新型ルノー・カングー「高級車じゃないか!」日本仕様はどれもこれも、日本のユーザーの好みに合った仕様となっている

新型ルノー・カングー クレアティフ(ディーゼル) 車両価格:419万円
日本で高い人気(熱狂的な支持)をキープするルノー・カングー。そのカングーが14年ぶりにモデルチェンジを受けた。ガソリンとディーゼルのふたつのエンジンをラインアップする新型カングー。乗り味は果たしてどう進化したのか?
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

プロ仕様のツールを日常づかいしている感覚は健在

全長×全幅×全高:4490mm×1860mm×1810mmホイールベース:2715mm
ダブルバックドア&両側スライドドアをもつ

ルノー・カングー、なんと14年ぶりのモデルチェンジである。新型は3代目と聞いて「まだ3代目?」と思ったが、初代と2代目がそれぞれマイナーチェンジして前記型と後期型に分類できるためで、新型は5世代目と勘違いしがちだ。プラットフォームを基準に数えれば確かに3世代目である。初代カングーと同じ1997年にデビューしたトヨタ・プリウスの新型が5代目なのだから、カングーがいかに長いインターバルで世代交代しているのか、わかろうというものだ。

エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ エンジン型式:K9K型 排気量:1460cc ボア×ストローク:76.0mm×92.8mm
最高出力:116ps(85kW)/3750rpm 最大トルク:270Nm/1750pm 過給機:ターボチャージャー 燃料供給:コモンレール式内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:軽油 燃料タンク容量:54ℓ トランスミッション:7速DCT
ガソリンはエンジン形式:直列4気筒DOHCターボ エンジン型式:H5H型 排気量:1333cc ボア×ストローク:72.2mm×81.4mm 最高出力:131ps(96kW)/5000rpm 最大トルク:240Nm/1600pm 過給機:ターボチャージャー 燃料供給:PFI 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:54ℓ

最新のカングーは2種類のエンジンを用意する。1.3L直列4気筒ターボエンジンと、1.5L直列4気筒ディーゼルエンジンだ。前者は98kW(131ps)/5000rpmの最高出力と240Nm/1600rpmの最大トルクを発生。後者は85kW(116ps)/3750rpmの最高出力と270Nm/1750rpmの最大トルクを発生する。

どちらも、7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション、ルノーの呼称ではEDC)を組み合わせる。先代カングーは乾式多板クラッチを備えた6速だったが、新型は湿式多板クラッチの7速になった。メカニズム面での進化点のひとつだ。

ボディカラーはジョン・アグリュム

千葉県内にあるキャンプ場を起点に一般道と高速道路を走った。最初に乗ったのは、ディーゼル車である。新型カングーのグレードは3つあり、ボディ同色バンパーを備えたインテンスとブラックバンパー仕様のクレアティフ、それにエントリーグレードのゼン(受注生産)だ。インテンスとクレアティフに価格差はなく、パワートレーンの違いで価格差を設けている。ガソリン車は395万円、ディーゼル車は419万円(どちらも税込)だ。

INTENS(インテンス):ガソリン395万円/ディーゼル419万円
CREATIF(クレアティフ):ガソリン395万円/ディーゼル419万円
ZEN(ゼン):ガソリン384万円
SPECIAL EDITION :ガソリン400万5000円/ディーゼル424万5000円

試乗車はクレアティフ(すなわちブラックバンパー仕様)のディーゼル車だった。ボディカラーはジョン・アグリュムで、見てのとおりイエローである。もっともカングーらしいカングーといえる仕様ではなかろうか。ブラックバンパー仕様、かつブラックサイドモールにハーフキャップのスチールホイールの装着は、本国の乗用車には設定がないという。わざわざ日本仕様のために設けた仕様だ。

カングー=商用車のイメージが強いフランス本国の人たちにすれば、「なぜわざわざ商用車に寄せる?」と疑問に思うのだそうだ。ジョン・アグリュムにしてもそうで、本国仕様には設定がない。さらにいうと、日本にやってくるカングーはすべてダブルバックドアを備える。我々にしてみればこれぞカングーだが、やはり本国の乗用車には設定がなく、ルーフ側にヒンジを持つ1枚もののバックドアが標準だ。日本仕様のカングーはどれもこれも、日本のユーザーの好みに合った仕様となっている。そもそも、右ハンドルの乗用車は日本仕様だけの設定だ。

