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ホンダ・フィット e:HEV RS
全長4080mm 全幅1695mm 全高1540mm 車両価格2,346,300円
コンパクトカーにスポーツ自転車を積むならフィットしかない?
この企画で当初から「試してみたい」と思っていたのが、ホンダ“フィット”。センタータンクレイアウトで後席チップアップができるから、その状態で助手席を目一杯前にスライドさせれば、もしかすると前輪を外すだけでロードバイクが積めちゃうのでは? と思っていたからだ。
「ロードバイクの車輪なんて簡単に外せるんだから、後輪も外してリヤシートに積めばいいじゃない」という声が聞こえてきそうだが、ディスクブレーキのスルーアクスルは従来より一手間かかるし、シマノの変速機はシングルテンションになってから、プーリーケージを引っ張らないと着脱しにくくなった(マニアックな話でゴメン)。しかもチェーンの処理が面倒だから、後輪は外さずに積めたほうがいい。
というわけで、さっそく試してみたのだが、目論見通り、ピッタリ積めてしまった。積み下ろしする際も、自転車を持ったまま体を中に入れられるから、作業性も良好だ。
積み込んだ後の固定方法を考える必要はあるけれど、後輪は跳ね上げた後席にちょうど当たるし、フロントフォークも床に着いており、車体は意外と安定している。助手席のスライド位置を調整するとか、リクライニング角を調整するとかすれば、それだけで倒れなくなりそうだ。
ただしこの積みかたの欠点は、ドライバーしか乗れなくなること。一人で出かけるなら問題ないけれど、カップルで出かけるには、前後輪とも外してサドルも下げて、後席を折りたたんだラゲッジに並べて積むしかないだろう……、と考えて、後席を折りたたんでみたら、あれ? なんかスペース広くない? ひょっとして後輪は付けたままでも載るんじゃないの? と気がついた。
それなら試さないのは勿体無い。ということで、やってみたのだが、スペース的にはピッタリ収まり、フロントフォークのサポートも装着できた。SUVでも車輪は前後とも外さないと積めないものが少なくないのに、コンパクトカーでできてしまうとはビックリだ。
ただし、積み込み作業はけっこう大変。バックドア間口の天地が不足気味なので、傾けた状態で中に入れなければならならず、最後は寝転ぶようにして作業しなければならない。とはいうものの、積み込みの際に障害になるのはサドルだけなので、僕のバイクより小さいフレームだとか、スローピングタイプのフレームならば、もっと楽に積めると思う。
そんなことを考えながら、撤収作業を開始。後席のドアを開けてフロントフォークのサポートを外したところで、ふと気づく。「このまま後席ドアから出せるんじゃないの?」
で、試してみたら大成功。体がクルマの外にあっても自転車の重心近くを持てるため、バックドアから降ろすよりもはるかに楽だ。しかも、積み込む際には逆のモーションで行えば、間口にサドルが引っかかることもなく、無理な姿勢を取ることなく楽々積める。
ということで「後輪を付けたまま積めただけでも凄いよね」から「すごく積み降ろししやすいじゃん!」になったのだった。これなら無理してSUVを買うことはないし、自転車を積まない普段使いでも、コンパクトカーなら無駄はない。
ロードバイカーがフィットに乗るのは、なんだかすごくクレバーな選択に思えてきたぞ!
積載自転車の寸法図
■第1形態 完成車状態 長さ1680mm 高さ1000mm 幅445mm
■第2形態 前輪を外してホルダーに固定 長さ1510mm 高さ965mm 幅445mm
■第3形態 前後輪を外し、後輪はリヤエンドサポートで保持 長さ1230mm 高さ880mm 幅445mm
■第4形態 前後輪外して倒立 長さ1115mm 高さ870mm 幅445mm
著者と自転車のプロフィール
メカニズムを得意とするジャーナリストの安藤 眞氏は、40年以上も自転車を趣味とし、カングーに愛車を積んでサイクリングを楽しんでいる。身長181cm。フレームを購入して自分で組み上げた写真のロードバイクはサドル高が1mあるから、この自転車が載るクルマなら、アナタの自転車も積載できる可能性が高いはず。
ブリヂストンサイクルのNEO-COTというフレームを購入して、自分で組み上げた。92年発売のスチール製(CrMo鋼)だが、当時としては画期的なもので、ハイドロフォーミング製法で接合部の形状が最適化されている。それを見た僕は「スチールフレームの最高到達点」と直感して即購入。部品を交換しながら30年間、乗り続けている。その後、アルミフレームやカーボンフレームに押され、2021年を最後に絶版となってしまった。ホイール径は700C。