国産屈指、美しきスポーツクーペの芳醇な味わい「レクサスLC」【最新スポーツカー 車種別解説 LEXUS LC】

上質な質感や肌触りなど高級感を醸し出すスタイリング、鋭い操縦性とエモーショナルなフットワークを両立させ、ラグジュアリースポーツクーペとして稀有な存在を確立している「レクサスLC」。ボディの随所にカーボンを使用し、操作時のみせり出す格納式ドアハンドルを装備するなど、ハイブランドらしいオーナーの心をくすぐるこだわりが散りばめられている。
REPORT:佐野弘宗(本文)/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:神村 聖 

速さ至上主義ではない独自のテイストで魅了

LCは日本唯一の存在といってもいいラグジュアリークーペだ。「価格4ケタ万円の2ドア車」という意味なら日産GT-RやホンダNSXも同様だが、その高価格の根拠を「速さ」に置いていないところが、GT-RやNSXとの大きな違いだ。

エクステリア

まるでモーターショーのコンセプトカーがそのまま公道へ放たれたかのような、意欲的なスタイリング。それにしても、LCの特徴のひとつになっているリヤフェンダーの張り出し感といったら何度接しても見惚れてしまう。
いまや世界的に見ても絶滅危惧種と言えるほど希少な存在となった大排気量自然吸気。ルーツをたどれば「ランクル200」や「レクサスLS」に用いられていたV8エンジンをベースに、ヤマハ発動機との共同開発でエモーショナルなスポーツユニットに仕立てている。
21インチという大径とともに注目すべきは、世界の最高峰スポーツモデルに選ばれる「パイロットスーパースポーツ」をセレクトしていること。レクサスが好むオレンジのキャリパーをコーディネート。
47インチのドライバーを入れた9インチのゴルフバッグがひとつ収まる。大型スーツケースを運ぶ際などはリヤシートを活用するのがいいだろう。トランクリッドのインナーはカーボン製だ。

LC最大の売りは、そのデザインや室内調度、乗り心地などから醸し出される質感、贅沢感、肌ざわり、高級感……である。歴史的に機能性やコスパで勝負してきた日本車としては、ある意味で最も苦手とするジャンルであり、純粋な高性能スポーツカーよりも挑戦的ともいえる。とはいえ、5.0ℓ V8もしくは3.5ℓ V6ハイブリッドを搭載するLCは、レクサス=トヨタでも最も速い部類に入る。基本骨格はLCで初登場したトヨタ自慢の縦置きレイアウトで、その後にLCやクラウンにも採用されたGA-Lプラットフォームだ。GT-RやNSXのような4WDは用意されず、全車が後輪駆動のFRとなる。

インテリア

運転席前はシンメトリーで運転に集中できるコクピット感を演出しつつ、一方で助手席前は水平基調で開放的な空間としている。透明パネルの奥にセンターディスプレイ(非タッチパネル)を置いた構造も独特だ。
LFAからはじまりレクサスのスポーツモデルの定番となった、大型リングが左右に動くTFT液晶メーターを採用。
シフトセレクターは電子制御式。
アクセルペダルは支点を下にしたいわゆる「オルガン式」だ。

発売後も毎年のように細かな改良の手を加えて、ニュースを提供し続けるのはレクサスのような高級車ブランドのお約束であり、LCも例外ではない。当初はクーペのみでスタートしたLCだが、発売約3年後の2020年6月にコンバーチブルが追加されている。そのコンバーチブルは割り切ったソフトトップであることも逆に贅沢。さらに、狭いながらも後席が残された四座オープンである点も貴重である。

コンバーチブルならではのV8サウンドの醍醐味

発売から5年以上、外観に目立ったテコ入れも施されていないのに、いまだにひと目でハッとさせる存在感は大したものだ。猛烈なウェッジシェイプとスモールキャビンという基本プロポーションに加えて、塗装やパネル合わせ、加飾類の仕上げ品質がすこぶる高いからだろう。コンバーチブル(=コンバチ)も開発初期段階から織り込み済みだったそうで、LCのスタイリングを崩しておらず、小さくまとまったソフトトップはクローズ時の姿もいい。スペースの問題からかパワートレインはV8となるが、今や世界的にも希少な自然吸気V8の「生音」を特等席で聴けるのが醍醐味だ。

うれしい装備

リングを動かして回転計を中央にしつつ、走行モードを「Sport S+」にすると色が鮮やかになってレーシーな雰囲気が一気に高まる。 
ドライブモード切り替えダイヤルはメーターパネル左で操作性良好。
ドアハンドルは操作時のみせり出す格納式でスマート。
ルーフをはじめボディ各部にカーボンを採用。サイドシルにもそれを感じさせる演出を施す。

LCを含むGA-Lプラットフォーム車は、乗り心地より鋭い操縦性が特徴だ。LCも毎年のフットワーク改良で乗り心地は少しずつ改善しているが、欧州の同セグメント車と比較すると完璧とはいいがたい。かわりに鋭く正確な操縦性には発売当初から定評があり、スポーツカー的にみれば魅力は高い。

燃費や静粛性はハイブリッドの「LC500h」に分があるが、よりパワフルなのはV8の「LC500」である。LCで操縦性とフラットな乗り心地の両立をご所望なら、四輪操舵を含む「LDH=レクサスダイナミックハンドリング」や格納式アクティブリヤウイングが専用装備される「Sパッケージ」をフンパツすることをお勧めする。コンバチに同パッケージがないのは残念だが・・・。

Country         Japan
Debut           2017年3月(一部改良:21年9月)
車両本体価格    1327万円~1500万円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.143「2022-2023 スポーツカーのすべて」の再構成です。

http://motorfan-newmodel.com/integration/143/

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