8インチマルチメディアEASY LINKはApple CarPlay、Android Auto対応

「高級車じゃないか」というのが、新型カングーを運転してみての率直な印象だった。乗り味がやさしい。動きに一切、がさつさがない。ステアリングを切り込んだ際の感触がしっとりしている。反力は軽からず、重からずで、ステアリングのひと切り、ひと切りが実に気持ちいい。

脚の動きはしなやかだ。ときおり強いハーシュを感じる瞬間はあるが、総じて穏やかな動きに終始する。エンジンとトランスミッションの接続と切り離しを行なうクラッチが乾式から湿式に変わった恩恵もあるだろうが、制御も洗練されているに違いない。発進時のクラッチのつなぎはなめらかで、DCTにありがちなギクシャクした動きは一切見せない。加速時は上の段に切り替わったことをインフォメーションとしてコツンと乗り手に伝え、リズミカルにシフトアップしていく。シフトアップした感が感じられることで、気分が盛り上がる。

タイヤサイズは205/60R16。コンチネンタルのEcoContact6を履く
リヤサスペンションはトーションビームアクスル方式。
フロントはマクファーソンストラット式。ブレーキは前後ともにベンチレーテッドディスクだ。

ディーゼルエンジンに特有のガラガラ音は耳に届くものの、鼓膜に突き刺さるような音質ではなく、遠くで誰かがハミングしているような耳あたりのいい音質にチューニングされている。これも、「高級車じゃないか」と感じたゆえんだ。大量の荷物を積み込める実力を備えているのに空荷かつ1名乗車だったので当然かもしれないが、速度域や走行シーン問わず、力不足を感じるシチュエーションには遭遇しなかった。

ガソリンエンジンとの違いは耳に届くエンジン音の音質の違いくらいだ。イニシャルコスト(ディーゼル>ガソリン)とランニングコスト(ディーゼル<ガソリン)のバランスや、好みで選択すればいいだろう。

新型カングーが「高級車」と感じた理由は、このクルマの出自が商用車(LCV:Light Commercial Vehicle)にあるから、と理解するのが正しそうだ。耐久性を担保するためのテストは乗用車の数倍におよぶ。新車の段階でガタピシさせるわけがない。商用車版の最大積載量は先代の850kgから新型は1000kgに増やしたという。フランス本国では、荷物を満載した商用車版のカングーが、制限速度が90km/hに設定された、フラットとは必ずしも言えない一般道を遠慮会釈なく走り回る。配送に使うカングーは、一日に何回もドアを開け閉めする。

そういうクルマをベースに、乗用車版を仕立てている。プロ仕様のツールを日常づかいしているようなものだ。だから、乗っていて頼もしさを感じるのだし、懐の深い動きが「高級」という印象に結びつくのだろう。

ところで、先代でも一定の支持(いや、熱狂的な支持?)を集めたMT仕様、本国にリクエストを出しているという。10年は続くはずのライフのどこかで、日本にやってくるに違いない。

カングーの世界観は健在。アウトドアにもよく似合う。
ルノー・カングー クレアティフ(ディーゼル)
全長×全幅×全高:4490mm×1860mm×1810mm
ホイールベース:2715mm
車重:1650kg
サスペンション:Fマクファーソン式 Rトーションビームアクスル方式式
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
エンジン型式:K9K型
排気量:1460cc
ボア×ストローク:76.0mm×92.8mm
最高出力:116ps(85kW)/3750rpm
最大トルク:270Nm/1750pm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:コモンレール式筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:軽油
燃料タンク容量:54ℓ
トランスミッション:7速DCT

WLTCモード燃費:17.3km/ℓ
 市街地モード 12.9km/ℓ
 郊外モード 17.7km/ℓ
 高速道路モード 19.9km/ℓ
車両価格:419万円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…