ロータリーエンジン搭載のマツダMX-30 e-SKYACTIV R-EV 気になる中身はどうなってる?

MX-30 e-SKYACTIV R-EV
マツダは幕張メッセで開催されている(4月14日〜16日)『AUTOMOBILE COUNCIL 2023(オートモビルカウンシル)』に、日本初公開となるMX-30 e-SKYACTIV R-EVを出展した。MX-30 e-SKYACTIV R-EVは日本にも導入される見込みだ。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

8C型ロータリーを発電用に使う

MX-30 e-SKYACTIV R-EV
8C型ロータリーエンジン。発電用に新開発したエンジンだ。

展示車のMX-30 e-SKYACTIV R-EVは正確にはMX-30 e-SKYACTIV R-EV Edition Rで、特別仕様車である。1月13日のブリュッセルモーターショー(ベルギー)で欧州初公開された欧州仕様(左ハンドル)だ。

「R-EV」はロータリーエンジンを発電機として使用するプラグインハイブリッドモデルである。より正確に表現するなら、シリーズ・プラグインハイブリッドモデルだ。(車載状態で左から順に)ロータリーエンジンとジェネレーター、走行用モーターは同軸上にレイアウトされているが、エンジンは駆動輪につながっておらず、完全に発電専用。走行は100%モーターで行なう。

MX-30はまず、2.0L直4ガソリンエンジンを積むマイルドハイブリッド仕様が2020年に発売された。2021年には、マツダ初の量産電気自動車となるMX-30 EVを発売している。マツダはシリーズ・プラグインハイブリッドのMX-30 e-SKYACTIV R-EVについて、EVモデルとの対比で、「MX-30の基本的な提供価値はそのままに、バッテリーEVとしての使い方を拡張した」仕様だと説明している。

搭載するバッテリーの容量(実際に使うことのできるエネルギー量)はEV仕様の半分に相当する17.8kWh。欧州WLTPモードで85kmのEV走行距離を確保している。普段の生活はEV走行でカバー(自宅での充電を想定。普通充電だけでなく急速充電にも対応)。長距離ドライブでは50Lの容量を持つタンクに積むガソリンで発電用ロータリーエンジンを動かし、シリーズハイブリッドとして走るというわけだ。

オートモービルカウンシルで展示されたMX-30 e-SKYACTIV R-EVのパワートレーンのカットモデル
車載イメージがこちら。

実際には、EVとして走るのはドライブモードで「EV」を選択したときに限られる。「ノーマル」を選択すると、バッテリー残量に応じてエンジンが始動する。つまり、デフォルトはシリーズハイブリッドなのだ。他に「チャージ」モードがあり、ドライブモードは全部で3種類用意されている。

ロータリーサウンドも楽しめる

実際の車載状態

MX-30 e-SKYACTIV R-EVの走行用モーターの最高出力は125kWだ。MX-30 EVの最高出力は107kWなので、R-EVのほうがパワフルである。モーターも専用品だ。「8C」の名称が与えられた新開発のロータリーエンジンは、830ccの排気量から55kWの最高出力を発生する。担当者の説明によると、発電時に常用するのは2300~4500rpmで、回転上限は4500rpm。アクセルペダルの踏み込みに応じて回転を上昇させ、加速と音を連動させて走る楽しさを演出する制御を入れているという。エンジンが動いているときは、ロータリーサウンドが堪能できるというわけだ。

特別仕様車のEdition Rは黒基調の外板色および内装色とし、ルーフサイドにR360クーペのルーフ色を復刻したマローンルージュメタリックを差し色として採用。フロアマットやシートのヘッドレストにはローターの形を模したバッジやエンボス加工を施している。

MX-30 e-SKYACTIV R-EVのキー。一見、普通に見えるが。
マツダ欧州の広報写真。これには意味があったのだ。

極めつきはキーだ。ボンネットフードを開けても、リザーバータンクや配管・配線類に遮られて新開発のロータリーエンジンの様子を窺うことはできない。その代わりというわけではないだろうが、キーでロータリーを感じられる仕掛けを施している。カバーの横方向の曲線は三角おむすび形状のローターの曲線と同一。サイド部の切れ込みは、ローターの頂点に配置されて作動室の気密を保つアペックスシールの幅(2.5mm)と同じにしてある。

手のひらの中で8C型ロータリーエンジンのローターを感じられる、心憎い仕掛けだ。

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…