ヒストリックからアメリカンマッスル、国産旧車にネオクラまで、1000台のカスタムカーが集まる『MOONEYES Street Car Nationals』を知っているか!?

今回で35回目を数える『MOONEYES Street Car Nationals(SCN)』の歴史は、まさしく日本のカスタムカルチャーの歴史そのものだったと言っても過言ではないだろう。多くのファンに支えられてきたSCNは、エントリー台数1000台、来場者1万8千人以上を集めるアジア地域最大のカスタムカーイベントへと成長した。今回はそんなSCNの歴史と魅力を、会場に集まったカスタムカーと共に紹介して行くことにしよう。
PHOTO:山崎 龍

『MOONEYES Street Car Nationals』とは?

2023年5月14日(日)にお台場・青海駐車場(東京都江東区)にて『35th Anniversary MOONEYES Street Car Nationals®』(以下、SCN)が開催された。
今回で35回目を数えるこのショーは、 「MOON OF JAPAN」代表のシゲ菅沼氏が、ノーマル車のエントリーを前提にしたクラシックカーショーの代わりとして、誰にでも気軽に参加できる間口の広いアメリカン・カスタムショーを目指して今から36年前に初めて主催したものである。

1961年型コルベットC1。バンパーレスにした上で、鮮やかなライトブルーにフェンダーにピンストライプが奔る。
老舗エンジンビルダー「Reher Morrison」のエンブレムが光る。かつてタレントの所ジョージ氏が所有していた個体のようだ。

1987年3月21日に大井競馬場で開催された第1回SCNは、ホビーとしてのカスタムカーが、まだまだ世間に充分認知されていなかった時代ということもあり、関係機関への連絡、調整やエントリーの募集など、前例のないイベントだけに開催に向けては、さまざまな困難が立ち塞がったという。
しかし、シゲ菅沼氏の「カスタム文化を日本に根付かせたい」とする熱い情熱はそれらの問題をひとつひとつ解決して成功させた。

1950年型スチュードベイカー ・チャンピオン。特徴的なフロントマスクは戦闘機のP-38をイメージしている。
コカ・コーラのボトルデザインで有名な工場デザイナーのレイモンド・ローウィがスタイリングを手掛けた。

それから36年。会場は大井競馬場から東京レールシティ汐留、レールシティ新鶴見ヨコハマ、横浜みなとみらい、東京ベイサイドスクエア、千葉ニュータウン、川崎の東扇島などを経て、2005年以降は現在の青海駐車場から会場は変更されていない。

お台場・青海駐車場で開催された第35階『MOONEYES Street Car Nationals』の会場の様子。

だが、2011年は東日本大震災の影響で規模が縮小されたほか、2021年と2022年はCOVID-19の影響で開催が見送られ、近年は来場車両の騒音が問題視されるようになるなど、その道程は必ずしも平坦なものではなかった。だが、そうした紆余曲折を経つつも、SCNは春~初夏にかけて開催されるアジア最大規模のカスタムカーショーとしてカスタムカーファンの間ですっかり定着した感がある。

アメリカ西海岸ブームがカスタムカルチャーを後押し

初期のSCNでは台数を集めた空冷VWも最盛期より数を減らしてはいるが、あいかわらず参加台数は多い。

そんなSCNの歴史はまさしく日本のカスタムカルチャーの歴史そのものだ。初期のSCNは80年代のアメリカ西海岸ブームを引きずっていたこともあり、参加車両は「Cal Look」のタイプ1やタイプ2といった空冷VWが主役であったが、ほどなくして日本経済が空前のバブル景気に沸くと、円高ドル安も追い風になって並行輸入された50~60年代のキャデラックやインパラなどをベースにした「ローライダー 」などのアメ車の参加が目立ち始める。

1961年型ビュイック・ルセイバー。繊細なピラーで構成されたバブルトップが美しく、GMの高級車ディビジョン「ビュイック」らしいエレガントで美しいクルマ。エアサスを使わずバランスよくロワリングしている。

90年代に入ると旧車のクラウンやセドグロ、デボネアなどのドメスティックセダンやダットラ(ダットサントラック)やハイラックスなどのミニトラックなどの国産勢が徐々に台数を伸ばして行く一方で、空前の大ブームによりシボレー・アストロやカプリスが会場を埋め尽くした。

シボレー・カプリスと共に90年代に人気を博したビュイック・ロードマスターワゴン。ウッドパネルのボディサイドが美しい。

2000年代は映画『ワイルドスピード』の影響もあり、派手なバイナルグラフィックが車体に描かれた国産スポーツカーベースの「スポコン」が会場で注目を集めていたし、今よりもガソリン価格が安価だったこともあり、自動車税の安い1ナンバー登録されたキャデラック・エスカレードやリンカーン・ナビゲーター、シボレー・サバーバンも目立っていた。

