Tesla Model Y L

テスラ最長の航続距離788km

現在テスラがグローバルで販売するモデルは、コンパクトサルーンの「モデル3」そしてコンパクトSUVの「モデルY」が90%以上を占めるという。一世風靡した感のある「モデルS」も「モデルX」も昨年3月に日本における販売を終了しているように終了フェーズに入っているためだ。そんな現状の売れ筋ラインナップに追加されたのが今回試乗した「モデルY L」である。モデルY L最大の特徴は、やはり3列6名乗車というパッケージングにある。その車名からも想像できるように、モデルYの全長を180mm、ホイールベースを150mm延長し、同時に全高も45mm高めたことで、ベース車の実用性をさらに拡張したと主張している。

シートは全3列にシートヒーターを備え、1〜2列目にはベンチレーションまで備えるなど高い快適性を備える。荷室は2列目を折りたためば最大でモデルYよりも約400L多い2539Lという途轍も無い容量を誇る。6名のフル乗車時でも28インチ(預け入れサイズ)と20インチ(機内持ち込みサイズ)スーツケースを積める荷室容量を確保すると主張し、フランクにも117L納められるというからファミリーカーとしての機能性はかなり高いと言える。

驚くべきはそのサイズと実用性を持ちつつも788kmを謳う航続距離(WLTC)で、短時間の試乗ではその手応えを得られなかったが、これはベースとなる「モデルY ロングレンジ AWD」の682kmより100km以上も長い。関係者によればバッテリー容量は約80kWh級(テスラのバッテリー電力量は軒並み非公表)とされるが、車検証重量2090kg(前1000kg、後1090kg)とこのサイズのEVにしては軽量なこともあって、1kWhあたり9〜10km走ることになる。ちなみに全長が120mm短い4870mmの「メルセデス・ベンツ EQE 350 SUV」(今年生産終了)は2630kgである

センターディスプレイが車両操作の主要手段

“ほぼ”初見の新型テスラは試乗で大いに戸惑った。実を言うとテスラの新型車に乗るのは2016年にデビューした「モデルX」以来10年ぶりで、正直言って驚きの連続だった。

まず物理的なセレクタレバーは存在せず、ギアポジション(P-R-N-D)の切り替えは、16インチセンターディスプレイ右上のアイコンで行う。ミラーやステアリングの調整も画面内の車両メニューに集約される。よってダッシュボードは極限まで簡素化され、足元やペダル周辺の空間は広い。従来のクルマの作法で探すと、基本操作すら一瞬戸惑う。それ以外にもセンターディスプレイでは様々な設定が可能で、オーディオ、ナビゲーションだけでなく、エアコンまでも組み込まれる。

センターディスプレイが車両操作の主要手段と考えると、やや不安だ。モニターがブラックアウトしたらどうなるのか……は聞かなかったが、年間160万台(2025年)販売する市販車メーカーである以上、そのあたりのフェールセーフは万全なのだろう。しかし、便利で合理的な部分もあるが、心配性で初見の守旧派(私だ)にはハードルは高いと感じた。

走りのドラマを期待してはいけない

テスラ モデルY Lの3列目シート
テスラ モデルY Lの3列目シート

だが実際に走り出すと、その先進性から想像されるより、走りの味は驚くほど“素朴”だ。確かに前後モーターによる加速は力強く、十分以上に速い。AWDらしいトラクションの予感もある。しかし、装着されるのがエコタイヤ(コンチネンタル・エココンタクト7S、EV用)ということもあって、静かに坦々と走りたくなる。EVらしい強めの回生ブレーキ(調整可能)は、ワンペダル走行も自然なので市街地ではほとんどブレーキペダルを意識せずに走れる。

リリースで高らかに宣言している0-100km/h加速約5秒というスポーツカーに比肩するスペックから、高揚感や動的性能そのもののドラマを期待すると肩透かしを食うかもしれない。モデルY Lの魅力は、BEVらしい低重心を感じさせるコーナリングや猛烈な加速といったダイナミックな演出ではなく、移動そのものを効率よく処理していると実感することだ。志向するのは「走りで驚かせること」ではなく「走りを意識させないこと」である。この割り切りは鮮烈だ。

初見でも操作できるACCを備えるが

テスラ モデルY Lのセンターディスプレイ
テスラ モデルY Lのセンターディスプレイ

走行中もっとも先進性を感じたのは秀逸なADASである。“ほぼ”初見でも小さくメーターアイコンが刻まれたステアリング右スポークのダイヤルを操作すればACC(レベル2)が起動する。センサーで認識した制限速度と連動し、過不足なく前走車を追従していく。だが、ACCを「セルフドライビング」と表記している点は気になった。本邦において2026年内の実現を目指すFSD(フルセルフドライビング)をやや控えめにした表現だが、現状でそのネーミングは勇足だろう。「セミセルフドライビング」くらいにした方が後ろ指を刺される心配がないような気がする。

とはいえ、自らステアリングを握って走らせるテスラは、運転支援について卓越した洗練さもあって感心する。交差点ではウインカーを出すとフロントフェンダーに備えるカメラで斜め後ろの死角をセンターのディスプレイに表示してくれるのもいい。ウインカーの自動消灯も、従来の機械式レバーとは異なるロジックで作動するのが印象的だった。

高効率と先進性のあるファミリーカー

価格は749万円で3列シートEVとしては安価だ。しかも国のCEV補助金(127万円)に加えて、東京在住ならばZEV補助金(最大80万円)も見込めるという。さらに3年間のスーパーチャージャー無料キャンペーン(6月30日までの納車が条件)も魅力だ。

だが、誰よりこのクルマが刺さるのは、ブランドの見栄や新奇性の競争から距離を置きたいユーザーだろう。その点、高級機械式腕時計からアップルウォッチに切り替えるビジネスマンと同じ方向性を感じた。個人的には駆動方式がAWDなのでスタッドレスを履かせて、スキー旅行など冬の足になることも期待したい。

モデルY Lは、従来的価値観の“運転が楽しいクルマ”ではないが、移動のストレスを減らし、効率と空間と先進性を高い次元でまとめたファミリーカーであることは間違いない。ロレックス的優越感ではなく、生活の中における移動時に静かに機能し、家族を乗せ、遠くまで走る、しかも期間限定とはいえ充電コストも低減できる。そうした実利を重視する人にとって、モデルY Lはかなり強い選択肢になるだろう。

PHOTO/GENROQ

SPECIFICATIONS

テスラ モデルY L

ボディサイズ:全長4980×全幅1920×全高1670mm
ホイールベース:3040mm
車両重量:2090kg
モーター最高出力:前158kW(215PS) 後220kW(299PS)
モーター最大トルク:前240Nm 後350Nm
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/45R19 後275/45R19
車両本体価格:749万円

※2026/5/14 スペック追加

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