スズキ・ジムニーのオフロード性能にたまげるの巻 ブレーキLSDトラクションコントロールにも驚く

スズキ・ジムニー オンロードはもちろん、オフロードが本当の活躍の場だ。
2018年のデビュー以来、ずっと納車待ち状態が続いているスズキ・ジムニー。比類なき走破性がウリのジムニー。普段使いではその実力を感じ取れないが、そういうシーンではやっぱりすごかった。

ジムニーを街中で1週間ほど試乗して、「かっこいいな」「でも、きっとオフロードにはいかないな」と思いつつも、「そういえば、オフロードでジムニーを試させてもらったことがあった!」と思い出した。

スズキ・ジムニー オフロードに行く予定はないけれど、気になる存在。普段使いは○?×?

相変わらずの人気を誇るスズキ・ジムニー。比類なき走破性が人気の源泉なのはわかっているけれど、…

舞台はジムニーの走破性能を体感できるようにコースが設定された富士ヶ嶺オフロードだった。筆者は、オフロードのドライブは、メディア向けの試乗コースで体験させていただく以外は、ほぼなし、というオフロード素人である。

試乗車は、ジムニーXCの5速MTだ。

最初に見せてもらったのは、現行型で初めて装備された「ブレーキLSDトラクションコントロール」だ。

ジムニーは、前輪と後輪を直結したパートタイム4WDであるのが、ウリ。その直結式パートタイム4WDも、左右輪どちらががぬかるみや岩場などで空転してしまったら、もう一方の車輪(接地している車輪)の駆動力も失われてしまう。それを避けるために、フロント/リヤデファレンシャルにLSD(リミテッドスリップデフ)を装着して駆動力を確保する方法はもちろんあるが、悪路でない場面での走りやメインテナンスに難があった。

現行型ジムニーは、「ブレーキLSDトラクションコントロール」を装備した。これは「4L」モードのときに作動するシステムで、ESC(電子制御ブレーキ:Electronic Stability Control=メーカーによってはESP、VDCなど呼び方が違う)を使って空転したタイヤにブレーキをかけることで、もう一方の写真の駆動力を確実に確保する仕掛けだ。しかも、エンジントルクを落とすことがないため、極めて高い脱出性能を実現する。

ブレーキLSDトラクションコントロールの仕組み。滑らかに違和感なく制御するための開発は難しかったという。その甲斐あって、特段スペシャルなテクニックなしに、高い脱出性能を手に入れることができた。

実際のデモを見た。

すごい! これ、すごい。

「先代では、こういう場面ではどうしていたんですか?」と聞くと、「先代では、こういう場面は脱出できませんでした」という答だった。
正確には、テクニシャンの4WD遣いだと、右足でアクセルとコントロールしながら左足でブレーキペダルを踏みながら脱出することできるそうだが、4WD素人には無理な相談だ。

これが現行型ジムニーでは、いともやすやすとできるのだ。

登れない! 擦っちゃう! 打っちゃう!も……

こりゃ、登れないよ!
こりゃ、お腹擦っちゃうよ!
こりゃ、顎を打っちゃうよ!

という場面でも、優れたアプローチアングル、デパーチャーアングル、制定地上高のおかげで、何ごともなく走破できてしまうのだ。

このアプローチアングル/デパーチャーアングル/最低地上高の高さが、走破性の源泉だ
伝統のリジッドアクスルのおかげで、大きな対地クリアランスを確保できる。さらに強靱になったフレーム&ボディのおかげで、車室内は平和そのもの。

このアプローチアングル/デパーチャーアングル/最低地上高の高さが、走破性の源泉だ
伝統のリジッドアクスルのおかげで、大きな対地クリアランスを確保できる。さらに強靱になったフレーム&ボディのおかげで、車室内は平和そのもの。

後ろからジムニーのアンダーボディを覗き込んだ写真。強靱なフレームがジムニーの走破性を支える。

急な下りでは「ヒルディセントコントロール」のおかげで、安心してステアリング操作に集中できるし、「ヒルホールドコントロール」がついているので、急な登り坂での発進も楽々だ。MTでブレーキからアクセルに踏み替える際も、最長2秒自動的にブレーキをかけてくれるから、慌てる必要がない。

オフロードでの試乗で印象的だったのは、その強靱なフレーム&ボディだ。外から見ていると、「うわー、これ、走りきれないよ。中に乗っていたら酔ってしまいそうだよ」という場面でも、車室内は、至って平和。自信を持ってドライブできるのだ。絶対的にコンパクトなボディサイズと相まって、「ジムニーなら、どこへでも行ける!」と思わせてくれる。

世界中で高い支持を受けるジムニー。ジムニーでなければ行かれないし、ジムニーでなければ戻ってこられない場所が世界にはたくさんある。現行型ジムニーは、その走破能力に磨きをかけた。4WD素人でも、「どこへでも行ける!」気にさせてくれるのは、おそらく、このクルマだけだろう。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…