新型カングーは“ロードバイク専用運搬車”なのか! スポーツ自転車積載チャレンジ:第9回 ルノー・カングー編】

自転車好きジャーナリストの安藤眞が、さまざまなクルマにあの手この手で「愛車」を載せて積載性をチェックする「スポーツ自転車積載チャレンジ!」 第9回目は、筆者の愛車カングー2の新型モデルである「カングー3」を取り上げる。全国の自転車愛好家の皆さん、ぜひ参考にしてください。
REPORT:安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)

ルノー・カングー クレアティフ(ガソリン)

全長4490mm 全幅1860mm 全高1810mm 車両価格3,950,000円

新型カングーは、旧型比で全長が210mmほど伸びた。全幅は+30mm。全高は旧型と同寸である。写真はクレアティフだが、カラードバンパーのインテンスも価格は同じ。

カングーは思いのほか全長が短いのが難点ではあるのだが

現在の僕の愛車は、2014年に手に入れたカングー2。選んだ理由は「ロードバイクが丸ごと載せられるから」だ。厳密には長さが少々足りず、ちょっと斜めにしてBピラーと前席の間に車輪を差し込む必要があるのだが、固定は2列目シートのストライカーから簡単にできるので気に入っていた。

とはいえ、「あと50mmラゲッジが長ければ、まっすぐ載せられるんだけどなぁ」と、ずっと思っていたのもまた事実。そんなところに登場したのが、全長が210mm長くなったカングー3。これはチェックするしかないでしょ!

というわけで載せてみたら、まさに思惑通り。僕のシートスライド位置(最後端から9ノッチ)で、僕のロードバイクがピッタリ積めた! しかも旧型同様、後席背もたれのストライカーが、うまい具合にロープフックになる。ここだけで留めてもいいし、床についているロープフックと併用してもいいし、なにしろ固定は抜群にしやすい。もはや“ロードバイク専用運搬車”と言っても過言ではない。

運転席を身長181cmある僕のドライビングポジションに合わせて、僕のロードバイクがピッタリ収まった(従来型では、車輪をBピラーと背もたれの隙間に押し込む必要があった)。

これだけ簡単に積めてしまうのだから、ほかの方法は試す必要はないかと思われたけど、実はちょっとやってみたいことがあった。それは“後輪を外さずに後席に横向きに積む”ということだ。

自転車の固定も非常に楽。倒した後席背もたれのストライカーが、うまい具合にロープフックとして使える。ハンドルとサドルを壁側に寄りかけるようにすれば、横から引っ張るだけでも倒れなくなる。

我が家では、普段は後席にはペット用の大きなシートが被せてあるし、トノボードも付けたまま使用している。この状態からロードバイクを積めるようにするには、ペットシーツを剥がしてトノボードを外し、トノボードの置き場所に悩んでから、ラゲッジに積みっぱなしになっているかみさんの荷物を整理しなければならず、正直けっこう面倒臭い。だから最近は、前後輪を外して自転車を倒立させ、リヤシートに横向きに載せることのほうが多くなっていた。

7:3分割の“3”側を倒せば積めるので、後席は広く使うことができる。“7”側を倒せば、大人3名+ロードバイク3台も十分、載りそうだ。

今回も撮影場所までそうやって運んできたのだけれど、積み込む際に左右にある余裕に気づき、「ひょっとして後輪は外さなくてもイケるのでは?」と思って試してみたら、できちゃったのである。後輪を外さなければチェーンの処理はいらないから、手も汚れない。

旧型でできるのだから、30mmワイドになった新型で、できないはずはないわけで、やってみたら案の定、余裕を持って収まった。スライドドアだから、積み降ろしの作業もやりやすいし、固定はヘッドレストのステーから簡単にできる。これならクルマ側は何もいじることなく、自転車は前輪を外すだけで良いから、手数は最小で済むのだった。

