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『MOONEYES Street Car Nationals』とは?
2023年5月14日(日)にお台場・青海駐車場(東京都江東区)にて『35th Anniversary MOONEYES Street Car Nationals®』(以下、SCN)が開催された。
今回で35回目を数えるこのショーは、 「MOON OF JAPAN」代表のシゲ菅沼氏が、ノーマル車のエントリーを前提にしたクラシックカーショーの代わりとして、誰にでも気軽に参加できる間口の広いアメリカン・カスタムショーを目指して今から36年前に初めて主催したものである。
1987年3月21日に大井競馬場で開催された第1回SCNは、ホビーとしてのカスタムカーが、まだまだ世間に充分認知されていなかった時代ということもあり、関係機関への連絡、調整やエントリーの募集など、前例のないイベントだけに開催に向けては、さまざまな困難が立ち塞がったという。
しかし、シゲ菅沼氏の「カスタム文化を日本に根付かせたい」とする熱い情熱はそれらの問題をひとつひとつ解決して成功させた。
それから36年。会場は大井競馬場から東京レールシティ汐留、レールシティ新鶴見ヨコハマ、横浜みなとみらい、東京ベイサイドスクエア、千葉ニュータウン、川崎の東扇島などを経て、2005年以降は現在の青海駐車場から会場は変更されていない。
だが、2011年は東日本大震災の影響で規模が縮小されたほか、2021年と2022年はCOVID-19の影響で開催が見送られ、近年は来場車両の騒音が問題視されるようになるなど、その道程は必ずしも平坦なものではなかった。だが、そうした紆余曲折を経つつも、SCNは春~初夏にかけて開催されるアジア最大規模のカスタムカーショーとしてカスタムカーファンの間ですっかり定着した感がある。
アメリカ西海岸ブームがカスタムカルチャーを後押し
そんなSCNの歴史はまさしく日本のカスタムカルチャーの歴史そのものだ。初期のSCNは80年代のアメリカ西海岸ブームを引きずっていたこともあり、参加車両は「Cal Look」のタイプ1やタイプ2といった空冷VWが主役であったが、ほどなくして日本経済が空前のバブル景気に沸くと、円高ドル安も追い風になって並行輸入された50~60年代のキャデラックやインパラなどをベースにした「ローライダー 」などのアメ車の参加が目立ち始める。
90年代に入ると旧車のクラウンやセドグロ、デボネアなどのドメスティックセダンやダットラ(ダットサントラック)やハイラックスなどのミニトラックなどの国産勢が徐々に台数を伸ばして行く一方で、空前の大ブームによりシボレー・アストロやカプリスが会場を埋め尽くした。
2000年代は映画『ワイルドスピード』の影響もあり、派手なバイナルグラフィックが車体に描かれた国産スポーツカーベースの「スポコン」が会場で注目を集めていたし、今よりもガソリン価格が安価だったこともあり、自動車税の安い1ナンバー登録されたキャデラック・エスカレードやリンカーン・ナビゲーター、シボレー・サバーバンも目立っていた。
最近ではスバル・サンバーをVWバス風に改造した「ミニバス」に端を発する軽バンカスタムの参加が目に付く。さすがに古いサンバーは維持に手が掛かるためなのか、今回はその姿を見かけることはなかったが、その流れを組んだバモスやアクティバンベースのダッジバンやシェビーバン風のカスタムが台数を増やしていた。
カスタムカルチャーのトレンドを知るなら「SCN」
SCNの面白いところは、このように時代によって参加車両が移り変わって行くところである。つまり、時代ごとの流行や世相を反映しているわけで、カスタムカルチャーにおける最新のトレンドを知りたければ、SCN会場へと足を運ぶのがいちばんだ。
だが、SCNは間口が広いイベントということもあり、面白いのはブームが去ったカスタムやベース車も根強いファンの存在によって少なからず参加があることだ。他にもどこで見つけてきたのかは謎だが、街中でまず見かけることがない希少車をセンス良くカスタムしているオーナーの存在だ。
こうしたクルマはまさしく一期一会。今年参加しているからと言って来年もまた参加するとは限らない。そんなレアなマシンを求めて会場を散策するだけでも充分に楽しい。運が良ければオーナーに詳しく話を聞く機会もあるだろう。
見ても楽しい! 参加すればもっと楽しい!?
筆者は残念ながら観客として参加したことしかないのだが、愛車でSCNにエントリーすればもっと深くイベントを楽しむことができるはずだ。エントリーした約1000台の車両の中には、アメリカ本国のショーでもアワードが狙えそうなハイレベルなマシンがいる一方で、ほぼノーマルの国産大衆車やアメリカンカスタムとは関係のなさそうなポルシェ911(930型)やフィアット・パンダ(初代)の姿もあった。
一応、エントリーには写真選考はあるはずなのだが、「カスタムカルチャーの間口を広げる」というシゲ菅沼氏の意向もあってからなのか、よほどSCNの主旨に反したクルマ以外はエントリーを受け付けているようである。
この36年でショーを取り巻く状況は目まぐるしく変わっていったし、参加車両の流行や廃りはあったものの、SCNの基本となるスピリットに変化はない。おそらくそれは今後も変わることはないだろう。