HKS 幻のF1 V12エンジンが東京オートサロンに降臨! 【東京オートサロン2023】

HKSの幻のF1エンジン 300E
東京オートサロンのHKSブースでは、同社の創業50周年を記念し、その軌跡と未来を体感できる「HKS 50th MUSEUM」を開催した。そこには、”幻のF1エンジン”が展示されていた。

HKSは1973年に長谷川浩之氏が静岡県富士宮市に創業した。それ以降の歴史は、レースやチューニング業界の成長とともにあった。

今回、「HKS 50th MUSEUM」の展示の目玉は”幻のF1エンジン”だった。F1ブーム全盛の1990年代初頭、F1に参戦していたのは、ホンダとヤマハ、無限。スバルもカルロ・キティ博士設計の水平対向12気筒エンジンを開発していた。それ以外にもいすゞもF1エンジン開発を進めていた。国産F1エンジン百花繚乱時代だったのだ。

HKSも、F1エンジンの開発を行なっていた。長谷川氏とエンジニアが究極のエンジンとして開発したのが、「300E」という型式のV12エンジンである。

300E開発当時のF1のレギュレーションで、排気量は3.5L、気筒数は最大12気筒、ターボ過給禁止というものだった。1990年のエンジン・コンストラクターは、フォード・コスワース/フェラーリ/ルノー/ジャッド/ホンダ/ランボルギーニ/スバル/ライフなど多彩な顔ぶれだった(ヤマハは1990年は参戦していない)。

HKSの幻のF1エンジン 300E

HKS 300E
エンジン形式:75度V型12気筒/5バルブ
エンジン重量:165kg
最高出力:650ps以上
排気量:3491cc
最高回転数:13500rpm
最大トルク:42.0kgm以上

300EのVバンク角は、V12の定石の60度ではなく75度。当時のホンダF1が搭載していたRA100E3.5ℓV10エンジンのバンク角は72度、1991年のヤマハOX99-11 V12エンジンのバンク角は70度だった。エンジンの重心を低く抑えたいということで75度としたのだろう。バルブトレーンは、1気筒あたり吸気3/排気2の5バルブを採用していた。

スペック表にある最高出力は650ps以上。RA100Eが680ps以上だから、650ps以上ならおそらく競争力があるスペックだったのだろう。

300Eの実走テストに使われたF3000用

300Eの傍らに展示してあった黒いフォーミュラマシンは、300Eの実走テストに使われたF3000用のローラT91/50改だ。横浜ゴムが用意したF1スペックのタイヤを履いて、富士スピードウェイで茂木和男選手のドライブでテストが行なわれた。

結果としては300Eは実際にF1を戦うことはなく”幻のF1エンジン”となったが、HKSの歴史には欠かせないエンジンのひとつだ。300Eを生で見られた貴重な機会だった。

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