「後席に横向きに積むには、前後輪とも外さないと無理」という先入観があったのだが、自分のクルマに積む際に、後輪付きでも入りそうな余裕があることに気づいた。旧型で入るなら、全幅が30mm広がった新型に入らないわけはない。固定もヘッドレストから簡単にできる。シートは何かを敷いて養生するか、自転車を逆立ちさせたほうが良さそうだ。

「それならラゲッジにも横向きに積めるのでは?」と思うかもしれないが、残念ながら、それはできない。ラゲッジはホイールハウスの内側を基準に壁になっており、幅方向は1200mmしかないので、前後輪とも外さないと入らないのだ。

「ラゲッジにも横向きに積めるのでは?」と試してみたが、これは無理。ラゲッジのサイドトリムがホイールハウス内幅に合わせてあるので、幅は上のほうまで約1200mmしかなく、後輪が付いていると1510mmある僕の自転車は入らない。ただし後輪まで外せば1115mmになるので、奥行きが許す限り重ねて積める。

ただし見方を変えれば、前後輪さえ外せば横向きにどんどん重ねて積んでいける。実際に試していないので確かなことは言えないが、3台は積めるんじゃないだろうか。つまり、ロードバイクを3台積んで、後席も広々使えるということ。後席の半分を使えば、ウェアやヘルメットはもちろん、アップ用の3本ローラーもひとつぐらい積めそうだ。

積載自転車の寸法図

■第1形態 完成車状態 長さ1680mm 高さ1000mm 幅445mm

車載時に最大のネックとなるのが、サドルの高さ。全長はフレームサイズが変わってもそれほど大きく変化しないのがロードバイクの特徴。身長150cmぐらいのライダーのサイズでも、短くなるのは40mm程度だ。

■第2形態 前輪を外してホルダーに固定 長さ1510mm 高さ965mm 幅445mm

前輪を外せば全長は170mm短くなるが、サドルの高さは35mmしか低くならない。サドルを外せば高さは760mmまで下がるのだが、ロードはミリ単位でセッティングを出すし、真直度を合わせるのも面倒なので、サドルはなるべく触りたくない。

■第3形態 前後輪を外し、後輪はリヤエンドサポートで保持 長さ1230mm 高さ880mm 幅445mm

前後輪を外せば全長は450mm短くなるが、高さを下げるのは前ギヤ(46t)が限界を決めるので、120mmしか低くならない。サドルを外すとハンドルステムがいちばん高くなり、710mmとなるため、車載可能なモデルは増えそう。

■第4形態 前後輪外して倒立 長さ1115mm 高さ870mm 幅445mm

このサイズなら、セダンのリヤシートにも積めてしまう。大きめのセダンなら、トランクにも入れることができるだろう。実際、僕の仲間は、ランエボやアテンザ、フィアット500にこうして積んでやってくる。自転車乗りは、運転が楽しいクルマ好きが多いのだ。

著者と自転車のプロフィール

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メカニズムを得意とするジャーナリストの安藤 眞氏は、40年以上も自転車を趣味とし、カングーに愛車を積んでサイクリングを楽しんでいる。身長181cm。フレームを購入して自分で組み上げた写真のロードバイクはサドル高が1mあるから、この自転車が載るクルマなら、アナタの自転車も積載できる可能性が高いはず。


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ブリヂストンサイクルのNEO-COTというフレームを購入して、自分で組み上げた。92年発売のスチール製(CrMo鋼)だが、当時としては画期的なもので、ハイドロフォーミング製法で接合部の形状が最適化されている。それを見た僕は「スチールフレームの最高到達点」と直感して即購入。部品を交換しながら30年間、乗り続けている。その後、アルミフレームやカーボンフレームに押され、2021年を最後に絶版となってしまった。ホイール径は700C。


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著者プロフィール

安藤 眞 近影

安藤 眞

大学卒業後、国産自動車メーカーのシャシー設計部門に勤務。英国スポーツカーメーカーとの共同プロジェク…