ダッジ ・チャレンジャーRTにブロワー(スーパーチャージャー)をインストール。

最近ではスバル・サンバーをVWバス風に改造した「ミニバス」に端を発する軽バンカスタムの参加が目に付く。さすがに古いサンバーは維持に手が掛かるためなのか、今回はその姿を見かけることはなかったが、その流れを組んだバモスやアクティバンベースのダッジバンやシェビーバン風のカスタムが台数を増やしていた。

近年、SCN会場で見かけることが多くなった軽バン&軽トラベースの「アゲバン/アゲトラ」。オレンジ色の車両はスズキ・エブリィ をベースに、Blowの「ブギーライダー」のボディキットを使用した上でリフトアップし、迫力あるアピアランスを実現している。

カスタムカルチャーのトレンドを知るなら「SCN」

フォードF-100(2ndジェネレーション)。1952~56年にかけて生産された。現在でも人気のピックアップだ。
「サンライナー」のペットネームが与えられていた1957年型フォード・フェアレーン2ドアコンバーチブル。

SCNの面白いところは、このように時代によって参加車両が移り変わって行くところである。つまり、時代ごとの流行や世相を反映しているわけで、カスタムカルチャーにおける最新のトレンドを知りたければ、SCN会場へと足を運ぶのがいちばんだ。

プリマス・クーダ。おそらくは1970年型。375hpを発揮する最強の4バレル440エンジンを搭載するクライスラーのマッスルカー。

だが、SCNは間口が広いイベントということもあり、面白いのはブームが去ったカスタムやベース車も根強いファンの存在によって少なからず参加があることだ。他にもどこで見つけてきたのかは謎だが、街中でまず見かけることがない希少車をセンス良くカスタムしているオーナーの存在だ。

1987~1991年まで製造されたフォードF-150(8ndジェネレーション)。日本では珍しいフレアサイド(リアフェンダー が張り出したタイプ)をベースにリフトアップしている。

こうしたクルマはまさしく一期一会。今年参加しているからと言って来年もまた参加するとは限らない。そんなレアなマシンを求めて会場を散策するだけでも充分に楽しい。運が良ければオーナーに詳しく話を聞く機会もあるだろう。

見ても楽しい! 参加すればもっと楽しい!?

日本フォードのレーザーバン。2代目BF型ファミリアの姉妹車としてオートラマ系で販売された。
オリジナルを維持しながらバランスよくローダウンし、台形ホイールを組み合わせている。
ステアリングやシート、オーディオなどはカスタムされているが、ダッシュボードまわりはほぼノーマル。

筆者は残念ながら観客として参加したことしかないのだが、愛車でSCNにエントリーすればもっと深くイベントを楽しむことができるはずだ。エントリーした約1000台の車両の中には、アメリカ本国のショーでもアワードが狙えそうなハイレベルなマシンがいる一方で、ほぼノーマルの国産大衆車やアメリカンカスタムとは関係のなさそうなポルシェ911(930型)やフィアット・パンダ(初代)の姿もあった。

1990年に500台限定で販売されたコロナ・スーパールーミー。トヨペット店累計販売台数1000万台を記念してコロナをベースに作られたストレッチリムジンだ。足廻りはMOONEYESのスピードマスターホイール でドレスアップしている。
日本ではややマイナーだったが、北米ではスポーツサルーンとして人気を集めた日産マキシマ。USDM仕様はポイントを押さえたカスタムでクールに仕上がっている。

一応、エントリーには写真選考はあるはずなのだが、「カスタムカルチャーの間口を広げる」というシゲ菅沼氏の意向もあってからなのか、よほどSCNの主旨に反したクルマ以外はエントリーを受け付けているようである。

初代エスティマをフルカスタム。ボディのスムージング、ファントムグリル、グランドタッチ(限界までローダウン)、バイナル&オレンジのペイント、こだわりのインテリアと見どころ満載のマシンだ。

この36年でショーを取り巻く状況は目まぐるしく変わっていったし、参加車両の流行や廃りはあったものの、SCNの基本となるスピリットに変化はない。おそらくそれは今後も変わることはないだろう。

そんなMOONEYES[ムーンアイズ]の誕生秘話はコチラ!

レース業界にもファッション性を! 目玉のマークで人気の「MOONEYES[ムーンアイズ]」がリードするアメリカンカスタムカルチャーの秘密に迫る!

5月14日(日曜日)にお台場・青海駐車場で開催された『35th Anniversary MOONEYES Street Car Nationals®』のリポートともに、同ショーの歴史と魅力をお届けした。しかし、MotorFan.jpではこれまであまりアメリカ車やアメリカン・カスタムカルチャーを紹介する機会が少なかったこともあり、「MOONEYES(ムーンアイズ)」の名前を聞いたことがあっても、どんなブランドなのか詳しく知らないという人も多いのではないかと思う。そこで今回はMOONEYESとその創業者であるディーン・ムーン氏について語っていこう。

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…