「世界にひとつ、日本にソアラ」をキャッチコピーとして1986年にフルモデルチェンジして発売された2代目ソアラ。初代の型式GZ/MZ10に対してGZ/MZ20となったため、一般的に「20ソアラ」などと呼ばれる。2代目が発売された時期は日本がバブル景気に浮かれ始めたタイミングであり、マークⅡ三兄弟とともにハイソカーブームを牽引して実に売れた。2代目の累計は14万台を超えていて、高額車だったにも関わらず大ヒットしたのだ。
2代目ソアラは直列6気筒エンジン専用車であり、低グレードだとSOHCも存在したが販売の主力はDOHCおよび同ツインターボ。排気量では2リッターモデルが中心だったわけだが、最上級グレードに3リッターターボがラインナップされていたのは初代から変わらない。ただし、この時代は3ナンバー車に高額な税率が適用されていた。
例えば2リッターエンジンの5ナンバー車だと3万9500円だったものが、3ナンバーというだけで排気量を問わず8万1500円もの自動車税を納めなければならなくなる。そのため昭和の時代で3ナンバー車に乗るということは、それだけでもステイタスだったのだ。この税制が変わるのが平成元年(1989年)。3ナンバー車でも排気量により細かく税制が区切られ、一律8万円超という時代が終わる。つまり平成時代になると3ナンバー車が一気に増えていったのだ。
3ナンバー車の急増には自動車税だけでなく、新車購入時にかかる物品税が免除されたことが大きい。昭和の時代に3ナンバー車を買うと新車価格の23%が物品税として課税され、5ナンバーより割高だった。この制度が廃止されたことで3ナンバー車時代の幕開けを迎えるわけだが、この時代に売れた多くの国産3ナンバー車は税制で有利な2.5リッター以内の排気量に収まるものがほとんど。
2代目ソアラは税制面で不利な3リッターエンジンをラインナップし続け、1991年に3代目へフルモデルチェンジされるまで変わらなかった。そのため残存する多くの20ソアラが2リッターエンジン車なのは必然でもあるのだ。ちなみに3代目は2.5リッターと4リッターのラインナップでスタートしたことからも、税制への配慮が伺えた。
「昭和・平成クラシックカーフェスティバル」の会場には4台の20ソアラが並んで展示されていた。同じ機種が4台も並ぶわけだから今でも人気の高いモデルといえる。こうしたイベントで見かける20ソアラの多くが、やはり5ナンバーのツインターボ。ところが今回のイベントには3.0GTリミテッドが、フルノーマル状態で展示されていて驚いた。しかも外装を見るだけなら極上と表現していいレベルにある。
やはり新車当時からステイタス性の高いモデルなので丁寧に維持管理されてきたのだろう。また悪法とも呼べる13年以上が経過した車種への重課税により、古い3リッター車を維持するには5万8600円もの自動車税を毎年納付しなければならない。だから多くの3リッターモデルが廃車されたり輸出されていった。
3.0GTリミテッドが存在すること自体、レアケースなことがお分かりいただけよう。しかもフルノーマルで維持されているとなると、さらにレアなこと。実にこの時期の車種は補修部品がすでに製造廃止となっていることがほとんど。外装や内装パーツはいうに及ばず、なかには重要保安部品であるブレーキ周りのパーツさえ欠品となっているケースもある。
フルノーマルで維持したくても、故障や寿命により交換部品を探して断念するケースが数多くあるのだ。だからこの3.0GTリミテッドのオーナーである小島凌雅さんはとてもラッキーだったといえるだろう。
小島さんがこのソアラと巡り会えたのは、友人に紹介してもらったから。友人にはソアラに乗っている人が多く、独自のネットワークがあったからこそ見つけられたといえる。小島さんは現在50歳で、20ソアラが新車だった頃は多感な高校生として過ごされた。
免許取得年齢に近いこともありクルマを強く意識していただろうし、世の中全体がバブル景気に浮かれ高級車が次々に売れていた時代だからなおさら。高校生当時に一番憧れたクルマが20ソアラだったそうで、それ以来「いつかは」と思い続けてきたのだ。
小島さんとソアラの出会いは2年前のこと。現在の走行距離は9万キロ台で、そろそろ10万キロを迎えようかといったところ。走行距離が伸びていないためだろう、2年間所有してきたがトラブルや故障とは無縁に過ごすことができた。だから今後いかに現状を維持できるかがポイントになるはずだ。実際に電子制御式サスペンションである「TEMS」はすでに切り替えができない状態にある。もちろん純正部品はすでにないため、分解して基盤から修理しなければならないだろう。
手っ取り早く、かつ安価なのは社外品の車高調サスペンションなどに変えてしまうことだが、それでは意味がない。現状で切り替えができなくても、あえてノーマルのまま維持しているのは小島さんのこだわり。この日並んでいたほかのソアラはどれも小島さんのクルマより車高が低くなっていたからなおさら、このままの状態で末長く維持してもらいたいと思った。