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FFモデル最速、ニュルブルクリンク7分44秒881を記録!
明るい春の日差しに輝くチャンピオンシップホワイト、まさしくホンダのスポーツフラッグシップであり、FF世界最速マシンであるシビックタイプRは、ホンダファンなら誰もが憧れるマシンだ。
モーターファンフェスタ2023の開催される直前となる4月20日に『ニュルブルクリンクでFFモデルの最速ラップタイムを記録』したことがアナウンスされた、最新のシビックタイプRがホンダの展示エリアを示すシンボルとなっていた。
ニュルブルクリンク北コースでのレコードラップは7分44秒881。その原動力となった最高出力330PS(243kW)、最大トルク420Nmの2.0Lターボエンジン、冷却性能に寄与すべく面積の拡大されたフロントグリルやラジエーター、ダウンフォースを向上させるボディメイクなど、本物が持つ凄みを存分にアピールしていた。
シビックタイプRの歴史は1997年に始まった
FF最速マシンとして、すっかりおなじみの存在となったシビックタイプRのルーツは、いまから25年前の1997年まで遡ることができる。タイプRの歴史を紡いできたマシンへのリスペクトを込め、ホンダは歴代シビックタイプRをモーターファンフェスタの会場に並べてみせた。あらためて初代からの歴史を振り返ってみよう。
シビックタイプRが初めて登場したのは1997年8月。真っ赤なレカロ製バケットシートを中心としたコックピットのは今も変わらず印象的ものだ。
エンジンは専用の「B16B」型で、自然吸気エンジンとしてリッター当たり116馬力を実現した1.6L直列4気筒 DOHC、当然ながらバルブ駆動カムを可変させる VTEC機構を備える。最高出力は185PS、発生回転は8200rpmという超ハイレビングエンジンだ。
ボディについても軽量化と剛性アップの改良が施された、シビックタイプRのクラスを超えた速さのインパクトは絶大なものだった。
2代目のシビックタイプR(EP3)は、エンジンを2.0Lにスープアップするなど、大きく成長したことが記憶に残る。K20A型2.0L直列4気筒DOHC i-VTECエンジンの最高出力は215PS、シビックタイプRとして初めて6速MTが組み合わされたのは、このときだ。
特徴的なインパネシフトのMT、レカロ製シート、モモ製ステアリングによって構成されるドライビング空間はホットなムードを高めているのも2代目の進化ポイントとして見逃せない。
また、このシビックタイプRはイギリスで生産されるグローバルモデルであり、日本以外のエリアでは初代シビックタイプRと認識されていることも多い。
シビックタイプR専用のK20A型エンジンを、最高出力225PSまで高めたのが、「FD2」の型式で知られる3代目シビックタイプRだ。2.0Lながら8000rpmまで一気に回っていく様は、まるで1.6Lエンジン時代のレスポンスを感じさせるものだった。
それもそのはず…というわけではないが、FD2シビックタイプRは鈴鹿製作所で作られる日本製に回帰している。サーキットベストを徹底的に追求したボディは、4ドアセダンという形状に「ファミリカーとしても使えるかも」という期待とは裏腹にガチガチの固められたもの。スパルタンな乗り味は、タイプRが求めている世界を明確化に表現するものだった。
セダンのシビックタイプRへの「スパルタンすぎる」という声に応えたのか、ホンダは2009年に2010台の限定販売でシビックタイプRユーロをイギリスから輸入した。
ストリートでの上質な乗り味を意識したという触れ込みのタイプRユーロは、2.0L直列4気筒自然吸気の専用エンジンを搭載。最高出力は201PSと絞られたが、それは扱いやすさを考慮したゆえの専用チューンということだった。
パワーダウンしたタイプRにネガティブな印象を受けるかもしれないが、2010年にも1500台が限定販売されるなど当時は一定のニーズを満たしていた。シビックはハッチバックであって欲しいというユーザーにも支持されたモデルだ。
ターボエンジンとなってFF世界最速がテーマとなる
日本の販売ラインナップからシビックの名前が消えてしまったときでもタイプRは存在していた。2015年に750台限定発売されたシビックタイプR(FK2)は、「心昂ぶるブッチギリの走り」をコンセプトとして、FF世界最速を目指したモデル。
パワートレインは2.0L直列4気筒DOHCターボエンジンと6速MTで構成されるもの。エンジンはホンダ独自のVTECに、ガソリン直噴技術を組み合わせたもので、最高出力310PSはこの時点での歴代タイプR最強といえるものだった。
シビックタイプRがターボエンジンを搭載することに対して、熱心なファンの間では喧々諤々の議論もあったが、当時のニュルブルクリンク北コース(現在とは異なるレイアウト)においてFF量産車最速となる7分50秒63のラップタイムを記録するという圧倒的な速さにより「シビックタイプR=2.0Lターボ」というイメージが強くなっていった。
2017年7月に発表されたシビックは、1.5Lターボを積むハッチバックとセダン、そして最高出力320PSの2.0Lターボを積むタイプR(FK8)が同時にデビューした。
標準車に対して、ワイドなボディやデュアルアクシス・ストラット式フロントサスペンション、アダプティブ・ダンパー・システムなどを採用することでシャシー性能もレベルアップした。
当然ながら先代モデルよりサーキットでのラップタイムは短縮される。ニュルブルクリンク北コースでは、量産FFモデルとして最速タイムを更新した。具体的には、先代から6秒83短縮の7分43秒80を記録した。
コロナ禍においてもタイプRは進化。2020年には、FK8型シビックタイプRの究極形といえるLimited Editionが国内200台限定で販売されている。
2024年にシビックタイプRがレースに帰ってくる
こうして四半世紀以上に渡って進化し続けてきたシビックタイプR。最新モデルはスーパー耐久シリーズに参戦するなど実戦で鍛えることでタイプRとしての速さを磨いている。
そんなシビックタイプRが国内トップカテゴリーのスーパーGTシリーズの最高峰クラスGT500に2024年から参戦することが予定されている。
すでに東京オートサロンでお披露目されたシビックタイプR-GTコンセプトが、モーターファンフェスタ2023年でも展示された。
熱心なファンならご存知のようにGT500マシンは共通シャシーでフロントエンジン・リヤ駆動の純粋なレーシングカーだ。
量産車であるシビックタイプRのメカニズムが使われているわけではないが、4気筒ターボという共通点はシビックタイプRのアイデンティティともつながる部分であり、新たな伝説を生み出してくれることに期待したい。
2024年のスーパーGT(GT500)に参戦予定のシビックタイプR-GT。