。直列6気筒のSD33型は最もパワフルで、日産だけでなく、アメリカのインターナショナル・ハーベスターのスカウト/スカウトⅡやジープのCJ-10/CJ-10Aにも供給された。

★以下、第2回へ続く。

(初出:2021年6月10日・一部改稿)

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