ポルシェマニアが偶然手に入れた4気筒モデル

空冷+ミッドシップ、それでいて気兼ねなく乗れるポルシェ914

1974年式ポルシェ914。
ここ数年で中古車相場を高騰させている輸入車の筆頭といえば空冷ポルシェ。ナローや930ばかりでなく964や993などの相場も上がる一方にあるが、意外な盲点があった。ポルシェ356や944を所有するマニアが偶然手に入れた914がそれで、気兼ねなく乗れる空冷ポルシェとしてすっかりお気に入りになった。今となっては街中でも見かける機会が少なくなったレアな914を、改めて振り返ってみよう。

REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ポルシェ914ならミッドシップならではのトラクションを日常的に楽しめる

1974年式ポルシェ914。

群馬県太田市にあるBibari-AUTOは今井義正さんが個人的に楽しむプロショップではないガレージ。ここには日々、色とりどりの内外旧車が遊びにやってくる。

なかでもポルシェ356や914でやってくる今井博久さんは常連と言っていいほど足繁く通う。苗字を見て「もしや」と思い尋ねてみると、義正さんとは親子でなく甥っ子さんとのこと。どうやら幼い頃からクルマ好きな親族に囲まれ、英才教育を受けてこられたのだろう。博久さんの所有車を聞くとポルシェ356と同944、ヴィンテージ356スピードスターにフィアット X1/9を複数台維持されているという、筋金入りのマニアだった。

ミッドシップレイアウトを採用するため特徴的なリヤスタイル。

なのに、なぜ914を増車されたのだろう。話を聞けばFFになって1990年に復活したロータス・エランを手に入れたことがきっかけ。

叔父である義正さんに劣らず、自ら修理やメンテナンスを得意としている博久さんは、レストアベース状態で2代目エランを手に入れると、自力で路上復帰させる。このエランに乗っていると、ある時友人から「自分の914と交換してほしい」と言い出された。そもそもポルシェが大好きな博久さんだから、この申し出を快諾。2016年から乗り始めることになったのだ。

車体中央にマウントされた1.8リッター空冷水平対向4気筒エンジン。

同時に356や944も所有する博久さんだから、面白いクルマでないなら914は早々に手放されてもおかしくない。914は乗れば乗るほど魅力があるのだろう。魅力の最たる部分が車体中央に空冷水平対向4気筒エンジンを搭載するミッドシップレイアウトと言える。

911ほどパワーはないものの、フォルクスワーゲン製エンジンはトルク特性に優れミッドシップならではのトラクションを日常的に味わうことができる。博久さん自身「気兼ねなく乗れる」と太鼓判を押している。

アンサ製マフラーに変更している。

現在は気兼ねなく乗れる状態だが、これまでにエンジンやミッションのマウントがちぎれてしまい交換したり、エンジン本体もオーバーホールをされている。やはり古いクルマだけに手がかかるようだ。

リトラクタブルヘッドライトを採用していた。
テールランプそばに車名のエンブレムがある。

ポルシェ914は1969年のフランクフルトショーで発表された、VWとの共同開発による量産モデル。ポルシェとして初めてミッドシップレイアウトを採用しつつ、VWエンジンを流用することでコストを抑え新車価格を低く設定することに成功。エントリーモデルとして発売された意欲作だった。

当初エンジンは1.7リッターと911Tに採用されていた2リッター水平対向6気筒の2種類が用意されたが、6気筒の914/6は1972年に4気筒2リッターへ切り替えられ914/2.0になる。4気筒モデルも1973年に1.8リッターへ排気量が拡大された。

911用フックスタイプのホイールを履いている。

博久さんが手に入れたのは1974年式の後期モデルで、アメリカからの並行輸入車。それゆえかカスタムされた状態だったものを、博久さん自身の手によりオリジナルへと戻している途中だという。ただ、911用であるフックスタイプのホイールは914/6風で、見た人から「6発?」と聞かれることが多いため、あえてこのまま履き続けているそうだ。

オリジナル状態に戻しつつあるインテリア。
スピーカーが追加されたドアライナー。
社外品になっていたため純正を探して装着したシート。

現在もオリジナルへ戻す作業が完了していないとのことだが、室内は追加メーターやステレオ、スピーカーなどの相違があるくらい。程よくまとまっているように見受けられる。しかし、お宮参りにご両親が乗るポルシェ356で行った写真が残るほど筋金入りのポルシェマニアである博久さんだから、完璧を求めたくなるのだろう。

ちなみに博久さんは叔父の義正さんがクルマやバイクを修理する手伝いもしていて、日頃から工具を持つことが多いそうだ。

義正さんのカルマンギアを修理する仲間たちと。
マフラーの溶接修理まで自分で行ってしまう!

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…